<元気ですか?あれからどーしてるかと思って連絡しました。>
珍しく平日の昼過ぎに仕事以外のメールが携帯に入りました。
早紀からのメールでした。
次に会う約束や、会う事自体を匂わせる言動を全くしていなかった為、
なぜ連絡をくれるのだろう…と、ちょっと不思議になりました。
今までなら一度キリの遊びで終わる場合、
女の娘の方から失望を込めた断りや、フェードアウトがありました。
でも早紀はエッチだけして何も連絡をしない僕に尚もメールをくれる。
純粋に良い娘なんだと思い、罪悪感が胸に広がりました。
このまま会い続ければきっと、“遊び”を通り越して不倫に発展するし、
結局は早紀自身を、早紀だけを傷付ける結果になる…。
そんな自分勝手な正義感で、そのメールを無視しました。
そのまま仕事を続け、バタバタと忙しい日が続いた3、4日後、
たまたまクライアントとの食事の後、2件目の予定がキャンセルになり、
予定がスッポリと空いた夜、再びそのメールを思い出しました。
多少…というより、普通に酔っていました。
その酔いが、以前感じた罪悪感を消し、性欲のみを浮き上げさせていました。
<返事が遅くなって申し訳ない。突然ですが、今夜メシでもどうですか…?>
(ハァ~。アホやな。ホンマに俺はアホやわ…。)自嘲気味に送ったメール。
1分も経たないうちに、僕の携帯に着信がありました。
『コンバンワ~。今ドコですか~。』
「早いな(笑)。俺は会社の近くやけど、早紀ちゃんは?」
『私も会社からの帰り道。車で通勤してるから、そっちに行きましょか?』
「オ、オォ…。じゃー俺のマンションまで来てくれる…?」
恐らく、僕からの連絡を待っていてくれたんでしょうね。
メールを送ってメールで返すんじゃなく、電話してくれるとこや、
食事への誘いに無条件で応えてくれるとこなど、無償に愛おしさが胸に広がる。
今振り返れば、恐らくこの時から早紀を本気で愛しはじめていたと思います。
でも、2ヵ月先には今の嫁の親へ挨拶が決まっていて…、
それよりも今の嫁がプロポーズを受けてくれる道のりが足かけ7年と長く険しくて…。
そもそも不倫をするつもりもなく、自分の憧れた温かい家庭を作るつもりで…。
そんな事を無理に考え、早紀へ芽生え始めた恋心を消していたように思います。
そして、そこに残ったのは自己中心的な考えを軸にした剥き出しの欲望だけでした。
(ヤルだけの女やし、向こうもそれを承知で連絡くれるんやし、まぁエエやろ。)
悲しくも、そう結論付ける事に成功した頃、
到着を知らせる早紀からの着信で携帯が震える。
(そうや…。今夜もヤルだけやって、帰ろう…)
そう決心しながら、僕は通話ボタンを押しました。