チャイコフスキー:

交響曲第5番ホ短調作品64

 

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

ワレリー・ゲルギエフ 指揮

 

(DECCA, 1998)

 

----------------------------------------------------------------------

 

形相が険しくて(ジャケットのね)、とてもとても濃ゆい音楽であろうことを予測しながら、針を落とした…じゃなかった、再生ボタンを押した。

 

ロシア人のワレリー・ゲルギエフがウィーン・フィルハーモニー管弦楽団を初めて指揮した録音だという。発売当時、たしかに話題になったディスクだから、なんとなく覚えてはいた。1999年発売といったら、まだまだ日本じゃ円盤がよく売れていた頃なので、『レコード芸術』誌の記事や広告を賑やかせていたことだろう。

 

とはいえ、もう20年も昔の録音なのだ。平成11年なんて僕にとってはつい最近のことなのだが、「ブック〇フ」の値付け屋さんから見たら、最低ランクの価値しかないということなのだろう。今日、290円コーナーから救出してきたのである。盤面・ジャケットはたいへん綺麗で、帯まで付いていた。

 

ウィーン・フィルの響きが心地よい。これだけアゴーギクを効かせてもオケがちゃんと演奏できるって、いったいどういうことなんだろう。聴いていて一瞬、音楽から意識が遠ざかった。バーンスタインの演奏にも、そう感じることがよくある。マリインスキー劇場オケのような荒っぽさ(またそれが魅力なんだけれど)がなく上品なのは、やはりウィーンだからなのだろう。とにかく、あんなに揺らして、そして飛ばして、アンサンブルが乱れないというのが、もうアタシには不思議でしょうがない。

 

終楽章のティンパニーがカッコ良かった。

 

楽譜にないことを、追加してどんどんアイディアを出すのが、やっぱり指揮者やオケの個性、ということになるのだろう。カラヤンとウィーン・フィルの1980年代のデジタル録音が愛聴盤だが、今日からこのゲルギエフ盤もCD棚の目につく所に置くことにする。

 

ところで、4月になって自室のオーディオ機器を総とっかえした。だから、今回のCDもその新しい環境でのリスニングである。1990年代の「僕の部屋」の音に回帰したからか、とても潤沢にコンサートホールの余韻(残響)が聞こえてくる。素晴らしい! …と悦に入っているわけであるが、そのあたりの事情はまたの機会に。