24歳 女性、事務職に応募したいと自選した求人票を持参。前職を確認すると、最近まで保育士として働いていたが退職していた。
退職理由を聞くと、言いにくそうに、ぼそぼそと話してくれた。
小さいころから、子供に関わる仕事にあこがれ、保育士をめざすようになり、学校にいって資格をとり、私立の保育園に勤めたのだが、保育士のする仕事が、入る前に想像していたイメージと、現実とはかなり乖離していることがわかって、子供と接する以外の仕事や人間関係で疲れてしまい、自分は保育士に向いていないということがわかった。せっかく保育士の学校に通い資格まで取得したが、別の職種に転職したいと思い来窓したとのこと。
(これ以外にも、若い男性保育士が、先輩の給与の額を知り、あまりに安く昇給も見込めないことがわかり、これでは結婚できないとショックをうけて転職したいと来窓したこともあった。保育士に男性が少ないのは、単に業務の性格からだけではないことがわかったような気がした。)
●なりたい仕事に就いたのに・・・
子供のころからあこがれていた職業に就きたいと資格まで取り、希望通りその仕事に就いたのだが、思っていた内容と現実とのギャップに戸惑い、そのまま離職してしまう。
よくある話である。保育士以外にも、理美容関係、動物を取り扱う仕事、介護・看護、教職などの職種の人がたまに来られていた。
どんな仕事にも陽の当たる部分と陰の部分がある。
通常は、あこがれていた仕事に就くと、陰の部分に戸惑いながらも、陽の当たる部分にやりがいを見出し、陰の部分とうまく折り合いをつけながら仕事をこなしていくものだが、陰の部分がどうしても我慢できないレベルに達すると離職することになってしまうのである。
こういう場合、この仕事が自分に向いていない仕事であるとわかっただけでもよかった、と前向きに考えるようにアドバイスしていた。そして、この経験は必ず、これからの人生に役立つことは間違いないと励ましていた。
エジソンの言葉に「私はこれまで一度も失敗をしたことがない。ただ何万回もの、うまくいかない方法を見つけただけだ」というのがある。
若いのでやり直しはきくし、引きずることなく新たな職種に挑戦してほしいところだ。
この相談者には、事務職に求められる資質や能力を説明し、パソコンのスキルアップの職業訓練も検討するよう勧めておいた。
●長期スパンで考えよう
余談だが、保育士の場合は、歳を重ねて40代・50代になると、精神的にたくましくなり「大阪のおばちゃん化」して、人間関係等で若い頃なら耐えられなかったことも、平気になってくることが多い。
歳を重ねて子離れする頃には、精神的にたくましくなって、地方の公共団体から学童保育など仕事は随時あるので、この保育士の資格を活かせる時がくるかもしれない。
資格を保有していると、キャリアを一旦休眠させて、機会をうかがいながら活用できるチャンスを待つこともできるのが強みである。10~20年スパンくらいで考えてみるといいかもしれない。無駄にはならないとはこういうことも含まれる。