役者のオーディション写真や宣材写真は、
ほとんどの人たちが、若くてカネがないので、
自分たちで撮影するか、安いところに撮りに行く。
もちろん、それでもいい。
でも、何年経っても売れない人たちは、
きっと、何かが間違っているのだ。
よく「才能がない」と切り捨てるが、
主役級なら、才能がなくて主役級には難しい人もいるだろうけど、
役者って、いろんな人が必要だし、年齢も様々。
だから、ぼくは、なれない人なんていないと思っている。
このオーディション写真について興味を持った出来事がある。
あるとき、15歳から役者を目指し、早10年。
今まで一度もセリフをもらえたことがないという女性が来た。
そんな話を聞いて、
いざ、撮影しようとカメラを向けると・・・
可愛いポーズをした。
僕は撮影を止めて聞いてみる。
「いつもそういうポーズする?」
すると、そうだという。
そこで、撮影は、一時中止。
彼女に、こんなことを教えたのだ。
・芸能の世界と一般の世界の違い
一般の世界は、普通の人が多くて、可愛い人や不細工な人が少ない。
いわゆる、菱形の比率になっている。
でも、芸能界は、可愛い人やキレイな人が最も多くて、
普通の人は少ない、そして、不細工な人たちがちょっと多め。
いうなれば、上が大きく、下が小さい砂時計のような感じだろうか。
彼女の見た目は、普通の下くらい。
それなのに、一生懸命自分を可愛く見せようとしていたのだ。
もちろん、本人的には、可愛く見せたいのは当然だろうが、
役者としては、激戦区に自ら突っ込んでいくようなもの。
役者じゃなくて、アイドルとか、歌手とか、モデルとか、なら、
頑張る必要があるかもしれないが、役者なら、頑張らなくてもいいとおもうのだ。
彼女を見てみると・・・なんとなくオタク少女系の雰囲気がする。
そこで「パソコンとか好き?」と聞くと。
好きらしい。
「アキバとか、行ったりする?」と聞いてみると。
よく行きます。
やっぱり。
「君は、どうみてもオタク少女だ。だから、オタク少女っぽく売った方がいいのではないか?」
と、伝えたのだ。
もう10年間、まったく売れない彼女だから、
それが、嫌だと思っても、今までのやり方ではどうしようもないのは分かっている。
なので、僕の提案に同意して「THE オタク少女」な写真を撮影。
撮影するといっても、特別なテクニックもポーズもない。
なんせ、彼女がそのままで、オタク少女に見えるわけなので、
実際、ほとんど、そのまま撮る。
何万円も払って来たが、結果としては、「そのまま撮る」だけ。
で、おわった。
その後、1ヶ月ほどした頃だろうか、
彼女から連絡が来た。
「受かりましたー!なんと、○○さん(有名俳優)の愛弟子が主役の妹役に抜擢されましたー!!!」
とのこと。
今まで、10年間、一言もセリフをもらえなかった彼女は、
いきなり、ほどほどまともな映画で、セリフたっぷりの役をGETしたのだった。
その時、僕は確信した。
「これで、いいのだ」と。
そう、まずは、オーディション撮影に来る若い人達のほとんどが、
自分の特徴がわかっていない。
「どんな役者になりたいの?」と聞いても、
返ってくる答えは、「いろんなことが出来る役者になりたいです」など、
平べったく、薄っぺらい答えばかり。
これでは、役を選ぶ方も困る。
こんな人達は、養成所という名の
集客システムに組み込まれた、あわれな囚人に他ならない。
話は飛ぶが、養成所で行われていることを聞いてみると、
ほとんどが、適当な芝居を作って、それを延々とやるらしい。
それで、多少の経験にはなっても、うまくなることはないだろう。
だから、僕は、みんなに、基礎をよく学ぶように伝えている。
基礎を学ばなくても、生きてきて身についている人もいるが、
ほとんどの人達は、「なぜ笑うのか?」「なぜ怒るのか?」
どうやって歩いているのか、なぜこの身体の形なのか?
そうした、人間の基礎を全く知らない。
心の動きと、それに伴う身体の動きの関連性が分かってないし、
人は、身体の動きを見ていると思っているが、
実際には、心の動きを見ていることにすら気がついていない。
なので、まずは、自分の特性を知ることから始める。
自分の特性は、実は、自分では以外と分からないからややこしい。
人から見ると一目瞭然だし。
心理テストや正確分析などをおこなうと分かりやすい。
もともと、自分自身がもっている能力を最大限使って、
他の人にはない力を発揮することが、まず第一だと思う。
そうすれば、自分は、とくに大変な練習や修行をしなくても、
自分そのままなので、役をやりやすいのだ。
それが極められると、勝手にすそ野が広がって、
多くのことが出来るようになってくる。
まずは「一箇所に石を積め!」と言っている。
同じポイントに、集中することで、厚みが増す。
石を積んでいっても、途中崩れて、挫折を味わう。
でも、その崩れた石は、すそ野になっていくように、
大きな山を形成するための土台になっていくのだ。
崩れても諦めず、また、同じところに一を積み重ね続けることが大事。
崩れて、積み、崩れて、積み、繰り返していくことでエキスパートになっていくし、
気がついたときには、人としても大きくなっている。
さらに、役者としても、崩れて出来たすそ野のおかげで、いろんな役ができるようになっている。
まずは、どこに積むか?これを見極める。
それが、自分の特性が最も生かされている人物像としての役だ。
もし、自分が監督やプロデューサーなら、どんな役者を起用したいだろうか?
例えば、不良少女の役があったとする。
「私、不良少女も出来ます」という人と、
「私、不良少女専門です」という人。
当然ながら、専門の方がすごそうに感じるだろう。
昔、悪役商会という役者の団体があったが、
まさに、それを現実化しているチームだったのだ。
悪役以外にももちろん出来るが、悪役に絞ることで、
悪役の役という役を、総ざらいした。
その後、悪役商会がなくなって、
役者の人達は廃業するかというと、そうではない。
ちゃんと、悪役以外でも活躍するのである。
若い人達の中には、専門化するというのが怖いと思う人もいると思う。
なぜなら、チャンスが目の前に来ても、
それが専門外なら掴まないか掴めないからだ。
だから、チャンスはすべてチャレンジするというのもいい。
でも、あまりにも広げて行いすぎると、専門性が薄れてただの人になってしまう。
役者になると決めたときから、
役者という、職業としては、あまりにも専門性が高く、
慣れる確立も非常に低い職業を選んでいるのだから、
それを、さらに絞って行くだけとは考えられないだろうか?
ぜひ、周りの人たちに「自分には何が向いているだろうか?」と聞いてみたり、
事務所に所属していたり、養成所に入っている人たちは、
自分に、どんな役が多く来るか?を見てみると、それが特性に合っていることが多かったりする。
もちろん、その役をやったときに、気持ちが良かったり、
やりやすかったり、人からの評価が高かったりすれば、きっと、その線で間違ってはいないだろう。
だから、オーディション写真も、その専門性が分かるように撮ることをおすすめする。
そして、その役について、徹底的に分析して研究して、練習していこう。
それをやるだけで、先に書いた女性のように、
今までダメだった役者人生に、光が差すに違いない。
自分の特性が分かり、発揮できるようになったら、
次ぎにやることは、人間の基本を知ることだ。
先にも書いたが、人は身体の動きを見ているのではなく、
声を聞いているのではなく、心の声を聞き、心の動きを見ている。
心の動きを身体というアイテムを使って表現することが役者の仕事なのだ。
心の動きに対して、身体がどう動いているのか?
これを、検証していき、それを見た人たちが、どういう反応をするのか?
こうしたことを、学び、研究していってもらいたい。