解離性同一性障害(かいりせいどういつせいしょうがい、略称はDID)は、解離性障害のひとつで、多重人格と云われるもののアメリカ精神医学会・精神疾患の分類と診断の手引 (DSM-IV-TR)での正式名である。
解離性障害は本人にとって堪えられない状況を、離人症のようにそれは自分のことではないと感じたり、あるいは解離性健忘などのようにその時期の感情や記憶を切り離して、それを思い出せなくすることで心のダメージを回避しようとすることから引き起こされる障害であるが、解離性同一性障害は、その中でもっとも重く、切り離した感情や記憶が成長して、別の人格となって表に現れるものである。
別の人格の現れ方は多様であるが、例えば弱々しい自分に腹を立てている自分、奔放に振る舞いたいという押さえつけられた自分の気持ち、堪えられない苦痛を受けた自分、寂しい気持を抱える自分などである。多くの場合元々の自分は、切り離された自分(自分が切り離した別の自分)のことを知らない。そして、普段は心の奥に切り離されている別の自分(交代人格)が表に出てきて、一時的にその体を支配して行動すると、本来の自分はその間の記憶が途切れ、戻ってきたときにはその間に何があったのかを知らない。 交代人格は「元々のわたし」の主観的体験の一部、あるいは性格の一部であるので極めて多様であるが、事例によく現れるのは次ぎのようなものである。
主人格と同性の、同い年の別人格。ただし性格が全く異なる。その他、受け持つ事件が起こったときの年齢が現れることもある。
子供の人格もよく出てくる。 4 - 7歳児が多いが、2歳児の人格も報告されている。他の人格の存在を知らない人格、別人格が表に現れているときの記憶を全く持たない人格がある。主人格もそれに該当する場合が多いので、幻聴や健忘に困惑しても本人は多重人格であることに気がつかない。逆に主人格や、他の別人格の行動を心の中から見て知っている別人格もある。怒りを体現する人格や、絶望、過去の耐え難い体験を受け持つ人格。リストカットや睡眠薬で自殺を図ろうとする自傷的な人格もそのなかに多い。 性的に奔放な人格が現れることもある。男なのに女の別人格とか女なのに男の別人格など、別性の人格も現れる。逆にこの子(自分なのだが)はこうあるべきなのだと考えている理知的な人格が現れる場合もある。
ラルフ・アリソン (Allison,R.B.) がISH(内的自己救済者)と呼んだものもこの範疇になる。危機的状況で現れて、その女性の体格では考えられない腕力でその子を守る別人格もある。実在の人間の人格もある。極端な例では幼児期に自分に性的虐待を行った人間の人格の例が国内にある。
また自分を極度に厳しく育てた祖母の交代人格があらわれた事例も北米にある。
それらの人格は表情も、話言葉も、書く文字も異なり、嗜好についても全く異なる。 例えば喫煙の有無、喫煙者の人格どうしではタバコの銘柄の違いまである。絵も年齢相応になる。
また心理テストを行うとそれぞれの人格毎に全く異なった知能や性格をあらわす。 顔も全く違う。勿論同じ人間なのだから同じ顔ではあるが普通の表情の違いとは全く違う。そのほか演技では不可能な生理学的反応の差を示す。 なお治療者はそれぞれの治療方針に基づいて様々な分類を行うことがあるが、一般化はできない。