●夢が忘れられないアラフィフ女性 

 40代後半 女性。結婚・出産後、子育ても一段落したので、昔からあこがれていた旅行会社に応募したいと来窓。

 ただ、職歴をみると、結婚前は販売の仕事をしていて、結婚・子育てで20年近くのブランクがあるうえに、旅行業の経験もない、しかも通勤に2時間近くもかかる正社員求人である。

 

 

 年齢的に即戦力を求められる上に、実務経験もなく、通勤に2時間もかかるような50歳前の人を採用するわけがないのであるが、本人は気づいていないのか・・・。

 採用は厳しいので考え直しては?とアドバイスしても、「とにかく応募したい」の一点張りである。
 本人の意思を尊重し、一応、紹介状を発行したが、もちろん書類選考で不採用となった。

 ただ、その後は近隣の販売職のパートに応募されていた。

 

 なぜ、この人はこんな可能性のない求人に応募したのか、気になったので少し考えてみた。年齢的にも単なる世間知らずではなさそうだ

 よく、選挙で落選することがわかっていても自己顕示欲自己承認欲から立候補する人がいるのと同じ気持ちなのかとも考えたが、その後は近隣の販売職のパートに応募したことから、少し違うような気がした。

 

 おそらく、若いころの夢が忘れられず、不採用になることは充分予想できたが、一時(いっとき)でも夢を見たかったのではないだろうか。そして、その夢にはっきりとNO!」と言ってもらい、踏ん切りをつけたかったのかもしれない。

 

 職業相談員の性(さが)でつい、採用見込みのない応募者には冷たくアドバイスしがちだが、そういう人の気持ちは大切にしないといけないと自戒したところであった。