日時:2025年2月22日(土)14時開演
会場:ミューザ川崎シンフォニーホール

ベートーヴェン:

ヴァイオリン協奏曲ニ長調op.61
   ヴァイオリン独奏:吉本梨乃

チャイコフスキー:

交響曲第5番ホ短調op.64


原田慶太楼 指揮

東京交響楽団

 

「ニコ響」でのタイムシフト自宅視聴。いままで好きでも嫌いでもなかった原田さんを、今日の演奏で一発で好きになった。これからも注目していきたいと思う。

 

 

チャイコフスキーの交響曲第5番。大好物だが、「おやっ」という演奏に出会うと、もしかしたらすごい嫌悪感が湧いちゃうのかもと思って注意していたが、冒頭の超ゆったりしたクラリネットの序奏のあたりから「これは!」と期待が高まるものがあった。

 

 

原田はこの曲に大音響は求めない姿勢。しかしながら、緩急の揺らし方がものすごく、これには劇的なものよりも内省的なものを表象せしめようとした意図を感じてしまった。

 

 

たしかに、ベートーヴェンの冒頭とは打って変わり、後半のステージに出てきた原田の顔は真顔、いやそれどころか顔面が硬直しているように見えた。敢えて「笑み」が浮かぶような音楽を全て捨てる覚悟で指揮台に上がったのだ。冒頭はタクトも持っていなかった。

 

 

繰り返すが、東響も大音響というパフォーマンスではなかった。一般的なこの曲への希求とは異なるかもしれないが、でもそれが今回の原田の意図だった。素晴らしかったと思う。

 

ちなみに、こういう無料配信のオケの番組は、どんどん続けてほしい。コメントなんかをみていると、けっこう会場に行きたいとか、川崎に住みたい(←ボクもそれ)とか、一度、生で聴いてみたいとかの意見が見られる。

 

これでいいんだと思う。

 

損して元取れ、ではないが、内田樹が、書籍の世界で言っていたように、「無償で聴いてもらったとしても、本当に良いものだったら、いずれ有償で買ってくれる」のである。

 

内田はこうも言っていた。

 

「有償のものを買ってもらうために、作品を磨いていく努力も作者には必要だ」(著作権に安住していてはダメ)

 

クラシック音楽なんて普及させるつもりがなかったら、間違いなく失われていく文化なんだから、なにか「努力」をしなければならないと思う。

 

その点で、東京交響楽団の無料配信「ニコ響」は、本当に素晴らしい。