はじまりは、淡い乳白色
ぬるい光に包まれた、輪郭のない日々
そこに、鈍い鉄の赤が混じる
ひび割れる音もなく
ただ、温度だけが上がっていく
黒に近い濁った赤
理性を溶かした父の色
それは壁にも、空気にも、皮膚にも染みついた
対して母は、冷えきった灰色
怯えではない
すべてを見切った者の、乾いた色
その二色がぶつかり合い
部屋は濁った紫へと変わる
息をするほどに、肺が重くなる色
やがて内側に残ったのは
透明ではない、曇ったガラスのような自分
触れれば歪み
信じれば割れる
だから選んだのは
金属のような無機質な銀
誰も寄せつけず
ただ映すだけで、決して混ざらない
それでも奥底には
消えきらない、名前のない黒
意味を持たない黒
終わりでも始まりでもない
ただ、そこに在るだけの色