REPLAY! / POLYSICS
POLYSICSの結成20周年記念アルバム『REPLAY!』のレビュー・感想です。アルバムリリースは『What's This???』(2016)からは約1年ぶりですが、記念盤としては5年前の『15th P』(2012)以来ですね。
Replay!(初回生産限定盤)(DVD付)/POLYSICS

¥3,240
Amazon.co.jp
同じ記念盤でも『15th P』は企画盤という趣でしたが、本作はベスト盤的な側面が強いです。純粋な新曲は01.「Tune Up!」だけで、残りは2017を冠した過去曲のニューアレンジ+ライブ音源という構成になっています。選曲はライブ向けだそうです。
この性質上レンタルで済まそうかとも思いましたが、CMで聴いた「Tune Up!」がなかなか良さ気だったのと、前から好きにもかかわらず当ブログではPOLYSICSの単独レビュー記事を書いたことがなかったので良い機会だと思い購入しました。
どうせならと初回限定盤を買ったので付属のDVDについてもレビューします。POLYSICSの映像作品は揃えていないので既出映像のまとめでも個人的にはありがたい。
ということで早速DISC 1(CD)収録曲を見ていきます。リテイク(ニューアレンジ)曲に関してはやや批判的な内容が目につくかもしれませんが、基本的にはオリジナルでこれ以上ない完成形だと高く評価しているからこその裏返しだと思ってください。
01. Tune Up!
唯一の純粋な新曲。ファンキーなリズムで幕を開け早くも名曲の予感がするイントロ。確かな進化を見せつつもポリサウンドは変わらず格好良いということがすぐにわかるので、ベスト盤のトップを飾るのには最適だね。
MVもピットイン風でまさにチューンナップという感じですが、歌詞も不調子からの復活という前向きな流れで好き。"調子出るまで最低約30分"からの"調子出たけど結局たった1分"は相当ガタがきてるね。笑
Aメロは安定の乱高下ですが、"興味ない"ですうっと伸びるところが素敵。Bメロの"頭・身体・心が間に合わない"の連呼もタメが効いているのでサビでの爆発が一層映えます。
そのサビはここまでの流れに比べるとかなりポップな仕上がりで整備完了って感じがする。2回目の"go"の下がり方に意表を突かれたけどこれがめちゃくちゃ格好良い。ベースの疾走感も堪らないです。このサビなら"Anytime is OK for me"も納得。
続く2番は変則AメロというかCメロとしてもいいかもしれませんが、ここの"興味ない"の後のギターのエモさは感動的ですらある。ラストのコーラスもエンディング感がきちんとあって仕事が細かい。
02. シーラカンス イズ アンドロイド 2017
オリジナルは5thシングルで2005年の曲。"C・O・E・L・AKA・NTH"から始まるライブ仕様で、全体的にはオリジナルよりメタリックな印象が薄れてデジタルな仕上がりになったなという感想です。"アンドロイド"というよりロボットっぽい。笑
03. Young OH! OH! 2017
オリジナルは12thシングルで2009年の曲。この曲は元々大好きでそれが完成形だと思っていますが、このリテイクはミックス周りが良くなった改良版といった感じかな。特にビョンビョン鳴ってる音が大きくなったのは良いと思う。間奏の"ウッハ!"も長くなっているのでライブ寄り。
この曲は歌詞も好きです。ある意味合理的ともいえる生き方の提示がされていますが、そこがアイロニックだよね。"こだわり捨てたく無い/でもちょっとは仕方が無い"の精神は誰しも共感できるはず。
04. Shout Aloud! 2017
オリジナルは11thシングルで2009年の曲。とてつもなく勢いがある曲なのでこのリテイクでもそれは十分に感じられますが、やはり3人編成だからか少し物足りない気はする。フミの声質のおかげかフレッシュな感じはするけどね。
05. URGE ON!! 2017
オリジナルは1stシングルで2000年の曲。ということで本作(ライブ音源除く)の中ではいちばんリテイクまでの期間が長いです。こう言ってはなんですが、元が粗すぎるのでニューアレンジによる恩恵を最も受けている曲だと思います。
きちんと構成がわかるとこんなに格好良い曲だったのかと納得。しかしこのエッセンス自体は17年前からあったのだと思うと、表現したい世界観は昔から明確だなと改めて実感できる。
06. Electric Surfin' Go Go 2017
オリジナルは6thシングルで2006年の曲。イントロからして既に特徴的ですが、全体的にエレクトリック感が増して切なく化けたなと思います。でもよく考えると元々明るいだけの曲ではないですよね。
タイトルから受ける印象や"にゃにゃにゃにゃ…"のせいで爽やかでキュートなイメージがありますが、"こんな日は朝から止められず"~のメロなんか結構切な系だよね。そっちの印象に寄せてきたアレンジだと解釈しました。
07. Digital Coffee 2017
オリジナルは9thアルバム『we ate the machine』(2008)収録曲。これは元が大好きすぎるので、申し訳ないけどこのリテイクは正直これじゃない感があります。何が気になるってハヤシのボーカルの裏返り方や滑舌が微妙なところ。
滑舌が悪いと言いたいのではなくてむしろ全体的に言葉をはっきり発音しすぎだと思う。カオスな歌詞だから発音が適当のオリジナルの方が魅力的だった。ラップではないけどその界隈の用語を使えばフロウが悪いと感じる。
メロディも暴れ方が物足りなくて平坦な印象になったような。オリジナルとの差別化を図るために敢えてなのかもしれませんが、ジェットコースターのようなメロディラインがこの曲の良いところだと思うんだけどな。
でもアレンジは素晴らしいです。特に間奏のシンセ(前半)はより狂った感じになっていて満足。そこから綺麗な後半に繋がる落差が心地好い。イントロがドラムカウント始まりじゃなくなったのも新鮮で良かった。
08. Rocket 2017
オリジナルは9thシングルで2007年の曲。TVアニメ『もやしもん』のED曲としてもお馴染み。これは結構印象が変わりましたね。3人体制ならではの新アレンジ。
音がはっきりしたというのもありますが、Aメロ(ヴァース)にボコーダーが重なるようになったのでサビとの対比がより鮮やかになった。そのサビも電子音全開になったので、ロック炸裂のブリッジ("面舵ボート"~)がより痺れる展開に。これは完全にオリジナルより好きです。
09. カジャカジャグー 2017
オリジナルはミニアルバム『カジャカジャグー』(2003)表題曲。これも07.「Digital Coffee 2017」の感想と同じようなことを書きますが、オリジナルのボーカルの方が素敵だったと思います。
オリジナルは叫び声のような荒々しさとワルっぽい低音を併せ持つボーカルがひたすら格好良いという印象なのですが、それと比べると随分と優等生になったなという感じ。そもそも最初のシャウトからして何か恥ずかしがってない?って思っちゃった。笑
巻き舌も遠吠えもないしこの曲は若い勢いがあってこそな気がします。しかしこれもやっぱりアレンジは良いですね。ここまでのことも言い方を変えればインテリジェンスが加わったと表現できるので、それに合わせたボーカルということなのかも。
以降の3曲はライブ音源です。Live at Shinjuku ReNY 2016/10/13なのでTOISU!!!感謝祭のやつですね。
10. MEGA OVER DRIVE
ミニアルバム『MEGA OVER DRIVE』(2013)表題曲。この曲はなんといってもイントロが素晴らしい。勿論以降もずっと格好良いままで突き抜けるんだけどね。この曲を初めて聴いた時はポリがまた一皮剥けたなと思ったぐらいには衝撃的だった。
ライブ版でも音源の持つ疾走感がそのまま再現されて…いや、それ以上の勢いがあるといってもいいです。個人的にはこういうバッキバキの曲を今後もっと増やしてほしい。
11. Let's ダバダバ
11thアルバム『Oh!No!It's Heavy Polysick!!!』(2011)収録曲。コミカルとクールのバランスが絶妙だと思う大好きな曲です。カヨが抜けてもこういう曲が書けるんだと安心した記憶があります。
ライブ版なので間奏のオーディエンス煽りが長いです。ここで十分にタメてから解放される時の気持ち良さが最高。
12. Buggie Technica
1stアルバム『1st P』(1999)収録曲ですが、調べたところ初出は『TOKYO NEWWAVE OF NEWWAVE '98』(1998)というコンピだそうです。その後も何度か再録されバージョンアップを繰り返しているインストナンバー。
そのコンピは持っていないのでわかりませんが、『1st P』収録時点で割と完成していると個人的には思います。粗いっちゃ粗いけどインストだからかあまり気にならない。
2016年になって演奏したこれだって全然古臭く感じないし、技術だけ進歩して再録しても曲自体が良くないと微妙なままだよね。05.「URGE ON!! 2017」のところでも書きましたが、表現したいことが明確なバンドはやはり強いと思う。
こうしてアップデートで比較対象が出来ると、それ自体も嬉しいですが過去作の良さにフォーカスできるというのも利点だよね。そういう意味では意義のあるアルバムではないでしょうか。
ということでCDは以上の12曲です。内訳は新曲1、リテイク8、ライブ3でした。新曲01.「Tune Up!」は個人的にはキラーチューンだったので大満足。
リテイク02.~09.は、冒頭でも書きましたが「基本オリジナル最高」と思っている僕みたいなタイプは評価が厳しくなりがちかも。でもベストアルバム/入門盤としては良いと思うし、ライブ向けの選曲というのもそういうニーズに合わせた内容だということでしょう。
とはいえ05.「URGE ON!! 2017」と08.「Rocket 2017」のようにオリジナルより気に入りったリテイクもありますし、聴き込むうちに評価が変わる可能性はあります。
ライブ10.~12.は悪くないですが、初回盤にLIVE DVDが付いていることを考えるとその分新曲をもう1~2曲入れて欲しかったかな。まあCDとDVDでは録音/録画されたライブ会場が異なるので損した気はしませんし、通常盤を入門目的で買った人には嬉しい内容だと思います。
続いては初回盤付属のDISC 2 LIVE SIDE DVDの内容を見ていきます。収録曲目と順番はCDと同じで、基本的には過去の映像作品からの抜粋です(詳しくは都度説明します)。
曲目も順番も同じということでこちらは軽めに、そして映像を中心に書きます。ちなみに副音声にはメンバーによるコメンタリーが収録されているので、以降でACと書いたらオーディオコメンタリーのことです。
01. Tune Up!
映像はCOUNTDOWN JAPAN 16/17から(提供:rockin on japan / wowow)。ACでもふれられていますが、ついこの間の初御披露目演奏を映像化そして即パッケージ化というリスキーなチャレンジの産物です。笑 それでもきちんとこなせているあたりは流石。
02. シーラカンス イズ アンドロイド
映像は『Now is the live!』(2006)から。ということで@SHIBUYA-AXですね。フミのモジャモジャが懐かしく、ACも加齢を実感する話題が中心。笑 AXも今はないことを思うと本当に時の流れは残酷です。
03. Young OH! OH!
映像は『BUDOKAN OR DIE!!!! 2010.3.14』(2010)から。CDのところでもふれましたが間奏が長いバージョンで、武道館が一丸となって"ウッハ!"を叫ぶ様は壮観です。
04. Shout Aloud!
映像は同じく『BUDOKAN OR DIE!!!! 2010.3.14』から。オーディエンスの盛り上がりからパフォーマンスの熱さが分かりますが、ACではほとんど曲についてふれられず細かいネタで盛り上がるという。笑
05. URGE ON!!
映像は『DVDVPVDVLIVE!!』(2003)から。アス比が時代を感じさせます。これは@SHIBUYA CLUB QUATTROですが、やけに汗だくだなと思ったらクアトロは照明が近いからとACで判明しました。主原因は衣装のせいらしいですけど。
06. Electric Surfin' Go Go
映像は『Now is the live!』から。「ニューシングル!」と言っている通り当時の新曲で、ACによると初出しだったそうです。それでも後半はオーディエンスも曲を把握してきちんとノっているように見えます。わかりやすさもポリの魅力だよね。
07. Digital Coffee
映像は『We ate the show!!』(2008)から。これは@STUDIO COAST。CDのところではハヤシのボーカルに不満を書いてしまいましたが、この頃のは良いと思えるので年齢的な問題なのでしょうかね。
08. Rocket
映像は同じく『We ate the show!!』から。ACの「浄瑠璃みたいな…」と「能入ってる」でさらば青春の光のネタを思い出して笑ってしまった。曲も良いけどバックの映像と照明も素敵。
09. カジャカジャグー (ハヤシ iMovie Edit)
これだけ少し特殊で、複数の公演の映像をハヤシが特別に編集したエディットです。映像としては『PippikkippippiP In USA』(2004)、『You-You-You』(2006)の初回盤付属DVD(London公演)、『Now is the live!』の3作品からがベースで、終盤のラッシュはちょっとわかりません。
ACで為になったのは、シーケンサーを走らせていると(BPMを合わせておくと)こういう映像編集の時に便利だと知れたこと。
10. MEGA OVER DRIVE
映像は『What's This???』(2016)の限定盤付属DVDから。これも@クアトロで、2日で100曲カブリ無しのうちの1曲。『What's This???』のACというかメンバーおしゃべりでも語られていましたが、あのやけにでかいショルキーがDIYだという話はまた出てきましたね。
11. Let's ダバダバ
映像は『MEMORIAL LIVE OR DIE!!! 祝1000本&15周年!!! 2012.03.03/04』(2013)から。これも@AX。CDのところでもふれましたが間奏が長いバージョンで、これだけの大人数の"ダバダバ"&手拍子は快感でしょうね。ACではヤノの"Let's"に対するこだわりが聞けて満足。笑
12. Buggie Technica
映像は『LIVE AT newwave』(1999)から。唯一のVHSからということで最も古い映像です。アス比は勿論画質も古い。これも@クアトロなのでライブハウスの歴史を感じずにはいられない。現メンバーはハヤシだけでしかも10代という貴重さ。笑
以上こちらも全12曲でした。映像作品を全て揃えている熱心なファンにはほとんどが今更な内容でしょうが、そうでない僕にとっては楽しい内容でした。何よりACがいいよね。これを聞けただけでも初回盤を買って良かったです。
総括的なことはCDのところで書いたのでこれでおしまいとします。年内にオリジナルアルバムが出ればいいなと期待。
Replay!(初回生産限定盤)(DVD付)/POLYSICS

¥3,240
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同じ記念盤でも『15th P』は企画盤という趣でしたが、本作はベスト盤的な側面が強いです。純粋な新曲は01.「Tune Up!」だけで、残りは2017を冠した過去曲のニューアレンジ+ライブ音源という構成になっています。選曲はライブ向けだそうです。
この性質上レンタルで済まそうかとも思いましたが、CMで聴いた「Tune Up!」がなかなか良さ気だったのと、前から好きにもかかわらず当ブログではPOLYSICSの単独レビュー記事を書いたことがなかったので良い機会だと思い購入しました。
どうせならと初回限定盤を買ったので付属のDVDについてもレビューします。POLYSICSの映像作品は揃えていないので既出映像のまとめでも個人的にはありがたい。
ということで早速DISC 1(CD)収録曲を見ていきます。リテイク(ニューアレンジ)曲に関してはやや批判的な内容が目につくかもしれませんが、基本的にはオリジナルでこれ以上ない完成形だと高く評価しているからこその裏返しだと思ってください。
01. Tune Up!
唯一の純粋な新曲。ファンキーなリズムで幕を開け早くも名曲の予感がするイントロ。確かな進化を見せつつもポリサウンドは変わらず格好良いということがすぐにわかるので、ベスト盤のトップを飾るのには最適だね。
MVもピットイン風でまさにチューンナップという感じですが、歌詞も不調子からの復活という前向きな流れで好き。"調子出るまで最低約30分"からの"調子出たけど結局たった1分"は相当ガタがきてるね。笑
Aメロは安定の乱高下ですが、"興味ない"ですうっと伸びるところが素敵。Bメロの"頭・身体・心が間に合わない"の連呼もタメが効いているのでサビでの爆発が一層映えます。
そのサビはここまでの流れに比べるとかなりポップな仕上がりで整備完了って感じがする。2回目の"go"の下がり方に意表を突かれたけどこれがめちゃくちゃ格好良い。ベースの疾走感も堪らないです。このサビなら"Anytime is OK for me"も納得。
続く2番は変則AメロというかCメロとしてもいいかもしれませんが、ここの"興味ない"の後のギターのエモさは感動的ですらある。ラストのコーラスもエンディング感がきちんとあって仕事が細かい。
02. シーラカンス イズ アンドロイド 2017
オリジナルは5thシングルで2005年の曲。"C・O・E・L・AKA・NTH"から始まるライブ仕様で、全体的にはオリジナルよりメタリックな印象が薄れてデジタルな仕上がりになったなという感想です。"アンドロイド"というよりロボットっぽい。笑
03. Young OH! OH! 2017
オリジナルは12thシングルで2009年の曲。この曲は元々大好きでそれが完成形だと思っていますが、このリテイクはミックス周りが良くなった改良版といった感じかな。特にビョンビョン鳴ってる音が大きくなったのは良いと思う。間奏の"ウッハ!"も長くなっているのでライブ寄り。
この曲は歌詞も好きです。ある意味合理的ともいえる生き方の提示がされていますが、そこがアイロニックだよね。"こだわり捨てたく無い/でもちょっとは仕方が無い"の精神は誰しも共感できるはず。
04. Shout Aloud! 2017
オリジナルは11thシングルで2009年の曲。とてつもなく勢いがある曲なのでこのリテイクでもそれは十分に感じられますが、やはり3人編成だからか少し物足りない気はする。フミの声質のおかげかフレッシュな感じはするけどね。
05. URGE ON!! 2017
オリジナルは1stシングルで2000年の曲。ということで本作(ライブ音源除く)の中ではいちばんリテイクまでの期間が長いです。こう言ってはなんですが、元が粗すぎるのでニューアレンジによる恩恵を最も受けている曲だと思います。
きちんと構成がわかるとこんなに格好良い曲だったのかと納得。しかしこのエッセンス自体は17年前からあったのだと思うと、表現したい世界観は昔から明確だなと改めて実感できる。
06. Electric Surfin' Go Go 2017
オリジナルは6thシングルで2006年の曲。イントロからして既に特徴的ですが、全体的にエレクトリック感が増して切なく化けたなと思います。でもよく考えると元々明るいだけの曲ではないですよね。
タイトルから受ける印象や"にゃにゃにゃにゃ…"のせいで爽やかでキュートなイメージがありますが、"こんな日は朝から止められず"~のメロなんか結構切な系だよね。そっちの印象に寄せてきたアレンジだと解釈しました。
07. Digital Coffee 2017
オリジナルは9thアルバム『we ate the machine』(2008)収録曲。これは元が大好きすぎるので、申し訳ないけどこのリテイクは正直これじゃない感があります。何が気になるってハヤシのボーカルの裏返り方や滑舌が微妙なところ。
滑舌が悪いと言いたいのではなくてむしろ全体的に言葉をはっきり発音しすぎだと思う。カオスな歌詞だから発音が適当のオリジナルの方が魅力的だった。ラップではないけどその界隈の用語を使えばフロウが悪いと感じる。
メロディも暴れ方が物足りなくて平坦な印象になったような。オリジナルとの差別化を図るために敢えてなのかもしれませんが、ジェットコースターのようなメロディラインがこの曲の良いところだと思うんだけどな。
でもアレンジは素晴らしいです。特に間奏のシンセ(前半)はより狂った感じになっていて満足。そこから綺麗な後半に繋がる落差が心地好い。イントロがドラムカウント始まりじゃなくなったのも新鮮で良かった。
08. Rocket 2017
オリジナルは9thシングルで2007年の曲。TVアニメ『もやしもん』のED曲としてもお馴染み。これは結構印象が変わりましたね。3人体制ならではの新アレンジ。
音がはっきりしたというのもありますが、Aメロ(ヴァース)にボコーダーが重なるようになったのでサビとの対比がより鮮やかになった。そのサビも電子音全開になったので、ロック炸裂のブリッジ("面舵ボート"~)がより痺れる展開に。これは完全にオリジナルより好きです。
09. カジャカジャグー 2017
オリジナルはミニアルバム『カジャカジャグー』(2003)表題曲。これも07.「Digital Coffee 2017」の感想と同じようなことを書きますが、オリジナルのボーカルの方が素敵だったと思います。
オリジナルは叫び声のような荒々しさとワルっぽい低音を併せ持つボーカルがひたすら格好良いという印象なのですが、それと比べると随分と優等生になったなという感じ。そもそも最初のシャウトからして何か恥ずかしがってない?って思っちゃった。笑
巻き舌も遠吠えもないしこの曲は若い勢いがあってこそな気がします。しかしこれもやっぱりアレンジは良いですね。ここまでのことも言い方を変えればインテリジェンスが加わったと表現できるので、それに合わせたボーカルということなのかも。
以降の3曲はライブ音源です。Live at Shinjuku ReNY 2016/10/13なのでTOISU!!!感謝祭のやつですね。
10. MEGA OVER DRIVE
ミニアルバム『MEGA OVER DRIVE』(2013)表題曲。この曲はなんといってもイントロが素晴らしい。勿論以降もずっと格好良いままで突き抜けるんだけどね。この曲を初めて聴いた時はポリがまた一皮剥けたなと思ったぐらいには衝撃的だった。
ライブ版でも音源の持つ疾走感がそのまま再現されて…いや、それ以上の勢いがあるといってもいいです。個人的にはこういうバッキバキの曲を今後もっと増やしてほしい。
11. Let's ダバダバ
11thアルバム『Oh!No!It's Heavy Polysick!!!』(2011)収録曲。コミカルとクールのバランスが絶妙だと思う大好きな曲です。カヨが抜けてもこういう曲が書けるんだと安心した記憶があります。
ライブ版なので間奏のオーディエンス煽りが長いです。ここで十分にタメてから解放される時の気持ち良さが最高。
12. Buggie Technica
1stアルバム『1st P』(1999)収録曲ですが、調べたところ初出は『TOKYO NEWWAVE OF NEWWAVE '98』(1998)というコンピだそうです。その後も何度か再録されバージョンアップを繰り返しているインストナンバー。
そのコンピは持っていないのでわかりませんが、『1st P』収録時点で割と完成していると個人的には思います。粗いっちゃ粗いけどインストだからかあまり気にならない。
2016年になって演奏したこれだって全然古臭く感じないし、技術だけ進歩して再録しても曲自体が良くないと微妙なままだよね。05.「URGE ON!! 2017」のところでも書きましたが、表現したいことが明確なバンドはやはり強いと思う。
こうしてアップデートで比較対象が出来ると、それ自体も嬉しいですが過去作の良さにフォーカスできるというのも利点だよね。そういう意味では意義のあるアルバムではないでしょうか。
ということでCDは以上の12曲です。内訳は新曲1、リテイク8、ライブ3でした。新曲01.「Tune Up!」は個人的にはキラーチューンだったので大満足。
リテイク02.~09.は、冒頭でも書きましたが「基本オリジナル最高」と思っている僕みたいなタイプは評価が厳しくなりがちかも。でもベストアルバム/入門盤としては良いと思うし、ライブ向けの選曲というのもそういうニーズに合わせた内容だということでしょう。
とはいえ05.「URGE ON!! 2017」と08.「Rocket 2017」のようにオリジナルより気に入りったリテイクもありますし、聴き込むうちに評価が変わる可能性はあります。
ライブ10.~12.は悪くないですが、初回盤にLIVE DVDが付いていることを考えるとその分新曲をもう1~2曲入れて欲しかったかな。まあCDとDVDでは録音/録画されたライブ会場が異なるので損した気はしませんし、通常盤を入門目的で買った人には嬉しい内容だと思います。
続いては初回盤付属のDISC 2 LIVE SIDE DVDの内容を見ていきます。収録曲目と順番はCDと同じで、基本的には過去の映像作品からの抜粋です(詳しくは都度説明します)。
曲目も順番も同じということでこちらは軽めに、そして映像を中心に書きます。ちなみに副音声にはメンバーによるコメンタリーが収録されているので、以降でACと書いたらオーディオコメンタリーのことです。
01. Tune Up!
映像はCOUNTDOWN JAPAN 16/17から(提供:rockin on japan / wowow)。ACでもふれられていますが、ついこの間の初御披露目演奏を映像化そして即パッケージ化というリスキーなチャレンジの産物です。笑 それでもきちんとこなせているあたりは流石。
02. シーラカンス イズ アンドロイド
映像は『Now is the live!』(2006)から。ということで@SHIBUYA-AXですね。フミのモジャモジャが懐かしく、ACも加齢を実感する話題が中心。笑 AXも今はないことを思うと本当に時の流れは残酷です。
03. Young OH! OH!
映像は『BUDOKAN OR DIE!!!! 2010.3.14』(2010)から。CDのところでもふれましたが間奏が長いバージョンで、武道館が一丸となって"ウッハ!"を叫ぶ様は壮観です。
04. Shout Aloud!
映像は同じく『BUDOKAN OR DIE!!!! 2010.3.14』から。オーディエンスの盛り上がりからパフォーマンスの熱さが分かりますが、ACではほとんど曲についてふれられず細かいネタで盛り上がるという。笑
05. URGE ON!!
映像は『DVDVPVDVLIVE!!』(2003)から。アス比が時代を感じさせます。これは@SHIBUYA CLUB QUATTROですが、やけに汗だくだなと思ったらクアトロは照明が近いからとACで判明しました。主原因は衣装のせいらしいですけど。
06. Electric Surfin' Go Go
映像は『Now is the live!』から。「ニューシングル!」と言っている通り当時の新曲で、ACによると初出しだったそうです。それでも後半はオーディエンスも曲を把握してきちんとノっているように見えます。わかりやすさもポリの魅力だよね。
07. Digital Coffee
映像は『We ate the show!!』(2008)から。これは@STUDIO COAST。CDのところではハヤシのボーカルに不満を書いてしまいましたが、この頃のは良いと思えるので年齢的な問題なのでしょうかね。
08. Rocket
映像は同じく『We ate the show!!』から。ACの「浄瑠璃みたいな…」と「能入ってる」でさらば青春の光のネタを思い出して笑ってしまった。曲も良いけどバックの映像と照明も素敵。
09. カジャカジャグー (ハヤシ iMovie Edit)
これだけ少し特殊で、複数の公演の映像をハヤシが特別に編集したエディットです。映像としては『PippikkippippiP In USA』(2004)、『You-You-You』(2006)の初回盤付属DVD(London公演)、『Now is the live!』の3作品からがベースで、終盤のラッシュはちょっとわかりません。
ACで為になったのは、シーケンサーを走らせていると(BPMを合わせておくと)こういう映像編集の時に便利だと知れたこと。
10. MEGA OVER DRIVE
映像は『What's This???』(2016)の限定盤付属DVDから。これも@クアトロで、2日で100曲カブリ無しのうちの1曲。『What's This???』のACというかメンバーおしゃべりでも語られていましたが、あのやけにでかいショルキーがDIYだという話はまた出てきましたね。
11. Let's ダバダバ
映像は『MEMORIAL LIVE OR DIE!!! 祝1000本&15周年!!! 2012.03.03/04』(2013)から。これも@AX。CDのところでもふれましたが間奏が長いバージョンで、これだけの大人数の"ダバダバ"&手拍子は快感でしょうね。ACではヤノの"Let's"に対するこだわりが聞けて満足。笑
12. Buggie Technica
映像は『LIVE AT newwave』(1999)から。唯一のVHSからということで最も古い映像です。アス比は勿論画質も古い。これも@クアトロなのでライブハウスの歴史を感じずにはいられない。現メンバーはハヤシだけでしかも10代という貴重さ。笑
以上こちらも全12曲でした。映像作品を全て揃えている熱心なファンにはほとんどが今更な内容でしょうが、そうでない僕にとっては楽しい内容でした。何よりACがいいよね。これを聞けただけでも初回盤を買って良かったです。
総括的なことはCDのところで書いたのでこれでおしまいとします。年内にオリジナルアルバムが出ればいいなと期待。