ブラームス:
交響曲第1番ハ短調作品68
シャルル・ミュンシュ 指揮
パリ管弦楽団
(1968, Angel)
偶然入手したレコードだが、名盤だそうである。非常に楽しみ。1968年没のシャルル・ミュンシュ最晩年の録音で、国立パリ管を任せられたレジェンドの矜持を感じるとの評もあるようだ。
重々しいスタート。音のバランスも下の方に重心を置いていて録られているし、テンポもゆったりだ。
そんな中でも管楽器に明るさがあるのは、やはり「フランスらしさ」という括りになるのだろうか。
フランスらしさ、ドイツらしさという話でいえば、シャルル・ミュンシュ(カール・ミュンヒ)という人は、ドイツ統治時代のストラスブール(シュトラスブルク)に生まれた。
小学校の教科書に載っていた(中学だったかな?)ドーデ作『最後の授業』のストーリーを地で行くような少年時代があったのだろうか? (状況的に独仏が逆ではあるが)
ミュンシュはドイツ式のウムラウトを嫌って、「Münch」の綴りを「Munch」にしていたという話もある。
音楽とはまったく関係ないが、近所の商店街に「Strasbourg」というこの辺じゃ有名な洋菓子屋がある。僕はずっとその店のことを「シュトラスブルク」だと思っていて、家人にそう発音したら、「ストラスブールだよ」と言って笑われてしまったことがある。
それもこれも、すべては普仏(独仏)戦争のせいなのである。
おっといけね、終楽章が終わりそうだ。素晴らしい気合。これはパリ音楽院からパリ管に「昇格」した時の「選抜」メンバーによる演奏と思われる。ミュンシュもボストンから帰ってきて、さぞや祖国での国立オケの指揮を喜んでいたことであろう。
そうしたことがすべて見えてしまう演奏。名演の裏には特別なストーリーがあるのだな、と思わされる。