NOT A TRAMPOLINE / Rob Cantor +α
YouTubeの埋め込みが多いので読み込みに時間がかかります。Rob Cantor(ロブ・カンター)の1stアルバム『NOT A TRAMPOLINE』(2014)のレビュー・感想です。扱いとしては旧譜レビューになりますが、彼を知ったのは最近なので気持ち的には新譜紹介と変わりません。
Not a Trampoline/Rob Cantor Music

¥価格不明
Amazon.co.jp
彼のことは僕が好きなTV番組『TECHNE 映像の教室』(Eテレ)にて知りました。「ワンカット」の回で本作収録の「OLD BIKE」のMVが紹介されていて、映像はもちろん曲も気に入ったのでYouTubeで他の作品も鑑賞してみたところ、中々ユニークなことをやっている人だとわかり俄然興味が出ました。
検索すればわかりますがRob Cantorに関する日本語のページはあまりありません。しかし英語版のwikipediaには項目があるので基本的な情報はそこで知ることができます。アメリカ出身でTally Hallというバンドのギターボーカルとして名が通っている人みたいです。
Tally Hallは2004~2011年の間に3枚のフルアルバムを出しているので、音楽家歴は長いもののソロとしては本作がデビューアルバム…というのがRob Cantorのキャリアになります。現在バンドは活動休止中ですが、それと入れ替わるように彼が新たに始めたプロジェクトが面白いのです。
彼の作品は曲だけを評価しても十分素晴らしいのですが、その真価が存分に発揮されるのは映像も含めて鑑賞した場合です。つまり彼にはミュージシャンだけでなく動画クリエイターとしての才もあったということですが、具体的には"viral video(バイラル動画)"制作のセンスが光っているのです。
"viral video":ネット上で話題となり拡散されていくことを目的とした動画のことで、ホットなところでいうとピコ太郎の「PPAP」はその一例だと思うので埋め込みました。ジャスティン・ビーバーのような発信力の強い人間の目に留まれば勝ったも同然というマーケティングスタイル。規模は違えど、この記事で僕が動画の紹介をしていることも仕掛けた側の狙いに沿った行動ということになりますね。
要するに、Rob Cantorは素敵な音楽に趣向を凝らした映像をつけてアップしている面白ミュージシャンということです。そんな彼の作品を僅かながらでもバイラルさせようと…というと大袈裟ですが、単に面白いので紹介したいなと思って記事にしました。
普段なら記事タイトルにアルバム名を載せた場合は全曲レビューをするのですが、映像と併せて紹介したほうが都合がいいので数曲抜粋スタイルで書きました。このような性質上、曲よりも映像についてのレビューが中心となっていますが、まずは『NOT A TRAMPOLINE』収録曲からどうぞ。
02. OLD BIKE
まずは彼を知るきっかけとなったこの名作から。ここまで何度か「面白い」という言葉で形容しておいて何なのですが、この作品ではコミカルな方向ではない真面目なRob Cantorが堪能できます。一発目にまともなやつを紹介しておくのも悪くないかなと思って。
"funny"ではありませんが、テクネで取り上げられるだけのことはある"interesting"な映像ではあります。最初の方を観れば何となくわかると思いますが、自転車はターンテーブル上にあり、スクリーンの映像に合わせて回転させられています。そのアイデアを軸に、送風機や小物も駆使してワンカットで構築された映像世界。
技法もさることながらストーリーも感動的で素敵です。映像自体に回り灯篭らしさがあると思うので、ベタですが比喩的な意味での走馬灯を連想します。死者の幸福な記憶の再上演といった趣が涙を誘う。
映像の展開と同じく音楽も徐々に盛り上がりをみせる構成になっていて、そのための電子音の使い方が絶妙だという点で非常に僕好みのサウンドです。ベルや車輪の音や子供の声などのサンプリングも鮮明で、曲にリアリティが感じられます。
YouTubeのコメント欄にも書いている人がいますが、Queenの「Bicycle Race」を彷彿とさせるところもありますね。これは推測なんですが、本作は全ての曲に元ネタというかオマージュ元があるんじゃないかと思っています。僕の浅学のせいで確定的なことは言えませんけどね。
06. ALL I NEED IS YOU
この作品のアイデアには本当に感心しました。初めはただ短い面白動画を繋げただけのMADかと思ったんですが、サビの"All I need is you"に差し掛かると意図がわかり、思わず笑ってしまった…と同時にすげえと唸ってしまいました。
1番のサビまでに6つの動画が提示されますが、信号にハイタッチする動画が意図を掴ませにくくするために機能しているのも憎いなと思いました。"All I need is you"は5 wordsですからね。では信号は何だったのかと思って観続けると、2番以降の映像の伏線になっていたとわかり更に感心。
といっても実はリップシンク以外の動画の意味に気付いたのは何回か鑑賞してからでした。確かにいくつか意味がわからない動画があるなとは思っていたんです。しかしラスサビで目のアップの動画だけが抜かれた時にようやく意味がわかり、そういうパターンも潜んでいたのかと感動すら覚えました。
ほぼ答えですが、目は英語で"eye(アイ)"ですよね。これがわかるとパンを捏ねる動画も意味がわかります。"knead(ニード)"ですね。羊のアニメはリップシンクも兼ねているので見逃しそうですが、"ewe"(ユー)でしょうね。これらは音のパターンですが、信号の動画は文字のパターンで、残り時間の"15"秒に注目すべきでした。1とI、5とSって似てますよね。
ここまでに紹介した2曲でご理解いただけたと思いますが、映像で釣る必要などないほど、Rob Cantorは多くの人が素直に良いと思えるであろう曲を書く人なのです。歌声・メロディ・歌詞・アレンジ全てが美しく、どこか懐かしい思いに駆られ胸にグッとくる…そんな感じ。
この曲では、2番終わりの"you"がリフレインするところで出処不明の涙が押し寄せてきました。女性が振り返る映像にも儚さと多幸感があり余計に胸を打ちます。全体としてはコミカルな映像のシークエンスなのに、ここまで壮大で感動的な仕上がりになるのにはただならぬセンスを感じます。
11. PERFECT
埋め込んだこの作品は「29 Celebrity Impressions, 1 Original Song」という名前で通っており、Rob Cantorの作品の中でもバイラルされまくった有名動画です。この「1 Original Song」というのが「PERFECT」のことなのですが、要するにこの曲を使ったユニークな試みを収めた動画が作品として評価されているということです。
この作品は多くの"celebrity"を知っているほど面白さが増すと思いますが、知らなくともまずは観てください。意図するところはすぐにわかりますから。そして思うでしょう、「こいつ天才か!?」と。
…ひとしきり感動したら次はこの動画を観てください。メイキングという名のネタばらしです。これを観ればある意味がっかりもしくはある意味安心できると思います。笑
ということで、この"impressions"の裏にはimpressionistsの存在があったということでした。"Rob Cantor/None"が笑えます。といっても彼の演技と編集の妙があってこそのハイクオリティだということは言わずもがなですね。
そして肝心の曲も悪くないです。この動画では評価しにくいと思いますが、本作に収録されているのはRob Cantor自身が歌唱を務めるいわばオリジナルバージョンなので、こんなに良い曲だったんだとギャップを堪能できます。教育向け番組で流れていてもおかしくなさそうな感じ。
04. THE RENDEZVOUS
この曲にも映像があるので紹介したいのですが、動画タイトルの通り"NSFW"なので埋め込みは避けておきます。年齢制限がかけられているほどではないですが、ショッキングな内容です。気になる方は他人の目がないところで直接YouTubeへLet'sアクセス。
初めのうちはなるほど歳の差ランデヴーかとにやけつつ観ていたのですが、段々と雲行きが怪しくなっていき、ラストシーンには絶句してしまいました。「ダメ。ゼッタイ。」的なことを伝えたいのだろうとは思いますが…過激です。
映像の解釈については、YouTubeのコメント欄にあった老婆は実は若い女説がいちばんしっくりきました。こういう女に惚れるということはつまりこういうことだぞ(だから「ダメ。ゼッタイ。」)という趣旨ならばかなり強烈な風刺ですね。
狂気の映像はともかく曲は素晴らしいです。Madi Diazをフィーチャーしたデュエットソングで、切ないメロディと歌詞が胸をチクチクします。チップチューンのようなチープなシンセの音も印象的で好きです。
01. GHOST / 03. GARDEN OF EDEN
映像はありませんが曲として気に入っているものも紹介します。あまり記事を重くしたくないので埋め込みませんが、"AUDIO ONLY"という形で本作収録曲のいくつかは公式にアップされています。ここで取り上げる2曲もYouTubeで聴くことができますよ。
01.「GHOST」は、主張は控えめながらも凝っているとわかるトラックに、物悲しいメロディが載せられた憂いを帯びた曲です。サビは歌詞にないコーラスのところだと思いますが、そこに"ghost"の悲哀を見た気がします。
畳みかける"don't wanna"~に相反する動詞のペアが続くところも、狭間の存在である幽霊らしさがよく出ている好きな歌詞です。
03.「GARDEN OF EDEN」は、歌詞に"recieve the lights of 1985"とあるようにどこか懐かしい感じがするロックナンバー。明るすぎず暗すぎない絶妙なバランスのサウンドで耳馴染みがいい。
サビのギターと、"Garden of Eden"の歌い方が特に格好良いと思います。外来語として"エデン"の読みが浸透していますが、英語の発音は"イーデン"に近いんですね。
全曲紹介ではなくて申し訳ありませんが『NOT A TRAMPOLINE』のレビューは以上です。おそらくフィジカルリリース盤はないと思われるのでiTunesで購入しましたが、全12曲で歌詞カードを兼ねたデジタルブックレットもついてきたので満足の内容でした。映像はYouTubeで堪能すればいいしね。
さて、ここまで読んでいただければRob Cantorがいかにtalentedであるかということは十分にご理解いただけたと思います。ただの面白動画で終わらず、知性に基づいたユーモアが感じられるところが広くバイラルされる所以でしょうね。
どうしても映像に比重を置いて評価してしまいがちですが、曲のクオリティもかなり高いと思います。02.「OLD BIKE」のレビューの最後でふれたように、サウンド的にオリジナリティがあるかといえば微妙な気もしますが、歌詞や歌声も含めてRob Cantorの世界観というのは間違いなく構築できていると感じます。
人間の普遍的な感情や思想に訴えかけてくるような…どこかで見てたの?と言いたくなる感覚です。そこで、この感覚を象徴していると思う作品を最後に紹介して終わりとします。本作には収録されていないので+αとしてここで。
Nobody Else Quite Like You
動画タイトルは「INTEL presents Nobody Else Quite Like You」です。説明に"This song is ALL ABOUT YOU"とありますが、端的な表現だと思います。
動画を最後まで観ればわかりますが、これはTrue Keyというパスワード管理アプリの宣伝を担っているガチのコマーシャル作品です。生体認証システムが売りのようなので、いかにあなたが"unique"であるか(=識別可能か)というコンセプトは大事ですよね。その"unique"を見事に切り取ったのが本作品です。
この作品も06.「ALL I NEED IS YOU」のMVと同じく短い動画/静止画が次々と登場するタイプですが、こちらはすぐに意図がわかると思います。そう、映像の状況をそのまま歌っているだけですね。ほとんどがおバカな…いや、ユニークな内容です。笑
素材はクラウドソーシングで集めたのだと思われますが、いちばんインパクトがあるのはやっぱり"poop in the soup"ですね。その前の"How you hop, how you hoop"から続く流れるような語感の美しさに反して内容がひどい。笑
言葉遊びと表現の巧さが光る"Your cowbell is a dogbell"という一節や犬にドライヤーを咥えさせている映像、そして"man-dog"の登場と何かと犬推しなのも特徴。
"juggle while you hoverboard"や"turn a normal cheese-curl into instagram art"の動画には普通に感心してしまいました。その後が気になるのは"go singing in the street"の映像…車の接近がやや不自然な気がするのでトリックだと信じたいです。
と、このように世界には色んな人が居て生き方は自由でいいんだというポジティブなメッセージを受け取ることができるハッピーな映像&曲です。ただのコマーシャルに収まらないところが流石Rob Cantor。
Not a Trampoline/Rob Cantor Music

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彼のことは僕が好きなTV番組『TECHNE 映像の教室』(Eテレ)にて知りました。「ワンカット」の回で本作収録の「OLD BIKE」のMVが紹介されていて、映像はもちろん曲も気に入ったのでYouTubeで他の作品も鑑賞してみたところ、中々ユニークなことをやっている人だとわかり俄然興味が出ました。
検索すればわかりますがRob Cantorに関する日本語のページはあまりありません。しかし英語版のwikipediaには項目があるので基本的な情報はそこで知ることができます。アメリカ出身でTally Hallというバンドのギターボーカルとして名が通っている人みたいです。
Tally Hallは2004~2011年の間に3枚のフルアルバムを出しているので、音楽家歴は長いもののソロとしては本作がデビューアルバム…というのがRob Cantorのキャリアになります。現在バンドは活動休止中ですが、それと入れ替わるように彼が新たに始めたプロジェクトが面白いのです。
彼の作品は曲だけを評価しても十分素晴らしいのですが、その真価が存分に発揮されるのは映像も含めて鑑賞した場合です。つまり彼にはミュージシャンだけでなく動画クリエイターとしての才もあったということですが、具体的には"viral video(バイラル動画)"制作のセンスが光っているのです。
"viral video":ネット上で話題となり拡散されていくことを目的とした動画のことで、ホットなところでいうとピコ太郎の「PPAP」はその一例だと思うので埋め込みました。ジャスティン・ビーバーのような発信力の強い人間の目に留まれば勝ったも同然というマーケティングスタイル。規模は違えど、この記事で僕が動画の紹介をしていることも仕掛けた側の狙いに沿った行動ということになりますね。
要するに、Rob Cantorは素敵な音楽に趣向を凝らした映像をつけてアップしている面白ミュージシャンということです。そんな彼の作品を僅かながらでもバイラルさせようと…というと大袈裟ですが、単に面白いので紹介したいなと思って記事にしました。
普段なら記事タイトルにアルバム名を載せた場合は全曲レビューをするのですが、映像と併せて紹介したほうが都合がいいので数曲抜粋スタイルで書きました。このような性質上、曲よりも映像についてのレビューが中心となっていますが、まずは『NOT A TRAMPOLINE』収録曲からどうぞ。
02. OLD BIKE
まずは彼を知るきっかけとなったこの名作から。ここまで何度か「面白い」という言葉で形容しておいて何なのですが、この作品ではコミカルな方向ではない真面目なRob Cantorが堪能できます。一発目にまともなやつを紹介しておくのも悪くないかなと思って。
"funny"ではありませんが、テクネで取り上げられるだけのことはある"interesting"な映像ではあります。最初の方を観れば何となくわかると思いますが、自転車はターンテーブル上にあり、スクリーンの映像に合わせて回転させられています。そのアイデアを軸に、送風機や小物も駆使してワンカットで構築された映像世界。
技法もさることながらストーリーも感動的で素敵です。映像自体に回り灯篭らしさがあると思うので、ベタですが比喩的な意味での走馬灯を連想します。死者の幸福な記憶の再上演といった趣が涙を誘う。
映像の展開と同じく音楽も徐々に盛り上がりをみせる構成になっていて、そのための電子音の使い方が絶妙だという点で非常に僕好みのサウンドです。ベルや車輪の音や子供の声などのサンプリングも鮮明で、曲にリアリティが感じられます。
YouTubeのコメント欄にも書いている人がいますが、Queenの「Bicycle Race」を彷彿とさせるところもありますね。これは推測なんですが、本作は全ての曲に元ネタというかオマージュ元があるんじゃないかと思っています。僕の浅学のせいで確定的なことは言えませんけどね。
06. ALL I NEED IS YOU
この作品のアイデアには本当に感心しました。初めはただ短い面白動画を繋げただけのMADかと思ったんですが、サビの"All I need is you"に差し掛かると意図がわかり、思わず笑ってしまった…と同時にすげえと唸ってしまいました。
1番のサビまでに6つの動画が提示されますが、信号にハイタッチする動画が意図を掴ませにくくするために機能しているのも憎いなと思いました。"All I need is you"は5 wordsですからね。では信号は何だったのかと思って観続けると、2番以降の映像の伏線になっていたとわかり更に感心。
といっても実はリップシンク以外の動画の意味に気付いたのは何回か鑑賞してからでした。確かにいくつか意味がわからない動画があるなとは思っていたんです。しかしラスサビで目のアップの動画だけが抜かれた時にようやく意味がわかり、そういうパターンも潜んでいたのかと感動すら覚えました。
ほぼ答えですが、目は英語で"eye(アイ)"ですよね。これがわかるとパンを捏ねる動画も意味がわかります。"knead(ニード)"ですね。羊のアニメはリップシンクも兼ねているので見逃しそうですが、"ewe"(ユー)でしょうね。これらは音のパターンですが、信号の動画は文字のパターンで、残り時間の"15"秒に注目すべきでした。1とI、5とSって似てますよね。
ここまでに紹介した2曲でご理解いただけたと思いますが、映像で釣る必要などないほど、Rob Cantorは多くの人が素直に良いと思えるであろう曲を書く人なのです。歌声・メロディ・歌詞・アレンジ全てが美しく、どこか懐かしい思いに駆られ胸にグッとくる…そんな感じ。
この曲では、2番終わりの"you"がリフレインするところで出処不明の涙が押し寄せてきました。女性が振り返る映像にも儚さと多幸感があり余計に胸を打ちます。全体としてはコミカルな映像のシークエンスなのに、ここまで壮大で感動的な仕上がりになるのにはただならぬセンスを感じます。
11. PERFECT
埋め込んだこの作品は「29 Celebrity Impressions, 1 Original Song」という名前で通っており、Rob Cantorの作品の中でもバイラルされまくった有名動画です。この「1 Original Song」というのが「PERFECT」のことなのですが、要するにこの曲を使ったユニークな試みを収めた動画が作品として評価されているということです。
この作品は多くの"celebrity"を知っているほど面白さが増すと思いますが、知らなくともまずは観てください。意図するところはすぐにわかりますから。そして思うでしょう、「こいつ天才か!?」と。
…ひとしきり感動したら次はこの動画を観てください。メイキングという名のネタばらしです。これを観ればある意味がっかりもしくはある意味安心できると思います。笑
ということで、この"impressions"の裏にはimpressionistsの存在があったということでした。"Rob Cantor/None"が笑えます。といっても彼の演技と編集の妙があってこそのハイクオリティだということは言わずもがなですね。
そして肝心の曲も悪くないです。この動画では評価しにくいと思いますが、本作に収録されているのはRob Cantor自身が歌唱を務めるいわばオリジナルバージョンなので、こんなに良い曲だったんだとギャップを堪能できます。教育向け番組で流れていてもおかしくなさそうな感じ。
04. THE RENDEZVOUS
この曲にも映像があるので紹介したいのですが、動画タイトルの通り"NSFW"なので埋め込みは避けておきます。年齢制限がかけられているほどではないですが、ショッキングな内容です。気になる方は他人の目がないところで直接YouTubeへLet'sアクセス。
初めのうちはなるほど歳の差ランデヴーかとにやけつつ観ていたのですが、段々と雲行きが怪しくなっていき、ラストシーンには絶句してしまいました。「ダメ。ゼッタイ。」的なことを伝えたいのだろうとは思いますが…過激です。
映像の解釈については、YouTubeのコメント欄にあった老婆は実は若い女説がいちばんしっくりきました。こういう女に惚れるということはつまりこういうことだぞ(だから「ダメ。ゼッタイ。」)という趣旨ならばかなり強烈な風刺ですね。
狂気の映像はともかく曲は素晴らしいです。Madi Diazをフィーチャーしたデュエットソングで、切ないメロディと歌詞が胸をチクチクします。チップチューンのようなチープなシンセの音も印象的で好きです。
01. GHOST / 03. GARDEN OF EDEN
映像はありませんが曲として気に入っているものも紹介します。あまり記事を重くしたくないので埋め込みませんが、"AUDIO ONLY"という形で本作収録曲のいくつかは公式にアップされています。ここで取り上げる2曲もYouTubeで聴くことができますよ。
01.「GHOST」は、主張は控えめながらも凝っているとわかるトラックに、物悲しいメロディが載せられた憂いを帯びた曲です。サビは歌詞にないコーラスのところだと思いますが、そこに"ghost"の悲哀を見た気がします。
畳みかける"don't wanna"~に相反する動詞のペアが続くところも、狭間の存在である幽霊らしさがよく出ている好きな歌詞です。
03.「GARDEN OF EDEN」は、歌詞に"recieve the lights of 1985"とあるようにどこか懐かしい感じがするロックナンバー。明るすぎず暗すぎない絶妙なバランスのサウンドで耳馴染みがいい。
サビのギターと、"Garden of Eden"の歌い方が特に格好良いと思います。外来語として"エデン"の読みが浸透していますが、英語の発音は"イーデン"に近いんですね。
全曲紹介ではなくて申し訳ありませんが『NOT A TRAMPOLINE』のレビューは以上です。おそらくフィジカルリリース盤はないと思われるのでiTunesで購入しましたが、全12曲で歌詞カードを兼ねたデジタルブックレットもついてきたので満足の内容でした。映像はYouTubeで堪能すればいいしね。
さて、ここまで読んでいただければRob Cantorがいかにtalentedであるかということは十分にご理解いただけたと思います。ただの面白動画で終わらず、知性に基づいたユーモアが感じられるところが広くバイラルされる所以でしょうね。
どうしても映像に比重を置いて評価してしまいがちですが、曲のクオリティもかなり高いと思います。02.「OLD BIKE」のレビューの最後でふれたように、サウンド的にオリジナリティがあるかといえば微妙な気もしますが、歌詞や歌声も含めてRob Cantorの世界観というのは間違いなく構築できていると感じます。
人間の普遍的な感情や思想に訴えかけてくるような…どこかで見てたの?と言いたくなる感覚です。そこで、この感覚を象徴していると思う作品を最後に紹介して終わりとします。本作には収録されていないので+αとしてここで。
Nobody Else Quite Like You
動画タイトルは「INTEL presents Nobody Else Quite Like You」です。説明に"This song is ALL ABOUT YOU"とありますが、端的な表現だと思います。
動画を最後まで観ればわかりますが、これはTrue Keyというパスワード管理アプリの宣伝を担っているガチのコマーシャル作品です。生体認証システムが売りのようなので、いかにあなたが"unique"であるか(=識別可能か)というコンセプトは大事ですよね。その"unique"を見事に切り取ったのが本作品です。
この作品も06.「ALL I NEED IS YOU」のMVと同じく短い動画/静止画が次々と登場するタイプですが、こちらはすぐに意図がわかると思います。そう、映像の状況をそのまま歌っているだけですね。ほとんどがおバカな…いや、ユニークな内容です。笑
素材はクラウドソーシングで集めたのだと思われますが、いちばんインパクトがあるのはやっぱり"poop in the soup"ですね。その前の"How you hop, how you hoop"から続く流れるような語感の美しさに反して内容がひどい。笑
言葉遊びと表現の巧さが光る"Your cowbell is a dogbell"という一節や犬にドライヤーを咥えさせている映像、そして"man-dog"の登場と何かと犬推しなのも特徴。
"juggle while you hoverboard"や"turn a normal cheese-curl into instagram art"の動画には普通に感心してしまいました。その後が気になるのは"go singing in the street"の映像…車の接近がやや不自然な気がするのでトリックだと信じたいです。
と、このように世界には色んな人が居て生き方は自由でいいんだというポジティブなメッセージを受け取ることができるハッピーな映像&曲です。ただのコマーシャルに収まらないところが流石Rob Cantor。