お泊まり恋愛詩 -21ページ目
失神
君は人気者だし
僕の横恋慕から始まった恋愛だし
キスは もちろん
そして
普通のも もちろん
初めてじゃなかった
それに
人差し指で気づいた
後ろも初めてじゃなかったんだね
縄も
玩具も
電極までも
初めてじゃなかった
駆け足でエスカレートする爽快感は
ひとつも初めてをくれないもどかしさの裏返し
●
僕が友達に借りた部屋
何でもない普通の大学生が
普通に暮らす部屋
床に
灰皿と空き缶とCDの中身
薄い布団
そんな当たり前の場所で
君は初めて 初めてをくれた
それは僕にとっても初めての経験で
思い上がらないように息を整える
成功要因はたぶん
激しさではなく
その他の著しさでもなく
組み合わせの妙
初めての失神
影の色が変わった夕方の部屋
当たり前の特別
キスマーク事件
歯先を当てながら強く吸うと
くっきりキスマークが残ることに気がついたので
僕は浮かれて首筋にキスマークを並べた
オリオン座には面積が足りないのでカシオペヤ座
身支度のとき
君が怒ったとき
僕はそんなことはすっかり忘れていた
こんなんじゃ 家に帰れない!
僕はきょとん
キスマークつけるなんて ひどい!
え そうなの?
お尻をいじめても
お胸をいじめても
言葉にならない響きで応えていた君が
キスマークには断固とした抗議の言葉を発していた
なだめる余地はなさそうだった
つまり
必要なのは解決策
さすっても癒えない
ファンデーションでも隠れない
君が
怪我するほうがましだよ
とつぶやいたので
僕は提案した
キスマークつなげちゃおうか
「あざ」ってことにしない?
それはOKだったようだ
自分史上初めての
おかしな状況だった
償いとしてキスマークをつけるなんてね
40個相当はつけたと思う
はふっと感じてはぷりぷり怒った表情に戻る君も
かなり
おかしな状況だったね
とても普通
植物園のバラは
少し季節がずれているせいで質素だった
駆け抜ける子供の方が見応えがあるくらいだ
けれども植物園は広い
入れ替わり立ち替わり自分の季節を迎える植物たちは
主人公を変えて
山場を迎え続けていた
一番の見物は温室だった
熱帯の植物は不思議な形が得意なので
指を絡ませて歩く僕たちは目を奪われていた
すっかり普通の恋人同士だ
バラ園の脇の林で舌を出させるのもとても普通
細めのまっすぐな舌は少し特別
僕も同じように舌を伸ばして
舌先同士だけのキス
種明かしも何もない
帰りに美味しいそばを食べるのも
とても美味しくて
とても普通

