サザンールスターズ『人気者で行こう』

(2008,K2HDマスタリング)

 

 

今日は久しぶりに新品のCDを買った。しかも、“大人買い”で同時に5枚も! 中古の鬼としては、もう新品でCDを買うこともないのかもしれないな…などと一抹の寂しさを感じていたのだけれど、ここへ来て一挙に5個分の包装セロファンを開封することになろうとは。

 

ただし、「新品」とはいってもすでに所有しているアルバムなのである。答えは、サザンオールスターズの1980年代の5枚のオリジナル・アルバムだ。2008年(もう13年も以前!)にリマスターが施されたCDが売られていることは知っていた。しかし、自分には縁がない商品と思っていた。なぜなら、このころのサザンのアルバムは、すでにレコードと初期CDの両方を所有済みであったから。

 

2008年のリマスタリング盤を購入するきっかけとなったのは、夏休みに入る前に、サザンの《Tarako》のマキシ・シングルを買ったことである。《Tarako》は、ファン以外にはあまり知られていないシングルだが、僕にとっては思い出深い曲。ブックオフでマキシ・シングル盤が売られていたので、ついつい手に取ってしまったのである。

 

 

自宅で聴いて、驚喜した。格段に音が良い。手持ちのドーナツ盤(EPレコード)と比べても、サウンドの奥行と解像度が違う。

 

何度も聴く。

 

すっかり虜(とりこ)になった僕がいた。あまり考えずに偶然手に入れた個体だったが、ジャケットを見ると、これは「リマスタリング盤」というヤツで、2005年6月25日(サザン記念日!)に発売されたものであることが分かった。リマスターを担当したエンジニアの名前も書かれていた。

 

「Remastered by 宮本茂男 at FLAIR」

 

「FLAIR」というのは何だろう。さっそく調べてみると、ビクター内の「リマスター工程」のワーク・グループのようだった。エンジニアは6人いるらしい。

 

技術的なことはチンプンカンプンだが、音が良いのは確か(自分の耳が証明)だから、俄然、ビクターのリマスタリング技術、そして「FLAIR」なる組織に興味を抱くこととなった。

 

中学生のころを思い出す。ずっとFM放送で聴いていた楽曲をレコードで入手して、改めて自室で聴いた時の感動を…。

 

FMラジオでは、15kHz以上の音はカットされて放送されているから、詰まったような感じのサウンドになる。それが、レコードで聴くと音に広がりができて、細かな音まで聞こえてくる…。

 

それと同じ感覚を、この《Tarako》のCDで味わったのである。

 

では、他のCDはどうであろう。たしか、サザンの全アルバムがリマスターの恩恵に浴しているはずだ。たしかに、2008年にビクターの「K2HDマスタリング」という方法でリマスターが施されていた。

 

これは、揃えるしかない…。

 

…ということで、新品CD5枚のお買い上げとなったのである。さて、音の方はどうだったのか。その前に、今回買ったCDの残り4枚を備忘録として掲載する。

 

『綺麗』

(2008,K2HDマスタリング)

 

『ヌード・マン』

(2008,K2HDマスタリング)

 

『ステレオ太陽族』

(2008,K2HDマスタリング)

 

『タイニー・バブルス』

(2008,K2HDマスタリング)

 

はっきり言って、非リマスタリング盤の「音の悪さ」に辟易するほどの激変ぶりである。もちろん、大幅に解像感や臨場感が向上しているのである。5枚を聞き終わって、非リマスタリング盤を聴いてみたら、もう笑っちゃうぐらいにゴミだった。

 

実はちょっと不安だったのである。Amazonのレビューでは、あまり音質のことに触れたコメントがなくて、どうしようかと少し悩んだのが事実である。でも、「失敗」したらメルカリで売り飛ばしたらいいや…と開き直って、まとめ買いしたのだ。

 

どうしても、松田弘のドラミングを聴いてしまうが、このリマスタリングでもっとも顕著なのが、ドラムやピアノなどのアタックに特徴がある楽器の音の変貌ぶりだ。とにかく打楽器は、叩く物質の質感まで表現する。具体的には、トライアングルが見え、スネアの裏のスナッピーのルーズさが見え、シンバルの厚さと口径が見えるのである。

 

もちろん、桑田佳祐のボーカルは近年の作品のように明瞭だし、ムクちゃんのベースも、量感がありながらもルーズにならず、音程がよく聞き取れる。

 

さらにもう一つ。

 

僕は、最近「加齢性難聴」気味で悩んでいたのであるが、当リマスタリング盤だと、高音域の不満がほとんどなくなった。不思議である。昔は若いから非リマスタリングのCDでも細かい音を聴けたのかもしれないが、最近は解像感がまったくない音に感じていた。それが、今日買ったこの5枚では、ほとんど払拭されているのである。

 

こういう「投資」で、「良い音」を聴くのもありなのかもしれないな…と、メディアに対する考え方がちょっと変わった一日だった。

 

ちなみに、今回の5枚のリマスタリング・エンジニアは下記の通り。

 

「Remastered by 袴田剛史 at FLAIR」

 

(以下、備忘録)

【K2の理念】
K2は音質をいたずらに派手に加工したり無理な誇張はしません。開発コンセプトが「元(オリジナル音源)と同じにする」ということを踏まえ、あくまでもオリジナルのそのままを忠実に再現することを理念としています。開発にあたり指針とされたのが「変質させない・オリジナルのまま」と「元の状態に戻す・復元する」という2つのキーワードです。それは今でもK2の基本となっています。

 

【K2HDマスタリングとは】
「K2HDマスタリング」は、FLAIRマスタリング・エンジニアの感性と新技術「K2 High Definitionコーディング」技術により、最大100kHz/24bitの情報でマスター音源に本来込められている楽曲の魅力を各メディアに収める画期的なマスタリングです。これにより44.1kHz/16bitのCDマスターに192kHz/24bitの音楽情報を収めることに成功し、これまでにはないCDの<<高音質化>>を実現しました。

「K2HDマスタリング」は、原音(オリジナルマスター)が持つ情報と音楽的な魅力を余すこと無く引き出すことを主な目的とし、使用される音源の形態、フォーマット、音楽ジャンルなど作品内容ごとに最適なマスタリングを行います。その為にはその音に対する的確な判断が出来る高い技術と感性を持ったマスタリング・エンジニアの存在は欠かせません。

新技術「K2 High Definitionコーディング」によって、従来CDフォーマットでは切り捨てられる20kHz以上の高調波成分(※)を自然界の音楽信号成分と音楽エネルギーが等価になるように、その基本波成分(※)に演算処理を行い、最大100kHzにも及ぶ広帯域で24bitの高分解能に相当する情報を44.1kHz/16bitのCDフォーマットに収めました。これによって本来のマスター音源に込められている楽曲の魅力を再現することに成功しました。

「K2HDマスタリング」は、豊かな空気感や音場の再現に特に効果を発揮します。マスター音源の内容や音楽のジャンルによって異なりますが、“柔らかいながらも高域に伸びがあり、奥行き感のある”アナログに近い仕上がりになります。この効果は通常のCDプレイヤーでの再生が可能で、その魅力が十分に発揮されます。

(ビクター・ホームページより)