この展覧会の名前、ちょっと長すぎ。
「はじまりから、いま。 1952-2022
アーティゾン美術館の軌跡-----古代美術、印象派、そして現代へ」
が正式名称です。
前身のブリヂストン美術館が2020年にリニューアルしましたが、
ブリヂストン美術館開館からちょうど70年になります。
ここ2年間はコロナ禍で、美術展にはあまり行っていなかったので、
アーティゾン美術館に訪問したのは初めてです。
なんか憶えにくい名前の美術館になったなぁというのが正直な感想。
私が今年還暦なので、生まれる10年も前に開館しています。
平日だったので、日時指定予約制とはいっても、どの時間帯も空きはあります。
直前にネットでチケット購入してから行きました。
それでも平日の昼間にしては、お客さんはそれなりに多いぞ。
そして学生さんは無料だということに気づきました。
これ太っ腹ですね。
大学生にしてみれば、これだけの美術作品をタダで観られちゃうのは、すごくお得!
シニア無料とか、やってくれないでしょうか?
あと館内は基本的に全ての作品が写真撮影OKです。
最近、多いですね。
SNSで写真を載せてもらうことで、宣伝効果が生まれて、お客さんが増えるという
セオリーが定着した訳です。
ネットの力は大きい。
まず最初に、70年間に開催した企画展のポスターが全て貼りだされています。
ポスターのデザインも時代を感じさせるものがあります。
1950年代のポスターは文字ばかりです。
ベルト・モリゾ ≪バルコニーの女と子ども≫ 1872年
母子の微笑ましい情景を描くことが多かったモリゾです。女性画家ならではの題材です。
この時はまだ未婚なので、自分がモデルという訳ではないようです。
ジョアン・ミロ ≪絵画≫ 1952年
ブリヂストン美術館の時から、ミロの絵画をここで観た時の印象が強くあります。
観ていて、ウキウキ楽しくさせてくれる魅力があります。
ザオ・ウーキーが大きく取り上げられています。
アーティゾン美術館がとりわけ推している画家です。
中国生まれの抽象画家で、戦後にフランス・パリに渡り、移住します。
≪07.06.85≫ 1985年
画題は作品が完成した日・月・年を意味します。
あえて言葉で絵を規定してしまうことを避けています。
だから、ここから何を感じるかは、観る人に委ねられます。
アンス アルトゥングという画家は初めて知りました。
ドイツ生まれで戦後にフランスに帰化しました。
≪T 1963 K7≫ 1963年
こういう作品を収蔵していることも、アーティゾン美術館の感性の良さを感じます。
また日本や中国の古い美術品も収蔵しています。
例えば、鳥獣戯画断簡。断簡とは鳥獣戯画の絵巻から何らかの理由で切り離されたものです。
それでも歴史的な価値は相当高いと思います。
こちらは最近、コレクションに加わったもので、長くアメリカに渡っていたものだそうです。
≪鳥獣戯画断簡≫ 平安時代 12世紀
他に、平治物語絵巻 常盤巻も新たな収蔵品として展示されています。
そして印象派など西洋画のコレクションです。
見応えのある作品がいっぱい展示されています。
いずれもお目にかかったことのあるものばかりで、愛着が湧いてきます。
パブロ・ピカソ ≪腕を組んですわるサルタンバンク≫ 1923年
ピエール=オーギュスト・ルノワール ≪すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢≫ 1876年
ポール・セザンヌ ≪帽子をかぶった自画像≫ 1890-94年頃
フィンセント・ファン・ゴッホ ≪モンマルトルの風車≫ 1886年
最後に近代の日本画家のコレクションです。
これも錚々たるメンバーです。
藤田嗣治 ≪猫のいる静物≫ 1939-40年
藤島武二 ≪黒扇≫ 1908-09年
本展のパンフレットにも使われているので、本当に代表作なのでしょう。
黒田清輝 ≪針仕事≫ 1890年
青木繁 ≪海の幸≫ 1904年
この美術館で青木繁のことを詳しく知る機会を得ました。
安井曾太郎 ≪薔薇≫ 1932年
リニューアルして新しくきれいになった美術館で、70年間の豊富なコレクションを新鮮な目で観ることができました。
楽しませてくれる展覧会です。