たぶんここは西武池袋線の池袋駅。午前のホーム。人はまったくいない。
年齢は現在の、しかしかなり元気そうな母がいる。
笑顔で、カッターナイフのむき出しの交換刃を持っている。
「いいって言われたの。鉄道会社からきちんと譲りうけたの」
と言って、刃で、停まっている車両の、戸袋窓のあたりから、電車の外壁を横に切りはじめる。
そんなもんで切れるわけが… と思っていると、案外、少しずつ黒い切れ目が入っていく。まるで、とても硬いパイにナイフを入れているかのようだ。
へえ。と見ていた。
しばし経って、戸袋窓ひとつぶん、つまり数十センチぐらいは、窓のしたの胴体を分かつ切れ目ができていた。黒い傷跡のような。
感心してみていると、気づくと駅のホームは割と乗客でいっぱいになっている。そろそろ出発時間のようだ。
せっかく人力で切れ目を入れたこの電車、その発車は記念的なことだ。あわててスマホを出して撮影しようとするが、混んでるし、刃物も持ってるし、なかなかすみやかに動けない。肝心の切れ目いり車両が目の前を通過するころにやっとシャッターを押せた。たぶん切れ目のあたりはブレてボケてしまっただろう。混んでる朝のホームで刃物も持って撮影するのもいかがなものか、母がカッターで電車を切る経緯もきちんと説明しないと誤解を産んでしまうが、とりあえずtwitterに写真をポストした。
その日の午後? 友達とスタジオでレコーディングしていると、その友達が不意に
そいや写真すこし炎上してたね 笑
という。ああそういえば。まあそうね。仕方ない、まあいいか。
夜寝ていると、何か経由でまた炎上を知らされる。
ああそういえば。まあそうね。仕方ない、まあいいか。
支離滅裂さ、なかなかのものだ。異様なのでメモ。
