アーティゾン美術館で開催中(2024年3月30日~7月7日)の「ブランクーシ 本質を象る」展を観に行って来ました

 

ブランクーシといえば、接吻やミューズの頭部の作品をいろいろな展覧会で観ることがあって、身近に感じていたアーティスト

 

でもブランクーシの個展を日本で開催するのは、これが初めてなんだとか

 

これは意外でしたびっくり

 

ブランクーシは、ロダン以後の20世紀彫刻を切り拓いた存在

 

その作品は、「ミニマル・アート」と呼ばれたりします

 

ものの本質を表すために、余計な装飾を削ぎ落して単純化したもの

 

 

≪苦しみ≫ 1907年 ブロンズ アート・インスティテュート・オブ・シカゴ蔵

これは初期の作品

 

まだ写実的な造形だけど、ブロンズという素材の特性に即したツルツルの表面の仕上げを重視しているんだとか

 

確かに、この後で登場するブロンズの作品は、表面が磨かれて、鏡のように光を反射しています

 

磨かれたブロンズに繋がる過程の作品ということか

 

 

代表作の≪接吻≫

 

≪接吻≫ 1907-1910年 石膏 石橋財団アーティゾン美術館蔵

 

全体を通してみると、石膏で作った作品は少ない

 

でも素朴であったかな愛情表現の作品としては、石膏が適しています

 

これが磨かれたブロンズ製だと、冷たく感じてしまいます

 

 

会場では、ブランクーシが自身の彫刻作品を写真で撮ったものも多く展示されています

 

≪接吻≫ 1910年以降 東京都写真美術館蔵

 

オリジナルの彫刻作品の代わりという面もありますが、

 

ブランクーシは写真に撮ることで、また別の作品を生み出していたとも言えそうです

 

そして写真は、マン・レイから教わったようです

 

上の写真は、接吻を写したもの

 

元々は、男女の全身を造形した作品だったようです

 

 

そして磨かれたブロンズの作品が登場

 

≪ミューズ≫ 1918年(2016年鋳造) 磨かれたブロンズ ブランクーシ・エステート蔵

 

≪眠れるミューズⅡ≫ 1923年(2010年鋳造) 磨かれたブロンズ 個人蔵

 

この無表情な卵型の頭部

 

アフリカなプリミティブな芸術で観られる仮面の影響も感じます

 

日本でいえば、能のお面 そしてウルトラマン

 

 

トルソというタイトルの作品がいくつかあります

 

何か分からなかったのですが、調べてみると、人間の胴体だそうです

 

≪若い男のトルソⅡ≫ 1924年(1973年鋳造) ブロンズ 豊田市美術館蔵

 

手や足を削ぎ落して、胴体部分だけにしてしまうとは!

 

そう考えると、衝撃的です

 

 

動物をモチーフにした作品もあります

 

こちらは魚

 

≪魚≫ 1924-26年(1992年鋳造) 磨かれたブロンズ ブランクーシ・エステート蔵

 

形を単純化させた上に、鏡面のような円盤に映し出すことで、水中を泳ぐ姿を想像させます

 

 

そして代表作は鳥

 

ここまでやると、かっこよく見えます

 

シャープです

 

≪空間の鳥≫ 1926年(1982年鋳造) ブロンズ 横浜美術館蔵

 

≪雄鶏≫ 1924年(1972年鋳造) ブロンズ 豊田市美術館蔵

 

 

なお展示方法が斬新で、作品の脇には小さな番号が印字されているのみで、タイトルや解説のキャプションが一切ありません

 

番号を元に、作品リストを見ると、タイトルと作品の属性情報が書かれていて、ごく一部の作品のみ解説があります

 

展示されている作品の番号は、昇順ではなく、かなり飛び飛びです

 

そのため、作品リストのページを探して、めくったり、折り曲げたりして、結構ストレスがたまります

 

せめて、展示順と作品番号を一致させて欲しいものです

 

ブランクーシの作品のように、装飾的なものを削ぎ落した展示方法で、作品のみを鑑賞することを薦めているかのようです