ベートーヴェン:
交響曲第1番ハ長調作品21
交響曲第3番変ホ長調作品55
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(1977,TOKYO FM)
令和3年が素晴らしい年となりますように。ベートヴェン生誕251年の今年は、交響曲「第1番」から音楽鑑賞をスタート!
ディスクは年末に入手したばかりの、昭和52年11月13日に立正佼成会の普門館(東京・杉並)開催されたカラヤン&ベルリン・フィル来日公演のCDをチョイス。昭和52年といったら、僕は小学2年生。当然オーケストラになど何の興味もなかったころのことだ。当時の日本で行われた公演記録が、こんなにも鮮明な音声で残されていることに感動を覚える。
FM東京が放送用に録音していたもので、技師はあの若林駿介。磁気テープは「スコッチ206 38cm/sec」で保管されていたと、ブックレットに書いてある。詳しくはないが、2chのオープンリールのテープということであろう。これを96kHz/24bitでデジタル・リマスタリングして、2010年にCD化したもののようである。
これもブックレットに書いてあったのだが、若林さんは残響を排してなるべく精緻に収録することを心掛けていたそうで、会場の残響を拾うためのマイクは使っていないらしい。なるほど、大きな普門館での(しかも、前日にカラヤン自ら音響チェックした)収録にもかかわらず、音が「デッド」で響き感がゼロに近い。しかし、エンジニアの狙いは完遂していて、実にリアルな音場感を再現できていると、僕は感じる。
お屠蘇をいただきながら、もう3回もリピートして聴いているが、僕は、1970年代のカラヤンのベートーヴェン全集と同じスタイルの演奏を、1980年代の全集に近い音質で聴ける素晴らしいCDだと思った。1980年代のカラヤンのベートーヴェン全集も、どちらかといえば残響感が薄く、音の塊感が強調されているから、今日のCDに近いな、と思ったのだ。
ブックレットにはいろいろと裏話が書いてある。同じチクルスでの《運命》と《田園》のセットは、実は若林さんではないFM東京のエンジニアが収録に当たったので、アンビエントをたくさん拾った、一味違うCDになっているとのことである! これは、買わなくてはならぬ。
カラヤンとベルリン・フィルのレコードは、1970年代のものが最高であり、1980年代のデジタル録音は、カラヤンの趣味あるいは商業主義的発想から生まれた企画で、カラヤン自身の体が衰えてきてからの仕事なので、実は良くないのだ…とする醜聞(風評)が存在する。しかもザビーネ・マイヤー事件以後に録音されたものについては、「駄盤」(←ひどいなあ)という言い方をする評も見たことがある。
しかし、僕自身は80年代のベートーヴェン全集が好きなのである。自分の中では「ザ・ベートーベン」と定めているのである。他の全集は売ってしまって手元にないものも多いが、カラヤンの80年代のものは、死んでもあの世に持っていくつもりなのである。ただこれ、70年代の全集のような勢いや鋭さが若干薄まっているのは、よく言われている通りだと認識している。激しいベートーヴェンを求めたくなった時は、“両性具有”の当シリーズ=「FM東京盤」を聴けば、必ずや解決するであろう。
というわけで、東京での1977年の実際の演奏会はどのような感じだったのであろうか。僕はカラヤンやバーンスタインは無論のこと、小澤征爾の実演にすら接したことがない。チャンスはあったのに、と最近ちょっと悔やんでいるのである。
だから、5月の大阪のシャルル・デュトワは外したくないんだよなあ…。
