上野の国立東京博物館・平成館で開催中(2024年1月16日~3月10日)の「本阿弥光悦の大宇宙」展を観に行って来ました。

 

 

本阿弥光悦は、美術では「琳派の祖」として触れる機会が多くあるのに加えて、大好きで足繁く通う京都の関連でも鷹峯の光悦寺、菩提寺で光悦作庭の「三つ巴の庭」がある本法寺などでお馴染みの人物です。

 

光悦の書や工芸品はこれまでも観る機会はあったものの、光悦だけの大規模な展覧会は初めてです。

 

今まで知らなかったこともあって、本阿弥家一族が日蓮法華宗の熱心な信徒で、光悦の芸術仲間の人脈は法華宗信徒にあったということ。

 

家康から洛北の鷹峯に土地を拝領して一種の芸術村を作りますが、そこに集まった職人や芸術家たちは、法華宗信徒でもあったんですね。

 

60歳を過ぎてから始めた楽焼では、楽家と深い関わりがありましたが、楽家も日蓮法華宗徒だったことは初めて知りました。

 

 

本展では、最初に本阿弥家の家業である刀剣の鑑定から始まり、光悦の芸術の原点に刀剣鑑定で培われた審美眼があったことを教えてくれます。

 

でも刀剣の美術的な価値は、正直いって良く分からないんです。

 

なので、どんな美的センス、感性が培われたのかは、なかなか腹には落ちません。

 

 

それでも光悦が残した数々の書を観ると、美しいと感じます。

 

池上本門寺や中山法華経寺などの光悦の書を元にした扁額が展示されているのですが、「寛永の三筆」と呼ばれただけあって、江戸時代の人たちから慕われ評価されていたことが良く分かります。

 

圧巻なのは、「鶴下絵三十六歌仙和歌巻」の13.6m全巻の展示。

 

≪鶴下絵三十六歌仙和歌巻≫ 本阿弥光悦筆/俵屋宗達下絵 江戸時代・17世紀 京都国立博物館蔵

絵葉書より引用

 

俵屋宗達が描いた鶴の群れを下絵に、光悦の書が抑揚をつけて舞うように散らし書きされた巻物を観ていると、まるで音楽を奏でているように感じます。

 

文字の大きさ、太さ、間隔などが下絵と呼応し合うように書かれているんです。

 

同様に俵屋宗達とのコラボ作品「桜山吹図屏風」も、平面的そして装飾的に描かれた桜と山吹の花を背景に、和歌をしるした色紙が舞うように貼り付けられていて、斬新でいてセンスの良さが滲み出てくる作品です。(リンク先に写真と解説があります。)

 

ただ不思議なのは、俵屋宗達については本展ではほとんど言及がないということ。

 

俵屋宗達の才能を見出して、一緒にコラボ作品を創ったのも、本阿弥光悦の人を観る力があったからこそと思うので、その点にもう少し触れても良かったのにと思いました。

 

この展覧会では、琳派の流れで光悦を捉えることを、意図的に排除しているのですが、俵屋宗達も日蓮法華宗の信者だったと思うので、もう少し前面に取り上げて欲しかったと思います。(俵屋宗達の墓は日蓮宗京都十六本山の一つ頂妙寺にあるとされます

。)

 

 

最後(第4章)の光悦茶碗の展示空間は素晴らしかったですね。

 

贅沢に展示間隔を空けて、茶碗ひとつずつをガラスケースの中でスポットライトを当てて浮かび上がらせる展示は、まさに宇宙を想起させるものです。

 

やっぱり展示の演出は重要です。

 

さすがに国宝の楽茶碗「不二山」まではありませんが、重要文化財の黒楽茶碗「時雨」、赤楽茶碗「乙御前(おとごぜ)」など、見入ってしまいました。(それぞれリンク先に写真と解説があります。)

 

≪黒楽茶碗 銘 時雨≫ 本阿弥光悦 江戸時代・17世紀 愛知・名古屋市博物館蔵

絵葉書より引用