LGBTやジェンダーフリーなどの性的マイノリティの考え方が、まだ世間的に認知されていない頃の話ですのでご了承ください。

 

●ここは、場違い? 

 40歳代 男性 やや小太り、きれいに化粧をして、髪はヒッツメで後ろに束ねている、服装もゆったり目のワンピースで、一見、垢ぬけしていない小柄なマツコ風といえばわかりやすい。

 

 

 待合コーナーで順番を待っているときから、ひときわ目立っていた。

 本人も「ここは、私のようなものが来るところではない」とうすうす感じたのか、周りの視線を気にしながら落ち着かない様子。

 

 相談席にすわると、口調は丁寧で、遠慮がちに、持ってきた求人票を示し、

「この求人、ニューハーフでも応募できるか聞いてくれませんか?

 

 てっきり、夜の飲食店の接客業かと思っていたら、なんとスーパーのレジの仕事であった。

「えっ、『ニューハーフ』と先方(応募先)に言ってもいいんですか?」と聞くと

「この格好で面接にいけばすぐにわかるので、前もって確認しておきたいんです」との返事。

早速 応募先のスーパーの採用担当者に電話をする。

 

●戸惑う事業所

私  「40代の方が応募したいと窓口に来られています。応募可能でしょうか?」

採用担当者「(明るい声で)もちろんです。面接日程をご連絡しますので、本人さんの氏名と連絡先を教えてください」

私  「その前に一点確認したいのですが・・・」

採用担当者「(明るい声で)はい、どうぞ~~」

私  「あの~、ニューハーフでも応募できますか?」

採用担当者「えっ!・・・・・・・・・・・(しばらく変な長い沈黙) (絞りだすような声で)まあ・・・、当社ではニューハーフだからといって応募できないというきまりはありませんが・・・」

 

<電話を一旦保留>

私  「応募できるそうですが、どうされますか?」

相談者「そうですね~(しばらく考えて)でも、やっぱり一旦、持ち帰って検討します。」

 

<電話の保留を解除>

私    「一旦、持ち帰って検討されるそうです。」

採用担当者「安堵感に満ち溢れた口調で)そうですか~。 また、検討されて、応募したいということであればご連絡お待ちしています」と、心にもない(?)返事

 

 その後、この方がハローワークに来られることはなかった。

 

 職歴をみると接客業とだけ書いてあった。おそらく夜のお店の仕事だけでは収入面で苦しいため、Wワークで昼間の仕事を希望したが、果たして、「そっち系」でも応募できるのか?、採用してもらえるのか?を探りに来所したのではないかと思われる。

 

 LGBTでも、外見からはわからず、就業に支障がなければ特に問題はない。応募の際にカミングアウトする必要もない

 

 ただ、一見して「そっち系」とわかる場合の就職活動は、雇用する側も、戸惑うことは間違いない。職業相談をうけてもどう支援していいのか正直よくわからない。経験のある方は教えてほしい。