「北朝鮮ではヒズ・ストーリー(His story)を教える」。大韓航空機爆破犯として逮捕され、特赦された金賢姫(キム・ヒョンヒ)元工作員はかつて北の歴史教育についてこんな表現を口にしていた。事実に基づくヒストリー(歴史)ではなく、彼の物語、つまり故金日成主席と金正日総書記父子のフィクションを教え込まれるというのだ。

 金父子の都合に合わせ、故金日成主席は日本軍に大勝利を収め、ロシアで生まれた金正日総書記は父が日本軍と戦い続けたことになっている民族の聖地、白頭山のふもとで生まれたと書き換えられる。「都合に合わせて診断書まで作り上げるところに拉致事件にも共通した構造がみえる」とは長年拉致事件の解明に携わってきた専門家の言だ。

 朝鮮高級(高等)学校の歴史教科書は「日帝(日本帝国)野郎」や「ウェノム(倭奴=日本人への卑称)」といった表現が頻出する本国の教科書とは違い、あしざまな日本の悪口は描かれていない。改編の“成果”とはいえるだろう。

 しかし、金父子の礼賛と米日韓との戦いという底流に流れる命題は脈々と受け継がれている。都合に合わない帰化したり、日本社会で共生しようという多数派の「在日」は否定される存在だ。「教えていて苦しかった」と漏らす元教員もいたという。

 ヒズ・ストーリーを教え続けられる生徒たちを考えると、「ご勝手にどうぞ」とはいいにくいが、これだけはいえる。いくら将軍様が「民族教育を強化しろ」とご立腹で早急に資金が必要だろうが、「共生しないが、金をくれ」では身勝手過ぎないかと。鳩山政権はこの現状をどこまで認識しているのだろうか。(桜井紀雄)

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