コロナ禍中の緊急事態宣言が発出されていた時の話です。

文中≪≫は面談中の私の「心」の声です。

 

●見た目で判断してはいけない ◇30代 男性◇

 コロナ禍ではハローワークもいろいろ対応に追われた。マスク、アルコールスプレー、アクリルボードは当然だが、冬でも常時窓を開けての換気や求人端末の随時消毒など不特定多数の来所者がいる中、感染予防にはできる限りの対策をしており、幸いクラスターは発生しなかった。

 

 そんな中、マスクにフェイスガード、両手に使い捨てのビニール手袋をしたまま、椅子には持参したビニールシートを敷いて相談を受ける男性がいた。

 聞くと「感染が怖いので、用心のために」と言うのである。

 少し過敏すぎるのでは?とは感じたが、ひょっとすると、基礎疾患をお持ちの方かもしれないし、アレルギーでワクチンを打てなかったのでは?と気をつかいながら相談をうけていたのだが、どういうわけか、応募したいと持参した求人票が 飲食店のホールの仕事 だった。

 

 思わず、「いやいや、こういう仕事は不特定多数のお客様がくるので感染のリスクは高い仕事ですよ」とアドバイスすると、「それは別にかまわない」とのあっさりした返事。

≪なんやそれ! その格好で「接客業」は無いやろ≫

 

 職歴をみてもホールの経験があるわけではない。普通なら、クリーンルームでの電子部品の製造や、衛生管理の行き届いた食品製造のあたりの仕事を勧めるところだが・・・。

 

 神経質なのか、潔癖症なのか、それとも大胆なのか、大雑把なのか性格がイマイチわかりにくい相談者であった。

 一応、紹介状は発行したが、面接の時にどんな格好で、どんな志望動機を話すのか気になるところであった。

 

 ハローワークには時々、こうした見た目と行動が一致しない人が相談にこられていた。
    人は見た目で判断してはいけない。 

よく言われてきたが、ハローワークで働くようになってから、改めてこのことを体感した次第である。