●妊婦さんが就活?  

 20歳代後半女性、体に負担のかからないパートの仕事はないかと来窓。理由を聞くと妊娠しているとのこと。

少し驚いたが、さすがに妊婦さんを新規で雇ってくれるところはないと説明し、本人も「まあ、そうでしょうね」とわかっている様子。

 受給資格者証に(第28話参照)日付印と職業相談印を捺印し帰っていった。

 

 本来、妊娠して退職した場合は、出産を終えて求職活動ができる状況になるまで受給期間の延長(最長4年)手続きをするのだが、どうも経済的な理由から基本手当の受給を急ぐ理由があったのか、就職は難しいことは承知でそのまま求職活動をする意思を示したみたいである。

 いろいろ事情はあるかもしれないが、妊婦さんが就職活動しなければならない状況には、やるせない気持ちで一杯になった。

 

●育児休業制度の格差

 他方、妊娠して退職し、出産を終えて、子供を保育所に預けるまでに働かないといけないので早く仕事を探したいという就職と保育所の確保のタイミングで苦労している若いお母さんもよく来られた。

 いずれも、育児休業制度が利用されて雇用が継続されていれば、こんな苦労はしなくて済んだ話である。

 

 

 大企業の場合は、育児休業制度が整備されており、さらに復職後もフレックスタイム制や短時間勤務制度、子供の看護休業制度など、育児を支援する就業規則が整備されているところが多く、雇用の継続が確保され、安心して出産・育児できる環境がある。

 

 ところが、少なくなっているとはいえ、一部の中小企業では(特に小企業の場合)、もともと育児休業を取得することに理解のない社長や企業風土の会社だったり、児休業が取れたとしても、育児休業終了後には、硬直した勤務体系で、周囲の理解が得られないため、育児との両立ができずあきらめの気持ちで辞めざるを得ないことが多い

 

 妊娠して退職してしまうと、当然、育児休業給付金は受給できなくなるし、さらに、出産・育児が一段落しても、新たに仕事を探さなくてはならない。賃金が伸び悩み、女性も働かなければならない家庭が増えている中、ただでさえで大変な出産後の女性に、さらに育児や託児所の確保を強いられ多大な労力とストレスがかかることになる。

 

 育児休業制度の実績がある会社とない会社、出産後の復職受け入れ体制の整っている会社とそうでない会社、どちらに勤めるかで、大きな格差が生まれているのが現実である。

 

●育児休業制度で雇用の継続を

 育児休業制度がこの4月から随時改正され、男性でも出生時に育児休業がとれるようになったり、分割して柔軟に取得できるようになった。国もこうして、少子化対策のため、育児休業法を適宜改正しており、育児休業の取得率が、令和3年度、女性の場合85%、男性も13%を超えた。喜ばしいことだが、それだけではまだまだ物足りない気がする。それプラス、復職後の柔軟な勤務体系と子の看護休暇や学校行事を上司や周りの社員が容認できる環境の整備をもっと中小企業に奨励すべきである。

 

 育児休業制度の実績のない経営者も、規模が小さいからという言い訳はそろそろ考え直してほしいところだ。例えば、育児休業中の代替要員として期間限定の求人を出すことは法律上可能である。時間を持て余しているシニア世代を、育児休業中の期間限定で採用するのも一案である。

 

「妊娠・出産しても(希望者の)100%の雇用は継続される」そんな社会が来れば、少子化問題も少しは改善されるかもしれない。