エルガー:
チェロ協奏曲ホ短調作品85
エニグマ変奏曲作品36
ジャクリーヌ・デュ・プレ(Vc.)
ダニエル・バレンボイム 指揮
フィラデルフィア管弦楽団
ロンドン・フィルハーモニック管弦楽団(エニグマ)
(1970,CBS)
本当はスタジオ録音のEMI盤を探していたが、CBSソニーのライブ盤の方が先に見つかったので、購入。
入手したのは1976年発売の日本盤だった。裏面の解説が「美しい夫婦愛の物語(ダニエルとジャッキー)」と題された文章で、涙なしでは読めない。難病を発症して3年ほどしか経っていない時期に発売されたレコードなのだ。
復活への期待をとても温かい眼差しで綴る、この文章の著者は、音楽プロデューサーの藁科雅美である。
因みに、デュ・プレが亡くなったのは、このレコードの発売から約10年後の、1987年であった。
出身が英国・オックスフォードということで、デビュー時からエルガーのチェロ・コンを十八番のようにしてきたようである。これ以上の演奏はないんじゃないかというほどの素晴らしいパフォーマンスである。「ダニエル」の愛も随所に感じてしまう。とにかくチェロという楽器の魅力がたんまり。鋭さと綺麗さとのバランスが最高に心地よい。
主題の「ミーファ(#)、ミーソ、ラーソファ(#)ー」が耳に残る。朝聴いて行ったら、間違いなく夕方まで耳に残っているはずだ(なんで朝聴いた曲って1日ずっと残るんだろうか)。
当盤では、ロンドン・フィルの日本語表記が「ロンドン・フィルハーモニック管弦楽団」となっているが、現在なら普通、「ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団」のはずである。レコード会社や時代によって表記に揺れがあるのも、中古レコードの面白さかもしれない。
もう一つ、このレコードの裏に、「EMIのご厚意で」とか「RCAのご厚意で」とか、英語でわざわざ断り書きがある。
デュ・プレはEMI、フィラデルフィア管はRCAの専属であるが、所属会社のご厚意でバレンボイムの専属のCBSへの登場が実現した、という意味だ。
映画会社も昔は「専属」制だったから、俳優は大変だっと思うが、ミュージシャンもめんどくさいんだな、などと改めて思った。