『ねぇ…。何で2回目に会った時、私とエッチしたん…?』
その日も大きな仕事が無事に完結し、いつもの流れで早紀と寝ました。
裸のままベッドでタバコを吸っている僕に早紀は問いかけました。
『友達に話したら、やっぱ…フレンドって事になるし、ダメかなって思って…。』
(ついにきた…。やっぱりこのままの関係に疑問を持ってたんやな…)
そう感じた僕は焦りながらも、何とか言葉を押し出しました。
「いや、好きやったから…やで…。」
『…そうなんや。………。』
BGMの有線が妙に虚しく、更に気まずい雰囲気にさせる。
沈黙に耐え切れず、早紀の意図する結論へ話を進ませない為にも何か話さないと…。
そう思いながらも、僕の口は何も言ってくれません。
結局、早紀の方から『そろそろ…出よか…』と脱ぎ捨てた下着を拾いに動きました。
正直、この頃はまだ早紀の事を“気に入っていた”だけで愛情は感じていません。
その為、(あ~惜しいな…。せっかく色々と感じるポイントとか解ってきたのに…)と思ってました。(←最低)
ホテルを出て、僕を僕のマンションまで送る車の中でも早紀は無言でした。
(これで終わりかな…。終わりやよな…。終わった方がこの娘の為やでな…)
諦めに近い感情で車を降りた僕に、意外にも早紀はこんな言葉を投げました。
『このまま終わるん?付き合うとか…なし…?』
(え…? マジで…? 何で…?) (普通、もう終わりたいとか、マイナスの方向性ちゃうんか…?)
てっきり早紀は僕との関係を切りたいと思っていると考えていたのでビックリでした。
恐らく僕には、“黙って寝るだけの早紀”が好きで、“物言う早紀”へは興味がなかったのです。
(逆にこの女、危ないかも…。普通は言わんやろ…。惜しい…というより、終わらせるか…。)
今までの感情から一転、同棲を来月に控えていた僕には、ちょっと迷惑に感じる話でした。
「いや、悪い…。俺、付き合うとか、そんなんが無理なんや…。」
「会社に泊まったり、客と呑みに行くなり、ゴルフ行くなり、あんまり家おらんしな…。」
「逆に付き合ったら苦労すんで…。辞めとけや…。」
どこかに優越感を覚えながら伝えた言葉。早紀は微笑まじりでこう返しました。
『教科書どおりの断り方やな…。』
今まで握っていた僕の手を離し、ゆっくりと下を向く。
「また連絡するし、そんなん言うなや…」
『絶対連絡とか、こんな話しになって、してこーへんや~ん…。』
「いや、するって!(焦)」 「ホンマにするさかい、今日はもう帰れや…。な…。」
『…わかった…。バイバィ…。』
…もう連絡をする気はありませんでした。
遠ざかる早紀の運転する車のテールランプが見えなくなる頃、
安堵している自分に驚きつつも、最後の別れの意味合いを込めてずっと見送りました。
『ねぇ…。何で2回目に会った時、私とエッチしたん…?』
『教科書どおりの断り方やな…。』
『絶対連絡とか、こんな話しになって、してこーへんや~ん…。』
『わかった…。バイバイ…。』
早紀の声が耳に残ります。大好きな黒髪の残り香も鼻をくすぐる。
安堵していながらも、少し心が痛みました。
きっと、その痛みが消えるどころか、
ますます大きくなり、その痛みに僕は耐え切れなかったんでしょう。
2週間も経たずに、僕は早紀に電話をしていました。
今までよりも、ちょっと愛情を込めて…。
今までよりも、ちょっと後ろめたさを感じて…。
さぁ…。不倫の始まりです…。