先々月、書店でこの表紙を見つけたときは驚喜した。発売予告などをチェックしていなかったし、そもそも、レイフ・ヴォーン・ウィリアムズ(R.V.W.)が、今年、生誕150周年であることすら、うっかり失念していたからである。

 

没後50年だった2008年にも、「レコ芸」は特集を組んだが、表紙になるほどではなかった。それでも、EMIから30枚組ボックスが発売されるなど、少しはメモリアル・イヤー感があったと記憶する。その頃は地方に住んでいたこともあり、関連するコンサートに行った記憶はないのだが。

 

そういえば、昨年9月にミューザ川崎で行われた東京交響楽団の演奏会は、「オール・R.V.W.」プログラムだった。コロナ禍にあり、珍しい《イギリス民謡組曲》の管弦楽版や、《グリーンスリーヴズによる幻想曲》を生で聴けたというのは、本当に感動的な経験だった。

 

 

さて、今号の「レコ芸」のR.V.W.特集の中で最も光って見えたのは、「R.V.W.の評伝の翻訳本が出版される」という話題だった。小町碧(こまちみどり)さんというイギリス在住のヴァイオリニストが、いま翻訳中という。

 

R.V.W.に関する本で日本語で書かれたものは、これまで皆無だったと思われるので、これは実に画期的なことだ。

 

翻訳されるのは、サイモン・ヘッファー著『ヴォーン・ウィリアムズ』(Simon Heffer, "Vaughan Williams", 2000)で、日本人が入門的に読むのに最もふさわしいという判断だったようだ。

 

たしかに、僕が2004年11月にイギリスに行ったとき、オックスフォードのBlackwell's Musicで購入してきたのも、この本だった。

 

(この写真は2015年4月の訪英時に撮影)

 

扉をみたら鉛筆で「£8」と古本価格が書いてあった。手当たり次第で次々にR.V.W関係のCDやスコアを買い物かごに入れて「爆買い」した中の一冊だった(新本価格は「£12.99」と印刷されている)。

 

 

 

夏休みなどの時間があるときに少しずつ自分で訳して読んでみよう…と勇んで帰国したのだったが、数ページ読んだ後、早々に挫折したまま、今日まで我が書棚にひっそりと置かれてあった。

 

だから、今回の小町碧氏の“偉業”には感謝、感謝、感謝しかない。

 

出版が待ち遠しい!