千葉県立美術館で開催中の「山本大貴 - Dignity of Realism -」展に行って来ました。

 

山本大貴(やまもと・ひろき)氏は千葉県出身の写実画家で、千葉県立美術館としては地元出身者ということで一押しの画家です。

1982年生まれで40歳になります。

千葉県には、写実絵画ばかりを集めて展示するホキ美術館があります。

そこでも山本大貴氏の作品を観ることができるので、行ったことのある人は覚えているかも知れません。

 

 

写真のように細密に描かれた人物画、それも美しく若い女性がモデルです。

衣装、調度品などや照明についても細かく演出されています。

 

展覧会は写真撮影OKでした。

 

貴重なのは、大学卒業時に描いた作品が展示されていること。

武蔵野美術大学を卒業しています。

≪阿毘跋致≫ 2006年

モデルは自分自身だそうです。

タイトルは、”あびばっち”と読みます。

「不退転」と訳され、仏と成るための修行の道を後退することなく、常に前進する意味だそうです。

顔が3面、腕が何本もあって、まるで興福寺の阿修羅像のようです。

 

大学院にも行っており、その修了制作の作品がこちら。

≪A☆I☆W☆S≫ 2008年

不思議の国のアリスが題材ですが、まるでアイドルのジャケットのようです。

 

プロになってからは、美しい女性を写実的に描くスタイルとなります。

下の絵は、白日会展で富田賞を受賞した作品で、画壇で評価を高める端緒になったもの。

≪静寂の声≫ 2010年

フェルメールの≪ギターを弾く女≫を元にしており、ギターはエレキギターにするなど現代のモノに、

背景の画中画はマティスになっています。

 

≪不在≫ 2016年

まさに真骨頂の作品。

憂いを含んだ女性の表情、凛と立つ後ろ姿、前景のピントをぼかした表現、

足元の猫の一瞬の動き、やさしい光と影。

 

≪夏めく刻≫ 2018年

モデルには、このような乙女チックな衣装を身につけてもらうことが多いです。

 

着物・浴衣姿の作品もあります。

≪朝の容花≫ 2015年

 

メカニックなモノを女性と一緒に描くというのもひとつのスタイルです。

≪Thoroughbred≫   2014年

 

そして最近は女性にメタリックなモノを身につけさせています。

≪Standing Figure≫  2020年

 

もうひとつのシリーズがバレエダンサー。

これまでの作品が静的なものが多いのに対して、動きの一瞬を捉えたポーズです。

また表情も笑顔だったりして豊かなものになっています。

≪the Lilac Fairy≫ 2020年 ダンサー:光永百花

 

単に写真のようにきれいというのではなく、どんなポーズで、どんな衣装を身に着けるかに

こだわって、新境地を開いてきている山本大貴氏は、目が離せないアーティストです。