30歳代男性、機械部品の卸業の営業職の求人票を持参し応募したいと来窓。

 若くて営業職を希望するくらい人は、元来、積極的で行動的な人が多く、第49話で述べたように、自分で民間の職業紹介会社や求人サイトを利用する人の方が多いため、ハローワークに来て探す人は少数である。思わず経緯や動機を知りたいと思い、いろいろ聞いてみた。

 

●営業職は「数字」がつきまといます

 前職は、携帯ショップで副店長をしていたが、勤務時間が不規則で残業も多く転勤もあり、結婚をして子供もできるので、家庭も大切にしたいことから土日が休める仕事をしたい。元来、人と話すのが好きなので、これまでの経験を活かしたいということで、地元で転勤のない法人営業職に転職しようと思い、応募しに来たとのこと。

 

 

 通常、営業職は「ノルマ」や事務所内に掲示される「棒グラフ」のイメージが強く、ハローワークでは、そのプレッシャーがいやで応募する人は極端に少なかった。賃金は他の職種よりやや高めで、会社によってはインセンティブもあり、成果が直接給与や賞与に反映されやすいというメリットがあって、やる気のある人には向いている職種だが、今の若い人は、報酬よりストレスをあまり感じないところで働くことを希望する場合が多い。

 

 企業側も、求人票に「ノルマ」という表現をつかうと応募者が少なくなるので、例えば「(目標数字はあるが)ノルマはありません」とか「チーム目標はありますが、個人ノルマはありません」とか、少しでもプレッシャーを緩和する表現に変えるなどして募集に工夫をこらしている。

 

●営業職に求められるもの

 営業職に求められる資質として、コミュニケーション能力が長けていないとできない、自分は人見知りで人と話すのが苦手なので無理と思っている人が多いようだが、少し勘違いをしているように思う。

 よく「コミュニケーション能力」とよく言われるが、単に話題が豊富、会話がうまい、プレゼンが上手というのではなく、営業職に求められるのはむしろ、「インタビュー能力」即ち、いかに顧客にしゃべらせるか、聞き上手な人が適していると言える。

 どの会社もいろいろな悩みや問題点を抱えている。顧客の担当者にもいろいろ仕事上で愚痴りたいことも多々あるはずである。そんな時、無理に売り込もうとせずに、うまく話しを引き出し、解決策を提示しなくても「苦労されているんですね、大変ですね」とうなずくだけで、顧客との信頼関係が得られ仕事に結びつくことがある。

 人と話すのが苦手という人も、人の話をじっくり聞くことができる聞き上手なら、そんなにストレスを感じずにできるのではないか。

 

 もう一つ、営業職が嫌がられる理由に「断られることがいや!」というのがある。顧客から断られると、自己否定されたような気持になり、自信喪失・自己嫌悪に陥ってしまうのがいやなのである。

しかし、トップセールスと言われる人は、売上もトップだが、断られる件数もトップである。

 この言葉を忘れてはいけない。氷山の一角と同じで、水面から上の成約した件数ばかりに目が行き、その水面下にはその何倍もの断られた件数があることを見過ごしてはいけない。

 なんなら、「今期は、断られる件数で1番を目指します」と周りに宣言するのも、おもしろいかもしれない。断られる件数なので、気が楽だし、自分のやる気と努力だけで実現できる数字である。

母数(顧客とのコンタクト件数)を増やせば、自ずと結果はついてくる。

 

 私が知る成果を残している営業マンは、ベラベラしゃべる人よりは「こんな寡黙な人が、いい営業成績を残しているのか・・・」と思う人のほうが圧倒的に多い。

やってみると以外とハマることもある。コミュニケーションが苦手というだけで、営業職を避けるのはもったいない気がする。