職場の人間関係(ほとんどがパワハラかいじめ)が理由で辞めてきた人から、次の応募先の面接で前職の退職理由を聞かれたらどう答えたらいいかよく相談を受けた。
実際、「(第52話) 上司ガチャにはずれた人」でも、
その続きがあって、相談者から上記のような相談を受けていた。特にパートの場合、辞めた「理由づけ」に苦労している人が多かったような気がする。
●退職理由のタブー
一般に退職理由に人間関係を理由にすることはタブーとされている。ハローワークの職業相談員や民間のキャリアコンサルタントも人間関係を退職理由にしないよう勧めている。
一言で人間関係が退職理由と言うと、その原因が、上司からの受容度を超えたパワハラ、周囲からのいじめ・無視・いやがらせを受けて、やる気をなくしたり、メンタルにもなりそうだったので退職してしまうことが多いのだが、その程度がどの程度だったのか? 普通の人なら耐えられる範囲なのに過剰に反応しているだけなのかもしれないし、あるいは、本人のコミュニケーション能力不足、協調性の欠如、職務遂行能力不足(仕事が覚えられない、ミスが多い)、さらに業務指示に従わない、社内ルールを無視するような勤務態度、いわゆる『モンスター社員』のため、周りから孤立して居づらくなったのかもしれない。
いずれにせよ、これらを客観的に証明するものがないので人間関係(パワハラやいじめ)を退職理由として説明しても不安感を抱かせるだけだからである。
面接官によっては、退職理由に納得感が得られない場合は、本人の性格や資質に問題があるのではないかと疑い、それを確かめたくてネチネチ聞いてくることがある。
うまく説明できればいいが、特にパワハラを受けて退職した場合など、しつこく聞かれると動揺して自信なさそうな言い方になってしまい、なにか隠しているような印象を与え、本当に悪いのは会社側なのに、まるで自分側に問題があるように思われ、不採用になる失敗をしてしまう人がいる。
つらいパワハラを受けて、それを理由に退職したのに、自己都合退職になる上に、正直に退職理由を言えず、パワハラ被害を受けた人が、その退職理由の説明に苦労するのはなんとも理不尽な話である。
こういう場合は、私見だが、退職理由について、条件付きで人間関係(パワハラやいじめ)が退職理由であることは、面接時にはある程度は話してもいいと思っていた。(ただし、履歴書には記載しない方が無難)
●Only one から One of them (ワンオブゼム) へ
こういう時はまず、人間関係以外でなにか他に思いつく退職理由はないかを聞き出していた。
例えば・・・
・社長が交代し、事業方針や経営方針が変わり自分の仕事に関する考え方と合わなくなった。(ただ、それに従うことは苦ではなかった)
・退職者が出ても補填採用してくれず、自分の負荷が増して、残業が増えて体力的に厳しくなった。(なんとか対応できる範囲だった)
・パートの場合、シフトが減り収入が少し減った(生活にはそれほど影響がなかった)
などを挙げて、いずれも受容範囲であったとしてもこれを無理気味に、とりあえず一番の退職理由として説明し、それだけでは退職理由として弱くて何か隠しているのではと疑いをかけられそうになったら、それ以外の理由として、
「もうーつ理由がありまして、実は、上司(お局様)が独断的・感情的で職場の風通しが悪く、業務効率アップのためにいろいろ改善を申し入れたものの無視されたり、その上の上司に相談しても「辛抱しろ」といわれるだけで取り合ってくれず、この会社に長く自分が働いているイメージが湧いてこなかったことも理由の一つでした。仕事自体はやりがいを感じており、周り人たちとも仲良くできていたので、とても残念でした。」
と、理由を2つ以上挙げて、最後に人間関係にさらりと触れるようアドバイスしていた。
さらに、この時必ず、
1.仕事自体はやりがいを感じていたこと
2.上の上司あるいは人事担当者に相談したが、取り合ってもらえなかったこと(自分なりに努力はしたこと)
3.「パワハラがつらくて辞めた」とは直接的に言わず「このままここで働くイメージがわかない」というような婉曲的な表現にすること
この3点を必ず言うように勧めていた。
これにより、退職理由が人間関係である割合を「薄める」ことができるし、人間関係に弱いイメージを持たれないようにすることができる。
また、「私はパワハラがひどい職場だったらすぐ辞めますよ」と宣言することになるので、応募先が同じようなパワハラ上司やお局様をかかえていたなら、この理由を聞くと、すぐ辞められるかもしれないと思って不採用にしてくれる可能性が高くなる。
そういう意味で応募先に「探りをいれる」効果もあるような気がする。
●退職理由は誰も信じない
私が前職の人事部で採用面接をしていた時は、退職理由は一応聞いてはいたが、深堀することはしなかった。どうせ本当の事を言わないだろうということが予想できたからである。
通常、面接官は退職理由を聞いてもそのまま鵜呑みにすることはない。真偽は不明でもとりあえず納得感さえ得られればそれでよく、「ひょっとすると嘘かもしれないけど、話し方や表情からするとどうも本当らしいので、まあ、そういうことにしておこうか」という気持ちになってもらえるかがカギとなる。
ここで、信じてもらうには、より真実味を帯びた話し方や表情が重要になってくる。
面接で嘘っぽいことを言おうとすると、何か後ろめたさを感じてオドオド感が漂う人が多いが、実際にパワハラ被害を受けたことは実体験なので気持ちがこもり、説得力のある話し方ができるはずである。
もちろんこれでうまくいくかはわからないが、面接でパワハラ被害の事実を、真実味をもって話せそうだったら、前述の条件付きで、正直に話してみることを勧めていた。
参考にしてもらえればうれしい。