dream you up / DÉ DÉ MOUSE
DÉ DÉ MOUSEの6thフルアルバム『dream you up』のレビュー・感想です。今作から"E"にアキュート・アクセント(´)が付くという微妙な改名を行ったみたいですが、遠藤大介によるおなじみDE DE MOUSE(デデマウス)の最新作です。
dream you up/not records

¥2,376
Amazon.co.jp
昨年夏に発売されたEP『summer twilight』(2016)以来約8ヶ月ぶりのリリースで、レビューもそれ以来となります。フルアルバムとしては5th『farewell holiday!』(2015)以来ですが、4th→5thほどは空かなくて安心。
当該のEPは「急遽制作された」という触込みだったので、それを信じるならば本来5thの後にリリースされるのは今作だったのでしょう。5thは異色作だったゆえ以降の作風が読みにくかった…そんな折に放たれたEPはとても安心できる内容でしたが、今作は今作でまた予想外の路線だなと思いました。
てっきり5thで得たノウハウを更に突き詰めてファンタジックに、しかしよりビート感を増したジャンルレスな作品が6thにくると思っていましたが、実際に放たれた今作は予想以上にアグレッシブなサウンドをはらんでいました。帯の説明の「EDM的過剰展開」と「ロックアプローチ」は言い得て妙ではないかと。
帯の言葉を更に引用すると「『架空のSFアニメの若いパイロット達の間で話題のヒットミュージック』をテーマに」だそうです。今までもアルバム毎に明確なテーマが設定されていましたが、どちらかといえば少女趣味的モチーフに偏っていたと思うので、このテーマ自体が意外でした。
また「インターネットのある80sを舞台にした」ともあり、これは「『架空SFアニメ~」に掛かっています。僕の理解力が世代的な壁もあって足りないのだと思われますが、つまり昔の人が夢想した80sということでしょうか?実際の80sより未来感のある空想上の…という意味で、レトロフューチャー的な?
帯の説明にある「時代も時間も交差する」という表現がいちばんわかりやすいですかね。80sのサウンドと現代のテクノロジーが綯い交ぜになっている感じというか。その媒体として「アニメ」を使うことで次元も飛び越えることが可能であると。
上手くまとめられませんが、言葉を弄するよりも聴いて判断したほうがいいでしょう。というわけで全11曲見ていきます。ジャケットのイラストから判断するに、リスナーは「若いパイロット」としてこの機体に乗り込むのでしょう。隣の女性は先輩か教官かな?なんとなく。
01. get you back
タイトルは何もひねらなければ80sへお連れしますよってことだと思いますが、80sを取り戻す的なニュアンスもあるかも。リベンジ的な含みではなくね。
暴れ出すのを我慢しているようなスクラッチパートから幕開け。シンセが入って、キックが入って、お馴染みの細切れボーカルが入って…と、徐々に色付いていくところは改名してもデデマウスで安心。
確かにコード感やサウンドは真新しさより懐かしさを覚える感じですが、彼の操るボーカルトラックの存在感は変わらず強く、これだけで唯一無二になってしまうので新旧の概念が薄れますね。
前半部だけでも十分に盛り上がるアッパーチューンだと思いますが、半分を過ぎたあたりで更にアグレッシブな圧が加わり、過剰なほどの昇天トラックへと変貌を遂げます。
これは悪くない「過剰」です。きちんと静と動を使い分けているし、動部の音の隙間の無さは小手先だけでないことの証左ですから。
02. face to face
ジャケのヘルメットとあわせてこのタイトルだとどうしてもDaft Punkを連想してしまいますね。笑 コードを担う音にはロボットボイスが追従していますし、っぽいっちゃあっぽいよね。
このトラックはまずキックが素晴らしい。何この攻撃性。それでいて決して鼓膜を傷付けずに心臓にくる感じなのが堪りません。
ウワモノを担っているボーカルも好きです。流れるような"doo-bee-doo"の美しさよ。"uh-uh-uh-ah-uh-uh"のところも良い。…ってこれだとどこだかわからないかも知れませんが、聴いた人が何となく察してくれればそれでいいです。笑
3:20~のチョップされまくりのシンセもめちゃくちゃツボ。そしてこのパートが終わるとガラッと雰囲気が変わり、クライマックスへ向けての溜めのお時間に。そしてまた賑やかになってこのダンスチューンは終了。ペアで踊り明かした感じかな。
03. bent
全編通して怒涛のサウンドでもって圧倒的なアクロバティック展開を見せるので、初聴時はとにかく凄いの感想しか出てきませんでした。メロディを楽しむ曲というより、押し寄せるビートを乗り継ぎまくってホバーしていくのが気持ち良い曲ですね。
とはいえ所々で落ち着いたパートも顔を見せるので飛びっぱなしの曲ではないですし、3:04~は多少メロディアスな方向にシフトしていきます。
4:14~ラストにかけてのキラキラっぷりと言ったら眩しいくらい。その光の水のような音はよく聴くとかなり綺麗な旋律を奏でているとわかるのですが、キックと鍵盤が同時に強ベロシティで襲ってくるので気付きにくいですね。
04. dream you up
表題曲。だからというわけではないかもですが、ここまでの暴れっぷりからすると比較的大人しめでキャッチーな曲だと思います。EDM的ディスコチューンですなぁという感想。
「大人しめ」と書きましたが、ラスト1分から小刻みに暴れ出しちゃうところが良いですね。欲を言えばこのまま更にもう一、二段階攻めた展開を見せてくれるとより良かった(06.「rock you up」に関連記述あり)。
05. chase after chase
これまたハイスピードっぽそうなタイトルだなぁと思いましたが、意外にもこれは前作(5th)に入っていてもおかしくなさそうなサウンドです。冒頭で書いた「5thで得たノウハウを(中略)ビート感を増した」作品とは、まさにこの曲のようなものを想定していました。
実際スピード感があるのは間違いないのですが、ここまでの4曲とは明らかに毛色が違います。ジャンルがSFよりもファンタジーに移った感じで、科学より魔法のイメージが浮かぶ。
そして何よりネズミっぽい曲だと思います。笑 ブレイクビーツに乗せて次々と短いサンプリングが現れては消えるところが、小動物がちょこまか走り回っているように思える。魔法の世界で言うなら使い魔が脱走したっぽいドタバタ感がある。
06. rock you up
04.ではVはdreamでしたが、今度はrockです。というわけで、04.「dream you up」と意図的に似せてきているなと僕は感じました。とりわけ04.のラスト1分からの展開に。
ということは04.のところで書いた「もう一、二段階攻めた展開」ってもしかしてこの曲で果たされている…?してやられた!笑
まあ実際どうなのかは分かりませんし、これは妄想の域を出ません。音符の刻み方とかコード感からそう思うだけというね。あとタイトルか。
ともかく、04.のエッセンスを残しつつパワーアップしたトラックという感じです。しかしそこまで過剰という印象はなく、ビートにメリハリがあって良いバランスになっていると思います。
07. as you like it
この曲は今までのアルバム(4th以前)に入っていてもおかしくない気がします。星の煌きのようなメルヘンさとギャラクシー感を併せ持つサウンドスケープ。
新しいところと言えば、ボーカルトラックが80sだというところでしょうかね。この曲に限りませんが、今作は従来の民族音楽的なサンプリングが鳴りを潜めている印象なので、曲から受ける制作年代不詳感(未来っぽいのか古代っぽいのか分からない感覚)は薄いです。
代わりに比較的現代風のボーカル(といっても現在から振り返れば古いのですが)が据えられているのが特徴で、それをいつものように完全に分解せずに元の英単語が少し聴き取れる程度に敢えて遊びを残す…という手腕が巧いこと80sを醸しているのだと思います。この曲はそれが特に巧い。
中盤には03.「bent」でも見られたようなビートが主張してくるパートが挿入されます。2:36~の重低音が攻めてくるところがむちゃくちゃ格好良い。
08. flesh! + blood
単語の意味は分かる("血肉")けどこの表記はなんだろう?と思って検索したのですが、ポール・バーホーベン監督の映画『Flesh + Blood』(1985)からきているのかな?時代的にはドンピシャですが、世代的に僕はこの作品を知りません。
ここまでの01.~07.の全部の要素がちょっとずつ詰まっているような印象を受けました。そういう意味では代表的なトラックと言えるので、このアルバムを説明する際にはもってこいの曲かもしれませんね。
中盤の"Ah"が目立つところ、おそらくこの"Ah"もサンプリング元としては80sなのだと思いますが、ちょっとコブシが入った感じがお馴染みのお囃子(合いの手)サンプリングのようで日本的に響いているのが面白い。"Ah"って書いたけど"あー"のほうが正しい表記のような感じ。笑
09. whimsy love
"whimsy"は"気紛れ"とか"奇妙なもの"を意味します。といってもloveが付くからか、サウンドとしてはポップでキュートなので"strange"な感じはしません。英英辞典で引くと"often amusing"ともあるので、ネガティブな意味合いの単語ではないのかもね。
このトラックも04.「dream you up」と同じく今作中では比較的大人しい部類だと思います。04.はラストで暴れちゃいましたが、この曲は全編通してチャイルディッシュなわちゃわちゃ感はあっても「EDM的過剰展開」はないという貴重なトラックかも。
10. hand on your hand
ロボットボイスっぽい始まり方なのは02.「face to face」に近いですが、こちらはボーカルトラックの妙よりもサウンド自体の美しさが際立っている感じですね。コード感としてはかなりEDM的と言えると思いますが、下品にならないところが流石デデマウス。
今作のノルマであるかのようにこの曲にも途中でビートが支配するパートがあります。笑 正確に言えばウワモノとビートが一体化しているパートですが、おそらく彼なりにEDMを解釈した結果の再構築ではないでしょうか。
非常に偏見的であると前置きしておきますが、一般的なEDMトラックメイカーが「ほら、お前らこういうの好きなんだろ?ん?」って考えのもとでやりそうな唐突なブチアゲ展開を、なるべくインテリジェンスを持ってやるならこうだろ?という意趣返しのように聴こえます(誉め言葉)。
11. pump it up (feat. Anamanaguchi from NY)
ラストを飾るはフィーチャリングソング。アメリカのエレクトロバンド、Anamanaguchi(アナマナグチ)とのコラボです。恥ずかしながら存じ上げなかったのですが、どうやらチップチューンを得意としているバンドだそうです。ニコニコ大百科に項目があるぐらいなので有名なのでしょう。
いや、英語版wikipediaを読んだら中田ヤスタカに影響を受けているらしい(出典は『SONG EXPLODER』2014)とわかったので、もしかしたらサンレコのインタビューか何かで名前だけは見たことあるかもしれない。引っ張り出して確認するのは億劫なので確証は0。
…と、アナマナグチ自体をよく知らないので、知っている名前まで辿って少しでも(自分の)理解の助けにしとうとした次第です。とりあえず言えることは、この曲にそこまでチップチューンらしさはないし、どれだけアナマナグチが貢献しているのかはよく分かりませんでしたということ。
前半は03.「bent」のラストのキラキラパートがメインになったかのようなハイフローのアッパーチューンですが、中盤には従来の民族音楽由来であろうボーカルトラックが出現し、80sから遠ざかる。
そこから再び上昇していくようなサウンドと共に後半スタート。そういえば飛行機(01.「get you back」MVのやつ)に乗っているんだったと思い出す。ボーカルはそのまま民族調でありながらアレンジはEDM的でどんどん時代感覚が薄れていきます。
終盤は更にアレンジが凝ってきて、バックのシークエンスが次々変わるところがアナマナグチの手腕だろうか?と思う。エンディングの音の減らし方もベタですが凄く好きです。いよいと80sとお別れだなという気になります。
以上、全11曲でした。看板に偽りなしと言いますか、冒頭での説明に用いた帯の言葉がそのまま上手く本作のまとめになっているなと思いました。正しい商品概説であったと。きちんと想定されているであろうストーリーは見えた(妄想とも言う)しね。
感覚的なことはこれで良しとして、サウンドメイキングに関しても帯の言葉は優秀でした。「EDM的過剰展開」と「ロックアプローチ」でもってアグレッシブなサウンドと展開を見せるダンスアルバムなのは間違いないです。
そこに加わるデデマウスのオリジナリティ。これに関しては07.「as you like it」のところで書いた「この曲に限りませんが」以降の記述がまさに言いたいことであったので、それをもってまとめの代わりとします。
補足するなら、(ボーカルトラックに関して)「従来の民族音楽的なサンプリングが鳴りを潜めている印象」といっても例外が01.「get you back」と11.「pump it up」です(03.「bent」も部分的には)。
最初と最後の曲というわかりやすさですが、やはり01.で"get back"して、02.~10.で80sを堪能、11.で"pump it up"の掛け声と共に気合いを入れて戻ってくるという流れがあるように思います。
特に気に入ったチューンを収録順に挙げると、01.「get you back」、03.「bent」、07.「as you like it」、10.「hand on your hand」、11.「pump it up」です。
dream you up/not records

¥2,376
Amazon.co.jp
昨年夏に発売されたEP『summer twilight』(2016)以来約8ヶ月ぶりのリリースで、レビューもそれ以来となります。フルアルバムとしては5th『farewell holiday!』(2015)以来ですが、4th→5thほどは空かなくて安心。
当該のEPは「急遽制作された」という触込みだったので、それを信じるならば本来5thの後にリリースされるのは今作だったのでしょう。5thは異色作だったゆえ以降の作風が読みにくかった…そんな折に放たれたEPはとても安心できる内容でしたが、今作は今作でまた予想外の路線だなと思いました。
てっきり5thで得たノウハウを更に突き詰めてファンタジックに、しかしよりビート感を増したジャンルレスな作品が6thにくると思っていましたが、実際に放たれた今作は予想以上にアグレッシブなサウンドをはらんでいました。帯の説明の「EDM的過剰展開」と「ロックアプローチ」は言い得て妙ではないかと。
帯の言葉を更に引用すると「『架空のSFアニメの若いパイロット達の間で話題のヒットミュージック』をテーマに」だそうです。今までもアルバム毎に明確なテーマが設定されていましたが、どちらかといえば少女趣味的モチーフに偏っていたと思うので、このテーマ自体が意外でした。
また「インターネットのある80sを舞台にした」ともあり、これは「『架空SFアニメ~」に掛かっています。僕の理解力が世代的な壁もあって足りないのだと思われますが、つまり昔の人が夢想した80sということでしょうか?実際の80sより未来感のある空想上の…という意味で、レトロフューチャー的な?
帯の説明にある「時代も時間も交差する」という表現がいちばんわかりやすいですかね。80sのサウンドと現代のテクノロジーが綯い交ぜになっている感じというか。その媒体として「アニメ」を使うことで次元も飛び越えることが可能であると。
上手くまとめられませんが、言葉を弄するよりも聴いて判断したほうがいいでしょう。というわけで全11曲見ていきます。ジャケットのイラストから判断するに、リスナーは「若いパイロット」としてこの機体に乗り込むのでしょう。隣の女性は先輩か教官かな?なんとなく。
01. get you back
タイトルは何もひねらなければ80sへお連れしますよってことだと思いますが、80sを取り戻す的なニュアンスもあるかも。リベンジ的な含みではなくね。
暴れ出すのを我慢しているようなスクラッチパートから幕開け。シンセが入って、キックが入って、お馴染みの細切れボーカルが入って…と、徐々に色付いていくところは改名してもデデマウスで安心。
確かにコード感やサウンドは真新しさより懐かしさを覚える感じですが、彼の操るボーカルトラックの存在感は変わらず強く、これだけで唯一無二になってしまうので新旧の概念が薄れますね。
前半部だけでも十分に盛り上がるアッパーチューンだと思いますが、半分を過ぎたあたりで更にアグレッシブな圧が加わり、過剰なほどの昇天トラックへと変貌を遂げます。
これは悪くない「過剰」です。きちんと静と動を使い分けているし、動部の音の隙間の無さは小手先だけでないことの証左ですから。
02. face to face
ジャケのヘルメットとあわせてこのタイトルだとどうしてもDaft Punkを連想してしまいますね。笑 コードを担う音にはロボットボイスが追従していますし、っぽいっちゃあっぽいよね。
このトラックはまずキックが素晴らしい。何この攻撃性。それでいて決して鼓膜を傷付けずに心臓にくる感じなのが堪りません。
ウワモノを担っているボーカルも好きです。流れるような"doo-bee-doo"の美しさよ。"uh-uh-uh-ah-uh-uh"のところも良い。…ってこれだとどこだかわからないかも知れませんが、聴いた人が何となく察してくれればそれでいいです。笑
3:20~のチョップされまくりのシンセもめちゃくちゃツボ。そしてこのパートが終わるとガラッと雰囲気が変わり、クライマックスへ向けての溜めのお時間に。そしてまた賑やかになってこのダンスチューンは終了。ペアで踊り明かした感じかな。
03. bent
全編通して怒涛のサウンドでもって圧倒的なアクロバティック展開を見せるので、初聴時はとにかく凄いの感想しか出てきませんでした。メロディを楽しむ曲というより、押し寄せるビートを乗り継ぎまくってホバーしていくのが気持ち良い曲ですね。
とはいえ所々で落ち着いたパートも顔を見せるので飛びっぱなしの曲ではないですし、3:04~は多少メロディアスな方向にシフトしていきます。
4:14~ラストにかけてのキラキラっぷりと言ったら眩しいくらい。その光の水のような音はよく聴くとかなり綺麗な旋律を奏でているとわかるのですが、キックと鍵盤が同時に強ベロシティで襲ってくるので気付きにくいですね。
04. dream you up
表題曲。だからというわけではないかもですが、ここまでの暴れっぷりからすると比較的大人しめでキャッチーな曲だと思います。EDM的ディスコチューンですなぁという感想。
「大人しめ」と書きましたが、ラスト1分から小刻みに暴れ出しちゃうところが良いですね。欲を言えばこのまま更にもう一、二段階攻めた展開を見せてくれるとより良かった(06.「rock you up」に関連記述あり)。
05. chase after chase
これまたハイスピードっぽそうなタイトルだなぁと思いましたが、意外にもこれは前作(5th)に入っていてもおかしくなさそうなサウンドです。冒頭で書いた「5thで得たノウハウを(中略)ビート感を増した」作品とは、まさにこの曲のようなものを想定していました。
実際スピード感があるのは間違いないのですが、ここまでの4曲とは明らかに毛色が違います。ジャンルがSFよりもファンタジーに移った感じで、科学より魔法のイメージが浮かぶ。
そして何よりネズミっぽい曲だと思います。笑 ブレイクビーツに乗せて次々と短いサンプリングが現れては消えるところが、小動物がちょこまか走り回っているように思える。魔法の世界で言うなら使い魔が脱走したっぽいドタバタ感がある。
06. rock you up
04.ではVはdreamでしたが、今度はrockです。というわけで、04.「dream you up」と意図的に似せてきているなと僕は感じました。とりわけ04.のラスト1分からの展開に。
ということは04.のところで書いた「もう一、二段階攻めた展開」ってもしかしてこの曲で果たされている…?してやられた!笑
まあ実際どうなのかは分かりませんし、これは妄想の域を出ません。音符の刻み方とかコード感からそう思うだけというね。あとタイトルか。
ともかく、04.のエッセンスを残しつつパワーアップしたトラックという感じです。しかしそこまで過剰という印象はなく、ビートにメリハリがあって良いバランスになっていると思います。
07. as you like it
この曲は今までのアルバム(4th以前)に入っていてもおかしくない気がします。星の煌きのようなメルヘンさとギャラクシー感を併せ持つサウンドスケープ。
新しいところと言えば、ボーカルトラックが80sだというところでしょうかね。この曲に限りませんが、今作は従来の民族音楽的なサンプリングが鳴りを潜めている印象なので、曲から受ける制作年代不詳感(未来っぽいのか古代っぽいのか分からない感覚)は薄いです。
代わりに比較的現代風のボーカル(といっても現在から振り返れば古いのですが)が据えられているのが特徴で、それをいつものように完全に分解せずに元の英単語が少し聴き取れる程度に敢えて遊びを残す…という手腕が巧いこと80sを醸しているのだと思います。この曲はそれが特に巧い。
中盤には03.「bent」でも見られたようなビートが主張してくるパートが挿入されます。2:36~の重低音が攻めてくるところがむちゃくちゃ格好良い。
08. flesh! + blood
単語の意味は分かる("血肉")けどこの表記はなんだろう?と思って検索したのですが、ポール・バーホーベン監督の映画『Flesh + Blood』(1985)からきているのかな?時代的にはドンピシャですが、世代的に僕はこの作品を知りません。
ここまでの01.~07.の全部の要素がちょっとずつ詰まっているような印象を受けました。そういう意味では代表的なトラックと言えるので、このアルバムを説明する際にはもってこいの曲かもしれませんね。
中盤の"Ah"が目立つところ、おそらくこの"Ah"もサンプリング元としては80sなのだと思いますが、ちょっとコブシが入った感じがお馴染みのお囃子(合いの手)サンプリングのようで日本的に響いているのが面白い。"Ah"って書いたけど"あー"のほうが正しい表記のような感じ。笑
09. whimsy love
"whimsy"は"気紛れ"とか"奇妙なもの"を意味します。といってもloveが付くからか、サウンドとしてはポップでキュートなので"strange"な感じはしません。英英辞典で引くと"often amusing"ともあるので、ネガティブな意味合いの単語ではないのかもね。
このトラックも04.「dream you up」と同じく今作中では比較的大人しい部類だと思います。04.はラストで暴れちゃいましたが、この曲は全編通してチャイルディッシュなわちゃわちゃ感はあっても「EDM的過剰展開」はないという貴重なトラックかも。
10. hand on your hand
ロボットボイスっぽい始まり方なのは02.「face to face」に近いですが、こちらはボーカルトラックの妙よりもサウンド自体の美しさが際立っている感じですね。コード感としてはかなりEDM的と言えると思いますが、下品にならないところが流石デデマウス。
今作のノルマであるかのようにこの曲にも途中でビートが支配するパートがあります。笑 正確に言えばウワモノとビートが一体化しているパートですが、おそらく彼なりにEDMを解釈した結果の再構築ではないでしょうか。
非常に偏見的であると前置きしておきますが、一般的なEDMトラックメイカーが「ほら、お前らこういうの好きなんだろ?ん?」って考えのもとでやりそうな唐突なブチアゲ展開を、なるべくインテリジェンスを持ってやるならこうだろ?という意趣返しのように聴こえます(誉め言葉)。
11. pump it up (feat. Anamanaguchi from NY)
ラストを飾るはフィーチャリングソング。アメリカのエレクトロバンド、Anamanaguchi(アナマナグチ)とのコラボです。恥ずかしながら存じ上げなかったのですが、どうやらチップチューンを得意としているバンドだそうです。ニコニコ大百科に項目があるぐらいなので有名なのでしょう。
いや、英語版wikipediaを読んだら中田ヤスタカに影響を受けているらしい(出典は『SONG EXPLODER』2014)とわかったので、もしかしたらサンレコのインタビューか何かで名前だけは見たことあるかもしれない。引っ張り出して確認するのは億劫なので確証は0。
…と、アナマナグチ自体をよく知らないので、知っている名前まで辿って少しでも(自分の)理解の助けにしとうとした次第です。とりあえず言えることは、この曲にそこまでチップチューンらしさはないし、どれだけアナマナグチが貢献しているのかはよく分かりませんでしたということ。
前半は03.「bent」のラストのキラキラパートがメインになったかのようなハイフローのアッパーチューンですが、中盤には従来の民族音楽由来であろうボーカルトラックが出現し、80sから遠ざかる。
そこから再び上昇していくようなサウンドと共に後半スタート。そういえば飛行機(01.「get you back」MVのやつ)に乗っているんだったと思い出す。ボーカルはそのまま民族調でありながらアレンジはEDM的でどんどん時代感覚が薄れていきます。
終盤は更にアレンジが凝ってきて、バックのシークエンスが次々変わるところがアナマナグチの手腕だろうか?と思う。エンディングの音の減らし方もベタですが凄く好きです。いよいと80sとお別れだなという気になります。
以上、全11曲でした。看板に偽りなしと言いますか、冒頭での説明に用いた帯の言葉がそのまま上手く本作のまとめになっているなと思いました。正しい商品概説であったと。きちんと想定されているであろうストーリーは見えた(妄想とも言う)しね。
感覚的なことはこれで良しとして、サウンドメイキングに関しても帯の言葉は優秀でした。「EDM的過剰展開」と「ロックアプローチ」でもってアグレッシブなサウンドと展開を見せるダンスアルバムなのは間違いないです。
そこに加わるデデマウスのオリジナリティ。これに関しては07.「as you like it」のところで書いた「この曲に限りませんが」以降の記述がまさに言いたいことであったので、それをもってまとめの代わりとします。
補足するなら、(ボーカルトラックに関して)「従来の民族音楽的なサンプリングが鳴りを潜めている印象」といっても例外が01.「get you back」と11.「pump it up」です(03.「bent」も部分的には)。
最初と最後の曲というわかりやすさですが、やはり01.で"get back"して、02.~10.で80sを堪能、11.で"pump it up"の掛け声と共に気合いを入れて戻ってくるという流れがあるように思います。
特に気に入ったチューンを収録順に挙げると、01.「get you back」、03.「bent」、07.「as you like it」、10.「hand on your hand」、11.「pump it up」です。