僕ははにわだ。
土の中に埋まっている。
暗い土の中でもう何年を過ごしたのだろう。
数百年...数千年...多分そんなものだろう。
いつだったからか数えるのをやめてしまった。
土の中は明かりが入らない。
朝も夜もここにはないのだ。
そんな僕が一筋ばかりの輝きを抱いたのは多分数日前のこと。
遠く微かに人の声が聞こえた時の事だ。
現代人による発掘作業というやつだろう。
久々の光を手にできるかもしれない。
胸が焼けるように熱くなる。
一度焼かれてはいるのだが。
ちょっとしたジョークだ。
言っていなかったが今遠くにうっすらと光が差し込んでいる。
光は土がえぐられるような音と共に少しずつ大きく強く変化している。
まぶしい。
そう思った瞬間僕は教授と呼ばれる人間の手の中にいた。
3人の人間が僕の事を見ている。
彼らは不思議な程に感嘆の声を上げた。
これは珍しい。
彼らから聞こえた声の原因はどうやら僕の腕の形状にあるようだった。
僕の右腕は横向きに出ている。
そして関節から上に向かって折れている。
そして第二関節つまり手首の部分から外側に折れているのだ。
この手首から先が珍しいらしい。
左腕は右腕と同じ形状で上下が逆になっている。
世紀の大発見だと教授と呼ばれる人間が叫んでいる。
そんな事はどうだっていいのだ。
僕は何年振りかの太陽をしみじみと全身に感じていたいのだ。
太陽は暖かく眩しい。
この焼けるような胸の熱さは暗闇に眠り続けたからこその味わいであるのだろう。
一度焼かれてはいるのだが。
ちょっとしたジョークだ。
この胸の焼けるような熱さを考えたら暗闇で眠り続けるのも悪くない。
一度焼かれてはいるのだが。
ちょっとしたジョークだ。
教授と呼ばれる人間が研究員と呼ばれる人間へと僕を渡そうとしていた。
地面がどんどんと近づいている気がする。
教授と呼ばれる人間と研究員と呼ばれる人間が歪んだ表情を見せている。
手からこぼれ落ちた僕がこれ程考えを巡らせられているという事はこれが走馬灯と呼ばれるものなのだろう。
もう時間がないようだ。
最後に光が見れてよかった。
さよなら。
...
どうやら助かったようだ。
しかし僕は頭だけになってしまった。
胴体は粉々に砕け散ったらしい。
人間達は無かった事にするため僕をまた埋めようとしている。
また暗い土の中に戻る事になるらしい。
沢山のはにわが今でも土の中で光を求めて生き続けている。
全てのはにわが掘り起こされる日の事を僕は夢に見ている。
こういう綺麗な終わり方どうかな?
伝記 はにわの生き様100連発より抜粋