●セクハラ歯科医
20歳代の女性が、白衣を着たままカバンを1つさげて険悪な顔で来所。
総合窓口で「トイレ借りられますか? 着替えたいんで」
思わず「どうされたんですか?」と聞くと
歯科医院で歯科助手として勤務していたが、院長のセクハラがひどくて、体は触られるし、その場でやめてきた。一刻も早くその場を離れたくて仕事着のままでここへ来たとのこと。
着替えた後は、求職者登録やハローワークの利用方法を説明して相談窓口に案内した。
●許せぬ経営者たち
設立まもない小規模な事業所の社長、成り上がりのワンマン社長、苦労知らずのジュニア社長、個人クリニックの院長等で、お山の大将となって、法令遵守の意識が希薄で雇用管理の一般常識をわきまえない経営者がまれにいる。
(なお、事業所の名誉のために言っておきますが、まじめで誠実な経営者もたくさんおられます。あくまで「まれ」なケースです)
相談窓口では、就業中あるいは退職された方からの会社への苦情や憤りを数多く聞いてきた。
多かった意見としては・・・
・パワハラやいじめがひどい、上層部に相談しても対処してくれない。お前が辞めろと言われた。
・妊娠したとたん、うちには育児休業は無いといわれた。
・タイムカードを押してから、機械を止める処理をしろと言われた。
・就業時間前の朝礼は任意と言っておきながら、参加しないと、遅刻にすると注意された。
・休憩時間にも平気で仕事を命令してくる。
・勤務時間をその日ごとに平気で変えられた(今日は仕事がないので、もう帰っていいよ)
・試用期間は社会保険の加入はないと言われ、さらに3ケ月後に社会保険に加入してもらえるといったのにいつまでも放置された。(そもそも試用期間中でも条件を満たせば加入の義務あり)
・社長から「週1日のパートには有給休暇がない」と平然と言われた。
など、枚挙にいとまがない。
●結局の落とし所は・・・
これらの苦情は、基本的に労働基準監督署に申し出することにより、なにかしらの対応はとってもらえるが、中小企業の場合、誰が労基署に相談に行ったかはすぐ会社にわかるので、そもそも当人は、その会社に居づらくなる。生活がかかっている場合は、ほとんどの人は辛抱するか、泣き寝入りである。
訴えても、結論が出るまで時間とコストもかかるし、損害賠償をもらえてもわずかな額になることが多い。
国も、パワハラについては、罰則付きのパワハラ防止法(労働施策総合推進法)を施行するなど、いろいろ対策を講じてはいるが、まだまだ中小企業に浸透するには時間がかかりそうである。
ブラック企業と自分が判断すれば、早めに転職したほうが賢明かもしれない。
ただ、ブラックの定義は個人の受け取り方によって異なる上に、世の中にはブラック企業もあるが、モンスター社員もいることを忘れてはならない。
双方の言い分を聞かないと労基署も判断しづらいので、どうしても訴えたいと思うなら証拠を(録音やメモ、実態の勤務表)こまめに残すことを勧めている。
ただ、結局のところ、早く気分を切り替えて、次の仕事を見つけることに集中したほうが、自分のためになることが多いのが現実である。