アーティゾン美術館で開催中(2023年12月9日~2024年3月3日)の「マリー・ローランサン ― 時代をうつす眼」展を観に行って来ました。

 

 

アーティゾン美術館では、今も日時指定予約制をとっています。

 

そのために混雑の分散化が図れているのか分かりませんが、行った平日昼に関しては混雑はなく、ゆったりと鑑賞することができました。

 

マリー・ローランサンといえば、2023年3月に、Bunkamura ザ・ミュージアムで「マリー・ローランサンとモード」展を鑑賞した記憶もまだ残っていて、1年も経っていないのに、またローランサンか?という気持ちもちょっぴりありました。

 

それでも初期のキュビスムの影響を受けた頃の貴重な作品やめずらしい静物画を観られたり、ローランサンと同時代に生きた他の画家たちの作品と一緒に鑑賞することで、それなりに楽しむことは出来ました。

 

多くの作品が写真撮影OKなのもありがたいことです。

 

第1章でキュビスムをテーマにした展示をしていて、キュビスムの影響をピカソやブラックから受けた頃の作品を観られます。

 

≪自画像≫ 1908年 マリー・ローランサン美術館

 

≪パブロ・ピカソ≫  1908年頃 マリー・ローランサン美術館

 

≪ブルドッグを抱いた女≫ 1914年 群馬県立近代美術館

 

これらの作品を観ていると、キュビスムによって、ありのままに写実的に描くことからは解放され、かといって極端にキューブや面で描くことはせずに、平面的ながらモデルを美しく愛らしく描く画風を確立していったことが分かります。

 

そしてアーティゾン美術館の豊富なコレクションの中から、ピカソ、ブラック、メッツァンジェ、ドローネー、ファン・グリスなどのキュビストたちの作品を併せて展示することで、その時代を体感できます。

 

 

次のコーナーでは、『椿姫』という小説の書籍でローランサンが挿絵を担当したものが展示されています。

 

『椿姫』 1937年 石橋財団アーティゾン美術館

 

ローランサンの軽く明るいタッチで女性を描く画風は、こういう小説の挿絵にピッタリです。

 

1920年代にローランサンの人物画の画風は確立しますが、20年代と30年代以降で色彩が変化します。

 

見比べて観ると次のようになります。

 

1920年代の作品例

≪女と犬≫ 1923年頃 石橋財団アーティゾン美術館

 

1930年代の作品例

≪手鏡を持つ女≫ 1937年頃 石橋財団アーティゾン美術館

 

1920年代の方は、色彩に陰りが見られますが、1930年代になると、より明るい色調になります。

 

個人的には、1920年代の方が、女性の内面まで描かれているようで、好みです。

 

この頃の人物画と一緒に展示されているのが、日本人の東郷青児藤田嗣治です。

 

ちょうど1920年代の作品が展示されていますが、ふたりともローランサンの画風に近く、比較して観ると、お互いに影響し合ったのかなと思わせます。

 

 

ローランサンが描くのは基本は女性の人物画ですが、花を題材にした静物画もあります。

 

これは珍しいのではないでしょうか。

 

≪花を生けた花瓶≫ 1950年頃 マリー・ローランサン美術館

 

 

最後のコーナーでは、3人から5人の複数の女性を描いた大作が展示されています。

 

≪三人の若い女≫ 1953年頃  マリー・ローランサン美術館

こちらは10年以上の年月をかけて完成させた晩年の大作です。

 

背景の橋は、ミラボー橋で、かつての恋人の詩人アポリネールを暗示していると言われます。

 

 

本展では、ローランサンと同時代に生きた他の画家たちの作品も多く展示されています。

 

それらはアーティゾン美術館の所蔵作品で、豊富なコレクションを誇るアーティゾンならではの企画展示でした。