桃月学園1年C組 feat. 上原都「少女Q」もまた『ぱにぽにだっしゅ!』の象徴曲。歌詞も独特。 | A Flood of Music

今日の一曲!桃月学園1年C組 feat. 上原都「少女Q」

 

乱数メーカーの結果:1410

 

 上記に基づく「今日の一曲!」は、Animation Song Otherのセクション(1338~1437)から桃月学園1年C組 feat. 上原都の「少女Q」です。詳しい選曲プロセスが知りたい方は、こちらの説明記事をご覧ください。

 

 

収録先:『少女Q』(2005)

 

 

 本曲はアニメ『ぱにぽにだっしゅ!』三番目のOP曲です。このシングルにはほかにfeat. 6号さんのバージョンも収められています。ちなみに一番目のOP曲「黄色いバカンス」(2005)は過去にレビューしたことがあり、下掲記事では作品音楽の秀逸さについて語りました。

 

 

歌詞(作詞:斉藤謙策

 

 不条理ギャグゆえの独特な言語センスが光る作品の雰囲気は、本曲の歌詞世界にもばっちり反映されています。公式ガイドブックぱにぽに3『今日から使えるぱにぽにだっしゅ!』での評も「不思議な語感が耳に残る歌詞」で、理屈で考えるよりも心で感じろと言わんばかりのシュールな内容です。とはいえ全体的な傾向を述べるなら、「"私"はどういう人間か」について内省した自己分析と読み解けます。

 

 "正座を長くしてても 私、足が痺れない"|"前屈マイナス40 本当はまだまだできる"の体質系に、"夜更けに統計学の 本とか読み耽るの"|"俳句を時に詠んでは 季節を切り取るの"の習慣系、"発音は正しく言うの カラットはキャラット"|"私の理想は五分刈りよ(いやなの、細い眉毛も)"のこだわり系から、"家から校門までは 必ず32分"と周辺情報まで詳らかです。"パーティードレスはあるけど 公園では浮いていた"や"チョモランマという名前 ノートの隅に書くの"など、原作みを感じられる謎フレーズも鏤められています。

 

 このクセの強い個性を承認してもらいたい節が"私"にはあり、ゆえに"私はここに在る 鏡に映ってる/少しだけ化粧した アイドルの少女Q"と決意じみたシーンが描かれ、直後には"謎めく乙女に みんな~"|"刺激な視線で 過激~"とすっかりアイドル気分です。おそらくこれは妄想の中でだけという解釈が正道と思いますが、本物のアイドルもその日常は謎めいているという捉え方も出来ますね。query由来のQボートやQ熱にquestion由来のウルトラQが一例であるように、「Q」は秘匿性の象徴たりうるアルファベットですから。或いは「少女Q」は「処女宮」と掛かっていて、"乙女"を強調しているのかもと深読みしています。

 

 

メロディ(作曲:菊谷知樹)

 

 先の「黄色い~」の記事の最後で本曲を軽く紹介した際には、「テクノ歌謡」という言葉を出していました。だけあってメロディは日本人にとって馴染みやすく、センチメンタルなラインに懐古の情が刺激されます。

 

 Aメロの切ない進行は堀江由衣さんの落ち着いた声質により一段とメランコリックで、しかし決意のBメロはバックのシンセとコーラス(サブパート)に煽られるように上昇志向に展開し、クラップでワンクッション置いてからのサビでキャッチーに弾ける楽想は、懐かしのアイドルソング的な趣です。ここは弾けると言ってもやや恥ずかしさが残る抑制的な旋律なのが巧く、だからこそコールの"(愛YA愛YA、YA、YA、YA、YA~)"が少し気の抜ける感じでも、"(泣かせて そっと 泣かせて)"が哀愁漂う感じでも許されるのだと思います。

 

 

アレンジ(編曲:菊谷知樹)

 

 

 再びガイド本の記述を引用しますと、OPディレクターの尾石達也さんの言として「監督から一言『YMOで』と言われ」とあり、このオーダーはサウンドプロデュースに対しても同様のものが当然あったことでしょう。冒頭のピコピコだけでもう「らしさ」は出ていて、打ち込み感満載のドラムがインした時点で方向性は瞭然ですよね。熱っぽいシンセとSF的なSEの連打も加わり、イントロだけでも80年代のパッケージングが上手です。

 

 2番から鳴り出すサウンドも好みで、Aメロ後半[1:50~]のLRを行き来する音のちょこまかとした感じも、サビ裏[2:21~]のキラキラな音遣いのシンセで輝きが増す変化も凝っています。2番後間奏の台詞パートでは、「地味」のロボットボイスっぽい弄り方と「ぷい」が反響して空間に満ちていくのがツボです。そこからのシンセソロはストレートに格好良くて痺れます。

 

 

 
 

備考:feat. 6号さん|Ver. レベッカ宮本

 

 feat. 6号さんのバージョンは、ディレクションがそうなのだと思いますが調子外れです(あまり喋らないキャラですしね)。特にクセが強いのは"少女Q"の歌い方で、1番のも2番のも意表を突かれます。

 

 

 原作コミックス最終巻の初回版にはCD『ぱにぽにだっしゅ!OPコレクション Ver. レベッカ宮本』(2011)が付いており、ベッキーが歌う「少女Q」を聴けるのはこの盤のみです。こちらも「子供らしく」の指示を背景に察せる元気な外れ方で、可愛い以外の感想が見当たりません。コーラスや台詞もきちんとベッキー仕様になっていて、他の2曲も含め一聴の価値ありです。

 

 

【追記:2025.8.22】

 

 作品音楽のサブスク解禁とアニメのYouTube無料公開を記念しまして、元ネタであるWinkの楽曲を中心とした下掲記事内に、柏木優奈&優麻「Link」のレビューも織り込みました。