NHK-FM「ベストオブクラシック」
フランス音楽の名曲⑸ ラヴェルとベルリオーズ
初回放送日:2024年5月24日
⑴ラヴェル:ピアノ協奏曲ト長調
ピエール=ロラン・エマール(ピアノ)
⑵ベルリオーズ:《幻想交響曲》作品14
ミッコ・フランク 指揮
フランス放送フィルハーモニー管弦楽団
(2023.6.6,スイス、モントルー、ストラヴィンスキー・オーディトリウムにてのライブ収録)
休日の朝は、昨夜放送されたクラシックの音源を、聞き逃し配信で愉しむ。公演の録音はスイス放送協会。
今週のシリーズで最も期待していた放送だけに、姿勢を正してスピーカーに向かったが、まったくもって期待通り、いやそれ以上の素晴らしい演奏であった。
かつて「デュトワと瓜二つ」とのたもうた山田美也子女史の実況を思い出しながら、ピエール=ロラン・エマールさんの演奏姿を想像する。
いまのフランス放送フィルは、フランス国立管(OFN)よりも上手いんじゃないか。いまのOFNを知らないからよく分からないのだが。少なくとも、20年前のフランス国立には余裕で勝っている。やはり、音楽監督のミッコ・フランクの手腕なのだろうと考える。
両手のピアノは、冒頭も終楽章もゆっくりしたテンポで、音の綺麗さを心に留めさす効果があった。難所のトランペットも2楽章のローラングレも素晴らしく、オケに埋もれるなんてことはまったくなくて、気持ちの良いほどの貫徹感。
アンコールは、シゲティの曲がいい曲と思った。
《幻想》でも、音符の一つ一つの響きを聞かせていく。早く通り過ぎてしまうのを避けるように、その時その時の和音を大切にしている感じだ。そして、その意図はオケの技量によって見事にはまっていた。
昔の同曲の演奏がYouTubeにあった。
年寄りではないのに座って指揮しているのでびっくりしたが、この時は腰を痛めていたようだ。
オケに女性が多いと、こういうサウンドになるのだろうか。完全に偏見であり、不適切な発言なのは十分承知だが、モントリオールもスペイン放送響も、僕の好みの音を出す楽団は、みな女性が多い。(東響もたしかにそうだ)
ミッコ・フランクの故郷・フィンランドの曲、アンコールに演奏されたシベリウス《悲しきワルツ》が、こんなに美しい曲だったとは…。リズムも重い所がなく、まるでラヴェルの《ラ・ヴァルス》のように聞こえた。
フランス放送フィルは、楽器も奏法もみなフランス式なのであろうか。上のYouTubeでは、たしかにコンバスは全員フレンチ・ボウだった。
響きの収録もうまい。スイス放送協会のスタッフなのか外注なのか不明だが、向こうの人々は本当に素晴らしいと思う。月曜日の放送もそうだったが、そもそも会場の響きが良いのもあるだろう。しかし、ヴァイオリンの音が、上の方へサーッと抜けていく音を再現するのは、放送技術も多分に関係していると思う。
会場のストラヴィンスキー・オウディトリウム
(スイス・モントルー)
今朝は大満足の音楽鑑賞であった。