チャイコフスキー:
三大交響曲集
ヘルベルト・フォン・カラヤン 指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(1971,Angel)
11月4日(土)、久々の県民ホールの帰りは、旧友と親交を温める。心臓の手術をしたというので「お酒は控えよう」と言ったのだが、一杯ぐらいならということで、揚州商人へ。天下の中華街を目前にして、わざわざ揚州商人に行くという、ハマっ子にしかできないゼイタクを味わう(笑)
今日のコンサートについて感想を出し合いながら、じきに昔話が始まるのはいつものことである。実に良い時間を過ごした。考えてみれば、コロナ禍だったので、彼と会ったのは4年ぶりぐらいなのだ。
帰り、興に乗った二人は、ディスクユニオン関内店に寄ることにする。この周辺に来て、この店をスルーして帰ったことなど、私にはない。
彼はもっぱらYouTube派で、ベートーヴェンの《月光》が好きというので、「ちゃんとCDを買いなさい」とバックハウスのCDを探した。が、なかったので、ケンプの「3大ソナタ集」を薦めてあげた。隣のバレンボイム盤が280円だったので、それじゃダメかと聴く彼。「ダメです」と答えたら、「分かった。ケンプ、買うよ」と680円の方を素直に選んでくれた。
で、僕はレコードの餌箱をさらうが、連休だからか、箱がスカスカ、大方、昼間のうちに買われて行ってしまったのだろう。
こんな時は、これしかない。カラヤンのレコードである。カラヤンのレコードはだいたい売れ残っていて、価格も安い。チャイコフスキーの3大交響曲集(2枚組)が380円だった。ラッキー、とこれをゲット。
まあ、しかし、このレコードがまさに、言わずと知れた「低音質盤」として有名なのだ。EMIの1971年のこの録音は、クアドロ・フォニック(4チャンネル・ステレオ)のための実験的なマルチチャンネル録音だったらしく、2チャンネルに戻した現在の機器で聴くとなると、みょうちくちんな残響音ばかりが目立って、輪郭がまるでつかめない代物。
それを承知で購入したのは、演奏それ自体がたいへん熱っぽくて、クールなカラヤンのイメージとは異なり、僕には結構好きな音楽だったからである。加えて、ものの本によると、フォーグラー氏ばかり起用していたカラヤンのレコードには珍しく、全曲ともテーリヘェンによるティンパニであるらしく、演奏記録としては希少価値があるのだ。
4番の録音品質が極めて悪かったが、5番はそうでもなかった。なぜか、巷間、今年はチャイコフスキーの交響曲第5番が人気だ。なぜなんだろう。よく分からないが、そういえば、年末のコバケンのジルベスターもチャイコの5番になったそうだ。
流行に関係なく、僕の大好物であることは変わらないのだけれど。
カラヤンのチャイ5、とても良い。エナジーは、この1971年盤の方が感じ取れる。すぐ後にグラモフォンに録音した全集は、レコードもCDも所有しているが、流麗で透明感がありすぎて、ウォッカ(ヴォートカ)があまり似合わない。