でも、断ったらまた兄を怒らせてしまう。

だから、やるしかなかった。

「ちゃんとやれよな」

そう言われながら、
手を震わせて耳かきをしていたのを覚えている。

今思えば、綿棒だったら
まだ怖くなかったのかもしれない。

でも兄が使わせたのは、
ちゃんとした耳かき。

小さな子どもの私には、
それを耳の中に入れること自体が怖かった。

動かしたらどうしよう。

痛くしたらどうしよう。

鼓膜を傷つけたらどうしよう。

そんなことを考えながら、
必死に手を動かしていた。

怖かった。

でも、やめることはできなかった。

兄を怒らせることの方が、
もっと怖かったから。