秋になると魔物が蠢きだす。これから温かくなるまでは駄目かもしれない。
「秋」は「飽き」に通じる。オーディオに「飽き」が来てしまうのである。昨年もそうだった。
そんな昨シーズンから、様々な機種との出会いがあった。スピーカーは3台、レコードプレーヤーは4台、アンプは実に5台、入れ替えた。マイナーなところではカセットデッキも1台、買い替えている。ヘッドホンも7個くらい買って、いま手元に残っているのは2個だけだ。
一年かけて徐々に脱皮を繰り返す、特殊な生物のようだ、私は。
「更にちゃんとした音」で聴きたいと思ったのは、先日、ウィーン・フィルを聴いたのが大きい。あのような音に近い音が、自室で出せないかしら。そう思ってしまった。
少し前、あるお店で、Technics SU-C2000という1990年代のプリアンプの中古を見つけた。どうしても、Technicsのバッジには過剰に反応してしまう。状態は良さそうであったが、ちょっとプライスが高すぎるんじゃないの?…っていう数字が並んでいた。案の定、ぜんぜん売れる気配がない。
もちろん買うつもりはなかった。しかし、何故か運命的なものを感じてしまった。こうなるともう恋愛と変わらない。
2003年ごろ、これとペアになるSE-A2000というパワーアンプを所有していたことがある。メーターか何かが故障して、パナソニックに修理を頼んだが、部品無しで返品されてきて、送料だけを取られたという、そんなイヤな思い出も蘇る。
さて、先月、過去に懇意にしていたオーディオ・ショップにあいさつに行った。実に11年ぶりである。店長と久闊を叙し、「じゃあ何か聞かせてください」ということで、スピーカーの前へ。
店長がボリュームを弄るその先を見て、いただいたコーヒーを吹きそうになった。
なんと、件のSU-C2000が店のメインのプリアンプとして使われていたのだ! 何たる偶然。
考えるより先に、「結婚してください!」…ではなく、「これ、ください!」って叫ぶ私がいた。
しかし、店長は「売り物じゃないから…」と言って売ってくれない。私を翻弄しているのでなければ、よほど気にいっていて、手離したくないのだろう。そうに違いない。
1時間ほど滞在し、コーヒーと果物をご馳走になっただけで、遠路、帰途についたわけだが、当然、私の心は、もうSU-C2000の虜(とりこ)なのであった。
高速道路を駆りながら、「あの店のSU-C2000がまだ売れてなければ買おう」という決心が固まった。ロングドライブでは、意外と冷静にいろんなことを思索できる。オーディオ更新の様々なプランが浮かんできた。愛車の中はある意味、危険な空間である。
そして、先週、めでたくゴールインとなったのである。
いや、ゴールではなくスタートだった。メインアンプがなければ音は出ない。困ったものであるが、本当は(もちろん)困っていない。
ワクワクしかないのである。
しばらく、日記が続きそうな予感。




