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ショスタコーヴィチ:
交響曲第5番ニ短調作品47
 
小澤征爾 指揮/サイトウ・キネン・オーケストラ
 
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シューマン:
(オーケストラレーション:ショスタコーヴィチ[作品125])
ヴァイオリン協奏曲イ短調作品129(原曲:チェロ協奏曲)
ショスタコーヴィチ:
ヴァイオリン協奏曲第2番嬰ハ短調作品129
チェロ協奏曲第2番ト長調作品126
グラズノフ:《吟遊詩人の歌》作品71
 
ギドン・クレーメル(ヴァイオリン)、ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ(チェロ)
小澤征爾 指揮/ボストン交響楽団
 
(2006,1992,1975,PHILIPS/DG)
 

 
いま発売されている2枚組再発盤。なんと、グラモフォンとフィリップスのCDを2枚組のワン・パッケージにしてデッカ・レーベルから発売という…なんとも気持ちの悪い事態が起きている商品。でも、「タコ5」の録音は明らかにPHILIPS。2007年にデッカに吸収されたフィリップス・レーベルは、こうして“まぼろしのレーベル”と化してしまうのであろうか。淋しいかぎりだ。
 
「タコ5」のほか、シューマン(ショスタコ編)のヴァイオリン協奏曲、ショスタコのヴェイオリン協奏曲第2番とチェロ協奏曲第2番、グラズノフの《吟遊詩人の歌》が収録されている。Vn.はクレーメル、Vc.はロストロポーヴィチであり、こちらはグラモフォンによる録音。
 
昨日、「タコ5」についてどうしても譜面を確認したい箇所があり、仕事中イライラが募って何も捗らなかったので、思い切って年休を2時間申し出てYAMAHA横浜店でスコアを買ってきた。夜に年度末の慰労会&送別会があって、仕事が終わってからじゃ買いにいけそうになかったので。
 
自宅の一室に積まれたダンボールのどこかには、高2のとき買ったボロボロのスコアがあるはずだったのだが、もはや取り出せる状態ではなくなっているので仕方なく。
 
さて、今回の「タコ5」は、小澤征爾指揮/サイトウ・キネン・オーケストラの2006年のライヴ盤。アマゾンのレヴューでは毀誉褒貶相半ばしており、少し悩んだのであるが、このコンビに対しては根強い「アンチ」が存在しているらしく、CDの評価はだいたいにおいてそんな感じなんで、あんまり気にせず、心のままに購入してみた。新品のCDを買うなんて久しぶり。キャラメル包装をグルグルと解いていくのが嬉しい。
 
結論は、「買ってよかった」…。
 
2006年9月9日、11日、12日の長野県文化会館での公演から編集されたようだ。フィリップスらしい重心の低いバランス。ホールのせいで響きはほとんどない。でも、「塊感」がハンパなく、楽想にマッチしているように僕には思えた。
 
聴きはじめ、最初の楽章で早くも「うまいなー」と思った。練習番号「18」(132小節)からのトランペットの低音が奏でる主題は、楽譜ではフォルテ表示であり、なんとなく盛り上がる予兆が見える辺りでもあるので、多くの演奏(CD)だと、だいたい劇的に強いアタックを伴って出てくるところなのだけれど、この演奏では他の楽器に溶け込んでいて、トランペットだけを突出させていない。
 
一聴して、管楽器の音量・音色の幅が広いなあ、と思える。要は、ただ吹きゃいいってなもんじゃないんだなって、考えさせてくれるような演奏。ショスタコーヴィチにおけるトランペットとか打楽器なんて、とかく一本調子になりがちだもの。
 
テンポについては、びっくりするような大きな変化をつけている箇所はないのだが、具に聴くとけっこう楽譜にないニュアンスをたくさん加えている。気落ち悪いくらいにテンポ指示が具体的な譜面だが、そんな指示なんてどうでもよくなるような面白さがある。
 
第2楽章の終わり方なんかも、自然の勢いに任せて突進しているように見せて、実は微妙に変化球だったり。昨日今日で、もう10回以上(もっとかも)リピートして聴いているから、よく分かるんだけれども。
 
大好きな第3楽章は、冒頭からしてもう、本当に、感動させていただきました。小澤征爾のうなり声が一緒に収録されている。こういうのって、小澤征爾のCDではあまり聴いたことがない。コバケンにはあるが。
 
僕はショスタコーヴィチの木琴の使い方が好きだ。滑稽&諧謔的にもなるし、異空間的というか異次元的な響きを加える(終楽章における早い16分音符の連符の部分とか)。なんというのかな、ショスタコーヴィチをショスタコーヴィチたらしめているのは、僕は、打楽器の音色や表現に表れる諧謔性だと思うのだが。風刺なのか自嘲なのか。よく分からないが独特のリズム表現だと思う。
 
終楽章はゆっくり始まってゆっくり終わる演奏。13分もかかる。バーンスタインとは対照的。ふと思ったんだが、佐渡裕の「タコ5」は、どんな演奏なのだろうか。
 
途中、トランペットにはもっと強奏してもらいたかったなぁ…と残念に思う箇所も個人的にはあったのだが、そんなの枝葉末節。バストロの音が最強なので、全体としては許せてしまう。トロンボーンの元気さにラッパが埋もれてしまった、というのが録音技師の心の声かもしれない。
 
また、第1楽章からリピートして聴いてしまう。購入3日で、これだけリピートするのは初めてのことだ。
 

 
昨日、ベルギー・ブリュッセルで爆弾テロが起き、多数の死者が出た。パリといいブリュッセルといい、本当に物騒な話である。4月にイギリス研修があるが、タイミング的に最悪の時期だ。中止とか行き先変更とか、今後ばたばたと何かありそう。