《12》 根っこの役割(第2回『クリスマスイブの庭』)
第2回『クリスマスイブの庭』
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「ごめんなさい。お父さんが、あんなことばっかり言うて」 頼子は行宏の腕を離さなかった。
彼がこのまま本当に帰ってしまいそうな気がしたのだった。
「いや、ほんまに帰ろうとはもう思ってないよ。大丈夫。泣かんといて」
その言葉に頼子はいっそう泣き出した。
大柄な体に似合わず、しくしくと。
「ほら、帰れへんから」 行宏は笑って念を押した。
今でも二人で言い合いをすれば周囲の人はケンカかと思うような勢いになることがある。
それでもあっという間に仲直りしていた。
というか、言いたいことを言い合えるだけなのだ。
なんでも腹を割って話せる。
こんな相手はそうはいないだろう。
行宏は自分が簡単に怒ってここから帰ってしまえない理由をそんなふうに自分で考えていた。
でも、それをやさしい言葉で表現するのは、照れくさかった。
「帰らんかったらええんやろ」 そんな言葉になってしまった。
言いたいことは言えるはずなのに、そういうときのやさしい言葉が二人とも苦手だった。
頼子はちょっと寂しそうな顔で、彼と連れ立って歩いた。
二人は頼子の丹精している小さな箱庭を見に、家のベランダ側へと歩いていった。
バラをたくさん育てているようだが、それは冬の今は咲くはずもない。
「昼間やったらまだ緑のものが楽しいけど、夜見たら殺風景やわ」
頼子はそう言って、それでも近くの低木の枯れた葉をていねいにむしった。
草木を触っているときの頼子はいつになく優しげに見えた。
その姿が、いらいらしていた行宏の心をだんだん和ませた。
バラではないが、黄色い小さな花を咲かせている一角があった。
茎先を横に広げるように咲く様子が両手を広げているようだ。
「これ、何の花?」
「ツワブキ。かわいいでしょ」
「うん」
おまえみたいやな、と言えばいいんだろうなあ。...
そう思いながら行宏にはやっぱり言えなかった。
頼子がぼんやりと言った。
「あのね。草木ってね、根っこの分だけ、上に伸びられるんやって」
「根っこが短かったら上に伸びる分も短いってことか」
「そうそう。根っこがしっかり張ってたら、どんどん上に伸びられるのよ」
行宏はふっと口に出した。
「ふうん。根っこって親みたいなもんか」
「かもしれんね。根っこに腹立つときもあるけどね」
二人は顔を見合わせて笑った。
そのとき、ベランダの扉がガラガラと開いた。
「うるさいっ。何を外で笑ってるんや。早く入って来ないと食事できんやないか」
それだけ言うと、扉はまたがしゃんと閉まった。
「根っこがうるさいわ」
二人はまた笑った。
行宏は頼子の手を握って歩き始めた。
「ぼくらも、また根っこになるんやな」
「花、咲くかな」
「咲くに決まってる」
頼子は彼の顔を見ずに、でもその手をしっかり握りなおした。
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