債券、特に社債が相対的に割高か割安かを判断するのにスプレッド(セカンダリー スプレッド*1)が使われる。しかしながら、一言でスプレッドと言っても下記のように多岐にわたる。ここで注意すべきなのは、「スプレッドは○○bpです」と言われた際にスプレッドの算出基準を明確にしないとミスプライシングに繋がりかねない。それでは、一般的にキャッシュボンドで評価に用いられるスプレッドを確認してみよう。
1. イールドスプレッド
最もベーシックなスプレッドで、社債の残存年限と同等なベンチマーク国債との利回りの差を取る。
2. G-スプレッド
イールドスプレッドと同様に社債利回りの比較対象は国債である。しかし、国債利回りは特定の銘柄を用いるのではなく、国債イールドカーブ上で社債の残存年限に合わせて補間計算した利回りが使われる。
数値例で示してみると、
社債(残存3.5年、利回り5%)
国債イールドカーブ(3年1%、4年2%)
イールドカーブ上の3.5年における国債利回りは1%+(2%-1%)/(4年-3年)*(3.5%-3%)=1.5%と線形補間
により求められる。
従って、この場合のG-スプレッドは5%-3.5% = 1.5% = 150bpとなる。
3. I-スプレッド
I-スプレッドの算出方法はG-スプレッドと同じ概念であり、その違いは国債イールドカーブに代わりスワップカーブを使うことになる。
4. Z-スプレッド
Z-スプレッドはゼロスプレッドやゼロボラティリティ スプレッドと呼ばれる。算出方法の概念は複利の計算に似ており、債券の各期のキャッシュフローをスワップのゼロクーポンカーブ+ α で割引き、その現在価値が債券の利含み価格と一致するようにαを求めていく。Z-スプレッドはこのように、キャッシュフローを考慮した上の計算なので、キャッシュフロー スプレッドとも呼ばれる。
5. OAS-スプレッド
OAS-スプレッドはOption Adjusted Spreadの略称でおもにコーラブル債の評価に用いられる。OAS-スプレッドではコーラブル債からコール分の価値を除いたスプレッドを表す。従って、コーラブル債とブレット債を比較する債に便利である。算出方法は上記のスプレッドの中で最も複雑であり、ここでは計算ロジックだけを紹介することにする。OAS-スプレッドでは、自身で基準となるカーブを国債イールドカーブやスワップカーブから選択し、さらに、金利期間構造モデルを用いてゼロクーポンカーブを導き出す。ブレット債券の場合においては基準カーブがスワップカーブである場合、OAS-スプレッドはZ-スプレッドに近似した値となる。金利期間構造モデルについてはまた別にの機会に紹介したい。
ブレット債においては、今回紹介した上記の5つのスプレッドの中でZ-スプレッドが最も精緻であろう。本邦では算出方法の簡便性からか、I-スプレッドでブレット社債を評価することが多いようだ。しかし、海外に目を向けてみると、Z-スプレッドでクォートするケースが多く見受けられる。一方、OAS-スプレッドはコーラブル社債以外においてはおもにKIKO債などのモーゲージ債券を評価する際に用いられる。
*1 セカンダリー スプレッドを定義するとマーケットでの時価や利回りから計算されたスプレッドで、対照的となるのが発行時スプレッドである。発行時スプレッドは起債時にL+50bpやJB329+5bpなどの記載されるスプレッドだ。これらは、新発債のクーポンを決定するために、プライシング決定日におけるベンチマークとなるスワップレートや国債利回りから+○○bpと上乗せしたスプレッドである。
