歩き切った翌朝。


いつの間にか寝てしまい、起きたのは朝6時過ぎ。

筋肉痛か何かで痛む足を理由に1時間ダラダラして

共有スペースに朝ごはんを食べに行く。


今日は本宮に改めてお参りにと思っていた。

朝ごはんを食べながら、時計を見る。

まだ8時前。


朝ごはんの時に見直そうと思った中辺路マップを手に取る。

ふと、「大日越」の文字が目に入る。


湯ノ峰温泉から本宮は2〜3時間。

距離にして3キロ。高低差は山1つ。


ふむ。


町をふらつく用の洋服から、

昨日まで着ていた服に着替える。

まだ8時。昨日と同じよう歩こうか。

一昨日とは違った穏やかな気持ちで準備する。

たまに我に返り、「本気で歩くの?」と思いながら。



準備中、同じ宿だったイスラエルの家族と話した。

息子が京都にいるから、今回は息子を訪ねて日本に来たらしい。

これから歩いて本宮へ行く、というと

「今から車で行くけど、乗ってくか?」と声を掛けてくれた。

歩きたいから歩くよ、ありがとう、と伝えた。

なんて優しいんだ。旅人は。



大日越はつぼ湯の近くの脇道から始まる。

途中で迷子になりながらも歩き始める。


朝日が気持ちいい。




こんな事をする余裕も出てきた。

初日に「やめてやる!!」と意気込んでいたあの気持ちはどこへ行ったんだろう。


たくさんの素敵な旅人に出会えたこと、

歩いていくうちに熊野の森が受け入れてくれたことが

今歩けていることにつながっていると思った。




晴れていて気持ちがいい。

朝イチではないので、歩いていると汗をかく。


鼻かけ地蔵から少しいくと、下に差し掛かった。

昨日と変わらず転げ落ちるように山を下った。


本宮の街に出るところで地元のおじちゃんが家から顔を出していた。

「昔は小学校まで毎日6キロ歩いてたんだよ、それが普通だったんだけどねえ」と話してくれた。


なんだか、穏やかな人が多い。



町まで出ると、大斎原に出る手前に綺麗なコーヒー屋さんが。

せっかくなのでお茶🍵

ボロボロの装備でおしゃれなカフェに入る。

出来立てのシュークリーム。美味しかった。




食べ終わるとそのまま大斎原へ。

ここは昔、熊野大社があったところ。

川に囲まれ、中洲に位置していた昔の大社。

当時は熊野坐神社(くまのにますじんじゃ)という名前だった。

水害により社殿が流され、今の本宮大社にある社殿はかろうじて残ったものを移設したもの。

この大鳥居は最近のものだけど、とても立派。


流されてしまった社殿は、大斎原の鳥居の奥に祠のように納められている。


わたしはこの場所が大好きになった。


川の近く、空はひらけていて

神社を見渡せる。


高台に座り、数時間ぼーっと過ごした。


すると、見覚えのある2人組が遠くからやってきた。

それは、近露で宿が一緒だった親子トレイラーだった。


旅ってこれだよなあ。

最後にいつも再会させてくれる。


ついに来ましたねと話して、

またどこかで会いますね、とサヨナラをした。

きっと、どこかでまた会うんでしょうね。

会わせてくれる力が旅にはあるからね。


日が上り、鳥居にも太陽がかかる。


この場所を気に入って、鳥居のそばに行ったり、

高台に座ったりの繰り返し。


そろそろ本宮にお参りに行こうとして

最後に鳥居に振り返った時、

一羽の鳥が鳥居の上に。

ヤタガラスの鳥居に、鳥が。


神様っているんだな〜