当時親父は職場の付き合いもあってシブシブ始めたような事を言っていたが、始めてみたらしょっちゅう打ちっぱなしに足を運んでいた。
家に居てもいつもべろべろだし外に飲みに行っても女の子の居る店に行く訳でもないので、酒飲んでるよりはゴルフでもしていてくれた方が家族としても安心だったんだと思います。
そんな親父も会社の人達と千葉県のコースを回る様になったのだが、ある時期からあまり親父の口からゴルフの話を聞かなくなった。
母によると親父より後に始めた後輩にコースのスコアが負けた事が悔しかったらしく、ウダウダ言っている親父に、母が『辞めちゃえば』と言った事がきっかけで喧嘩になったらしいのだ。
ただ一つ不思議な事があった、ゴルフ辞めたならまた呑んだくれるのかなと思いきやそうでもないただ、ちょこちょこ夜家を空けていたのだが、車があるので打ちっぱなしに行っている訳でもない。
帰って来てもいつもシラフだったのでのみに行っていた訳でもない。
一体親父は何処に行ったのだろう。まさか近所に愛人でも出来たのか。
一度気になったら当時の僕は居ても立ってもいられず、親父が何をしているのか調べる事にした。
親父は21時頃家を出て行った。
僕も当時野球をやっていたので『素振りに行く』と母に伝えて家を出た。
ただ一つ問題があった、当時の僕の実家は山の中腹にあるのでとにかく電灯が少なくて暗い。
そして山の頂上には僕の通う小学校があった。
夜中の学校と言うのはとにかく暗い、そして不気味、その学校の周りには学校所有の『ツツジ坂』と呼ばれる森と言うか林のような、森林地帯があった。
まーとりあえず暗いです。
そんな真っ暗な僕の実家ですが、当時は学校の方向に歩く事は恐怖だった、歩いて一分程で着く距離にあったので、僕は学校の方に向かった。
夜の小学校はとにかく不気味で、校舎も校庭も、昼間僕らが遊んでいる学校とは全く別のものに見える。
当時本や映画などで『学校の怪談』が流行っていたので僕はメチャメチャビビっていた。
一見校庭には誰もいない様に見える。
しかし校庭の隅の砂場の方に、何やら人影らしき物が確認出来た。
僕は恐る恐る近づいていくと
『親父?』
あんな所で何やってるんだろう。
そのときだった。
手にはゴルフクラブが握られていた。
親父は夜中の学校の砂場でバンカーショットのっ練習をしていた。
その顔は真剣そのものなんだけど、
間抜けである。
『何やってんだボーイ』それはこっちの台詞です。
『ちょっとここに山作ってくれねえか』そのうえ手伝わせるのね。
なんだか悪い事をしているような気がしてそわそわしている僕を尻目に親父は苦手克服に必死である。
その時遠くに人の気配を感じた、警備員だ。
『逃げるぞボーイ』
親父は一目散にその場を後にしたが、翌日の早朝ゴルフボールを拾いに行ったのは言うまでもない。
そんな親父ですが、その後カラーボール(柔らかくて飛ばないボール)を使い深夜の校庭でもっと大胆にゴルフをやり始めるのですがそれはまた次回にします。