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チャイコフスキー:
交響曲第4番ヘ短調作品36
《イタリア奇想曲》作品45
 
小沢征爾 指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(1988,DG)
 

 
チャイコフスキーの「4番」は、数多ある交響曲の中で最も好きな曲の一つかもしれない。
 
ジャケットには「小澤」ではなく「小沢」とある。当時のグラモフォン盤ではそういう表記だったのかも(次の《5番》では「小澤」という表記に変えられている)。
 
発売当時、チャイコフスキー後期交響曲全集の録音開始! ということで、大いに期待したのであるが、《悲愴》は結局、ベルリン・フィルとは録音しなかったはずである。どこかで路線変更を余儀なくされたのかもしれない。
 
この少し後に、小澤征爾はウィーン・フィルとのCDをしばらく立て続けに出している(フィリップス盤)。その第一弾のドボルザーク《新世界より》は、小澤征爾の演奏の中でも白眉であったと個人的には思う。
 
さて、このCDだが、これも僕はすごくいいと思う。
 
楷書体の音楽…というと面白みに欠けているのかと誤解されそうであるが、悪い意味じゃない。縦のの線がすぱっとしていて、エッジが鋭角。テンポは全体的に遅めだが、一つ一つの音符を大切にしている…と言いたい。第2楽章もゆったりとしている。拍子感というか小節感を出し過ぎていて、長いフレーズを意識したような浪漫さが足りないとする向きもあるかもしれないが、それではちょっと60年代の巨匠の演奏めいていて、時代遅れの感が出すぎであろう。
 
今は、もう無人探査機が小惑星に行って、砂を持ち帰ってくることができる時代なのだから。小澤征爾のしっかりと楽譜を聞かせるような姿勢は解釈者として至極当然と思う。
 
フィナーレ、一番最後の強奏にシンバルとグランカッサが入っている(本来の楽譜上はトライアングルのみ)のは、録音ディレクターの指示なのか、「小沢」の解釈なのか、はたまた奏者からの提案なのか。
 
どっちにしても、僕は自然な欲求の爆発のようで好きだ。