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ベートーヴェン:
ピアノ協奏曲第3番ハ短調作品37
ピアノ協奏曲第5番変ホ長調作品73
 
アレクシス・ワイセンベルク(p)
ヘルベルト・フォン・カラヤン 指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(TOKYO FM,2012)
 

 
今日は暑い中(とはいえ冷房が効いた室内で)久しぶりに吹奏楽の練習を指揮した。たった1時間だけだったが、まあちょっとした気晴らしにはいいと思う。9月2日が本番だそうだ。こりゃ大変。
 
さて標記のCDは、実に感動的なディスクである。まず、大好きなベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番。5曲中唯一の短調の曲だが、僕には昔からマイナースケールに反応する血が流れているようだ。次に、いま「ドはまり」しているフォン・カラヤンのライヴ演奏、しかも「あの」普門館での東京公演を収録した秘蔵音源のCD化だそうである。ここのところ中古CDばっかり買っている俺が、久しぶりにキャラメル包装を解いた商品。
 
といっても、発売が2012年ということで、昨日今日のホットな話題ではない。ブックレットによると、この音源は、収録はしたものの放送権の関係でお蔵入りになったものとか。
 
演奏は、それはそれは緊張感に満ちたもので、客席からの視線までディスクに収録されているかのようだ。録音技師は「あの」若林駿介と書いてある。中学~高校時代の愛読誌『FMレコパル』の生録特集などによく登場していたあの面長のおじさんではないか。若林氏の業績を、僕は今回初めてはっきりと意識した。
 
FM放送の収録というのは、レコード録音とはまったく違うコンセプトなんだろう。FM放送はリビングや自室の立派なステレオセットで受信している人だけがリスナーとは限らない。キッチンで料理しながら聞いている人もいるかもしれないし、通勤中、都会の雑踏の中で、小型ラジオやカーステレオで聞いている人もいるかもしれない。となれば、オーディオ的にあんまりダイナミックレンジを広くすると、聴取困難な箇所が出てくる。そうなると放送局へは苦情の嵐、ということになるだろう。
 
だから、「このような」音質なのだろうと思う。現在のNHK-FMも同様である。僕が常々感じていることである。
 
このディスク、たしかに音は良い…かもしれない。でもそれはレコード音源ではなく、放送音源の範囲での話ではないか。はっきり云うと、カラヤン&BPOの全盛期の数々の名演(グラモフォンやEMIの盤)にはまったく及ばないサウンドだと思うのである。何も加工していないのだから、これこそが正しくて、レコードの方が偽物と云うこともできるのだが…。
 
ブリリアントな感じがあまり感じられないCDであったが、カラヤンがたしかに1977年の日本に来て、凄まじい演奏をしていたという事実について証明してくれる記念碑的なディスクであることには違いない。当時、普門館の客席で聴いていた方々には、だいぶ遅く届いたプレゼントだったのではないだろうか。
 
最後の拍手は処理ができなかったようで、そのまま残されている。拍手のピッチが高いのは日本人の証だそうな。たしかに、ミケランジェリ&ジュリーニの同曲のCD(グラモフォン盤)に入っている拍手は肌理が粗くてピッチが低い。嗚呼、ヨーロッパ人って手が大きいのね、ということが分かるのである。