ハニーアンドループス / 豊崎愛生 | A Flood of Music

ハニーアンドループス / 豊崎愛生

 豊崎愛生の15thシングル『ハニーアンドループス』のレビュー・感想です。現在放送中のTVアニメ『プリプリちぃちゃん!!』のED曲が収録されています。

ハニーアンドループス/ミュージックレイン

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 『プリプリちぃちゃん!!』は『ちゃお』原作のアニメで、漫画の作者は『ミルモでポン!』で有名な篠塚ひろむさんなので、僕(の世代)にとっては懐かしいお名前です。

 「こいつ女児向けアニメも守備範囲かよ…」と引かれそうですが、否定はしません。笑 『プリキュアシリーズ』だって観ているし。第一次アニヲタ期(2004~2007年)でも『おねがいマイメロディ』とか『ぴちぴちピッチ』とか好きだったし、元々素質(?)がある。


 特にギャグのキレ味が良い作品と展開の熱さを誇る作品には、子供向けに留まらない魅力が宿っていると思います。そう、「子供向け」なんです。「女児向け」なんて自分で書くから要らぬ勘繰りをさせてしまうのだ。ということで「男児向け」だって守備範囲ですよ!

 『プリプリ~』はTBSの新しい朝アニメ枠『アニメサタデー630』内の作品ですが、同枠内の『トミカハイパーレスキュー ドライブヘッド 機動救急警察』にも少年心くすぐられまくりです。子供の頃トミカ大好きっ子だったから余計に。


 少し脱線してしまいましたが、『プリプリ~』もなかなか面白いと思って観ています。所謂居候モノですが、1話でちぃちゃんを迎え入れた段階で既に他種族の先客(うっちゃん)が居るというのが斬新だと思いました。笑 夕花の性質もよくわかるし初期設定が上手。

 で、ED。なるほどどんどん地底に潜っていく構成かと何気なく観ていたら、サビでまさかのダンス全開!…やられました。別にヌルヌル動いているわけではないしダンスとしても単純なんですが、種族を超えたハッピーな空気感に満ちていて好きです。

 このダンスEDに含まれる多幸感は、映像の力によるところも勿論ありますが、(歌詞も含めて)音楽の力も相当に大きいと思います。というわけでここからレビュー開始。


01. ハニーアンドループス

 幸福なダンスEDにぴったりのディスコチューン。小さい子は当然…というか下手したら今の若い親世代ですらこれがディスコ(調)だということは意識に上ってこないかもしれませんが、子供も気に入る教育上よろしいダンスミュージックとして、ディスコは良い答えだと思います。

 まあそういう僕も世代的にはディスコを知らなくてもいい年齢なんですけどね。笑 音楽好きひいてはダンスミュージック好きとしてヒストリカルな知識を持っているだけなんですが、後追いとはいえ好きなジャンルのひとつであることは間違いないです。試しに当ブログを「ディスコ」で検索してみれば多少は説得力が増す…かも。笑


 まずは歌詞から見ていこうかな。作詞者は仁科亜弓さんです。A/Bメロは子供目線の可愛らしい内容だなという感じで、この段階ではまだ"ダンス"は見えてきません。しかしBメロの"みんなでリズム重ねれば"が実は布石でした。

 サビでいよいよ"ダンス"の登場!…と思いきやアニメEDではサビの途中から始まっていたことが判明しました。"ダンス"の前にファンタジックな世界観の提示があったんですね、なるほど。

 アニメではサビ最後の"モナリザもお出かけです"に対して「その感じはわかるけど唐突じゃない?」と思っていたのですが、サビの歌詞全体を見ると"街の中にメリーゴーランド"という想像力豊かな幕開けをしていたとわかるので腑に落ちました。子供心あるなぁと感心。


 "ダンス"に直接的に言及しているのは次の一節、"星の中で踊ろう 屋根裏もダンスフロア/ミラーボールがキラキラ"。ここから"モナリザ"に繋がるわけですが、リアルとメルヘンがダンスを通して渾然一体となってカオティックな雰囲気を醸している感じが堪らなく好きです。

 たぶんだけど、本当に小さい子は親に「ダンスフロア/ミラーボールってなに?」って訊くでしょうね。笑 "ミラーボール"は映像にも出てくるので説明しやすいと思いますが、"ダンスフロア"は辞書(概要)的な説明はできても、背後に潜むカルチャーまでは難しそうだ。大人だって興味がなければ説明できないだろうから。


 歌詞に一応"ハニー"は出てきますし、「ループス」は出てこずとも"メリーゴーランド"や"7つの輪"等に象徴的な役割を持たせているので、「ハニーアンドループス」という題は歌詞の内容に沿っていると思います。

 作品との関連性はよくわかりませんが、ともかく「可愛い感じ」と「音楽は終わらない」的なニュアンスは感じ取れますね。"また明日は繰り返す"という歌詞通りの意味も勿論あるでしょう。

 それにしてもCメロの"シビレきらして深呼吸 甘い罠ガラス越し/碧く染まるネモフィラ 7つの輪の恩返し"は、急に大人びたなというか、歌詞のIQが上がったなという感じがします。笑 あと、一応タイアップを意識してか"Pretty Pretty"というアニメタイトルを彷彿させる言葉があるのも仕事が細かい。


 歌詞パートが思ったより長くなったので次はメロディとアレンジを同時にいきます。前述の通りベースとなっているのはディスコミュージックなのですが、あまり電子の質感は強くなくあくまでもナチュラルに、グルーヴで踊らせるタイプのトラックですね。

 クレジットを見るにドラムとベースとギターは生なので、手作り感が残っているのはそのおかげかな。特にBa.&Gt.は作編曲者である古川貴浩さんがプレイしているので、楽曲への理解度はより高いものになっているはずです。

 そのしっかりとした下地の上に、ディスコらしい装飾であるストリングスとブラスセクションが入るので、トラックだけでも完全にディスコチューンとして聴きごたえのあるものとなっています。


 とはいえ勿論忘れてはならないのがメロディとボーカルです。メロディラインはひたすらにポップでキャッチー。全パートとも非常に覚えやすく、耳にすっと入ってきますよね。

 サビへ向けて徐々にスウィングしていく感じというか、振れ幅が大きくなって思わず身体が動き出してしまうようなディスコに相応しい旋律だと思います。オケとの兼ね合いも抜群。

 肝心要の豊崎さんのボーカルもいいですね。あまり声量のあるタイプではないと感じますが、フレッシュ感の中に少しだけ媚びたようなキュートさがあるのが魅力的です。新人というわけでもないのにこれを維持しているのは流石プロ。

 コーラスワークの"uh"とか"baby"も彼女のかな?自信を持って言えませんがもしそうだとしたなら、彼女の声質はコーラスという形で楽器的に使われてもディスコチューンを彩る要素として成立する素晴らしいものだといえますね。


 豊崎さんは僕の第一次アニヲタ期が終わった頃に出てきた声優さんなので、彼女が歌う曲はおそらく何も持っていません(今作が初です)し、声優としての活動もあまり詳しくは知りません。あの『けいおん!』の平沢唯だということは知識として持っていたけど。

 余談ですが平沢進/P-MODEL好きで且つアニヲタだというと『けいおん!』から入ったと思う方もいると思いますが、僕は残念ながら観たことがないので違います。

 2012年に後追いで『妄想代理人』を観てから氏の存在を知ったので、むしろ『けいおん!』から入った方の方が先輩。まあこの「『けいおん!』から入った」というのも冷静に考えたら謎なんですけど。笑

 話を豊崎さんに戻して…第二次アニヲタ期(2015年~)からでも豊崎さんは第一線で活躍されているようなので、調べたら観たことある作品も結構ありました。今期でも『プリプリ~』を含めて3作品は視聴していたようです。しかも全部主要キャラなのに意識していなかったとは我ながら愚かな。この辺りのことは記事のラストでまたふれます。


02. ランドネ

 「ランドネ」ってなんやねん調べても山ガールしか出てこないぞと思ったら、どうやらトレッキングに相当するフランス語のようです。なるほど納得山ガール。

 というわけでc/wは、サビの"どこまで登れば たどり着けるのか"という歌詞にも表れているようにまさに「ランドネ」な楽曲です。作詞作曲編曲全て佐藤良成さんの作品。プレイヤーとしてもアコギとフィドルを担当されています。


 音楽好きならば「フィドル」でピンとくるかもしれませんが、この「ランドネ」はカントリー調の楽曲です。フィドルって要はバイオリンなんですが、聴けば「ああ、こういう音のやつね」とわかると思います。このジャンルで使用される楽器として定番のひとつでしょうから。同じく定番であるペダルスティール(ギター)も使われています。 

 このカントリーサウンドに乗せられた豊崎さんの歌声は更に良いですね。癒される。アレンジの心地良さに負けない…いや、むしろ相乗効果でよりハートウォーミングなオーラを放っていると感じます。柔和なメロディにもマッチしていて素敵。


 c/wまで子供向けを意識しているのかはわかりませんが、この曲の主人公にも子供が設定されていますね。"大人にはきっとわからない"というフレーズがあるので。精神的なものとすれば大人対大人でも通じる表現だとは思いますが、肝要なのは自分の目で見ることだというメッセージが込められていると受け取りました。


03.は「ハニーアンドループス」の(Instrumental)です。



 以上、インスト除いて2曲でした。新しく作られた子供向けアニメの主題歌を含むのに、そこにディスコとカントリーを持ってくるというチョイスがなかなかにチャレンジングで評価できますね。子供の頃に聴いた音楽ジャンルが、後に嗜好となって顕現するということは多分にあるだろうから。

 前述の通り豊崎さんの作品に手を出すのは今作が初なので、彼女のディスコグラフィーにおいてという意味では今作の傾向が従来型なのか新機軸なのかはわかりませんが、少なくとも明るい曲や優しい曲が映える方だというのはわかりました。


 しかし声優のスケールで見ると、前期の『クズの本懐』の茜先生のようなゲスいキャラもできるし、今期の『Re:CREATORS』の軍服の姫君(アルタイル)のように低いダークな声も出せるようなので、どんな楽曲でもこなせそうな(あるいはもうこなしている?)気はします。

 しかし驚いた。今期に限るとまさか軍服の姫君と『アリスと蔵六』の早苗が同じ人だとは思ってもいなかった。2話で早苗が見せたぽわぽわした感じに心をグッと掴まれたのでCVは誰なんだろう?と思ってはいたんですよね。

 しかし第一次アニヲタ期と比べると今は声優自体にはあまり頓着がなくなっているので(歌手としては別ですが)、調べることはおろかクレジットさえきちんと見ていなかったんだなと痛感しました。これでも最近は割と覚えられるようになったと思っていたんだけど…

 逆に第一次アニヲタ期に第一線で活躍していた(今でいえば中堅)声優の声はメインキャラじゃなくてもすぐにわかるし、クレジットでも名前がすっと目に飛び込んでくるのに。笑 当然っちゃ当然ですけどね。


 リンクはしませんが豊崎さんはアメブロで公式ブログを構えていて、しかも結構な頻度で更新されているようなので、興味があれば訪れてみてはいかがでしょうか。

 その豊崎さんのブログを見ていて気付いたのですが、スフィアのメンバーなんですね。ここまでに二度ほど「豊崎さんの作品は今作が初」という旨のことを書きましたが、これにはスフィアを考慮していませんでした。

 スフィアならば一作品だけ持っています。9thシングル『HIGH POWERED』(2011)。『侵略!?イカ娘』(2期)のOP曲を含むディスクですが、これは僕にありがちなアニメは一切見ていないのに曲だけ気に入って持っているパターンです。笑

 ちなみに『イカ娘』は1期のOP曲収録シングルも持っています。ULTRA-PRISM with イカ娘の『侵略ノススメ☆』(2010)ですが、これはUNDER17が好きだったので元メンバーである小池雅也さんが新たに立ち上げたユニットならば聴いてみようじゃないかという動機から。

 両曲ともかなり好きなアニソンなので、なんだか『イカ娘』を観ていないのが申し訳ない気になってきました。笑 記事の内容が本筋からだいぶ脱線しましたが、居候モノつながりでセーフということで。