<着いたよ~。改札の前で待ってます>
結婚式が済み、周囲への挨拶訪問などが一通り済んだ7月。
僕は早紀を和歌山の海沿いへと走るドライブへ誘いました。
平日夜の外出が嫁の出現で厳しくなった事もありますが、
単純に早紀と明るい時間に、普通のデートをしてみたいと思ったからです。
相変わらず綺麗な黒髪を後ろで束ね、伊勢海老?のように折り曲げたうなじが眩しい。
(今日はエッチな事をせんとこ…)そう決めた心が早くも揺らいでいました。
高速道路を飛ばし、車は徐々に海沿いの湾岸道路へとハンドルを向かわせる。
左手に白く光る海からの照り返しに目を細めながら、早紀の横顔を見つめていました。
その頃の二人の会話は、全くと言っていい程に弾んでいませんでした。
出会った頃は早紀が一方的に自分目線で話していた会話が、今では上辺の他人目線に変わる。
人気のない海岸線に車を止め、自動販売機から缶コーヒーを2本取り出し一息つく。
水平線を眺めながらタバコを吸う、人が居ない、ただ広い海沿いの岸壁。
真上にある太陽と、遠い向こうから来た海からの突風が妙に心地よく、
早紀と僕との重苦しい雰囲気とは対照的に、虚しく夏を彩る。
気がつけば、吸い終わったタバコが足元に3本。
二人の関係を少しだけ前に戻したいと思った僕の願いが、
もう叶えられない事を悟りました。
「なぁ…、お前な、俺のこと…好きか?」
『………???』
「いや、前に付き合おうって言うたやんけ。それ、まだ大丈夫か…?」
不思議でした。新婚生活に不満はなく、遊びのつもりで交わった早紀に真剣交際を申し出る。
恐らく、この時は何も考えず、目の前の女性が惜しくなったんだと思います。
早紀は、無言でした。下を向いて固い表情を崩す事なく、缶コーヒーを握る手が白い。
僕もそれ以上は追及する事はせず、車に戻りエンジンをスタートさせる。
早紀も出発に気付いて、ノロノロと助手席に滑り込む。
そのまま幹線道路を走り、目についたラブホテルへハンドルを切りました。
早紀は驚いて僕を振り返り、イヤイヤをするように首をふる。
エンジンを切り、強引に早紀の手を引いて入口をくぐる。
『何でよ…。嫌やってば…。』
無造作に部屋の選択ボタンを押し、エレベーターから部屋へと入ります。
嫌々…というより、ウンザリした様子の早紀はソファーに身を投げ天井を見上げる。
僕は何か言おうにも言葉が出ず、この行動の理由も自分の中ではまだ説明が付かない。
また、しばらく無言で居た僕は、途中から理由を探す無意味さに疲れ、シャワーを浴びました。
冷たい水を全身に浴び、ベッドに寝転ぶと、早紀もシャワーを浴び、僕の隣に横たわる。
僕に早紀を犯す勇気はなく、考えもなしにシャワーを浴びた事が、
きっと早紀にとってみれば、無言の強制として伝わったのでしょう。
固く目を閉じた早紀はやっぱり愛おしく、裸になると妙に幼く見える華奢な体が物悲しい。
その姿を目に焼き付けながら、僕は早紀を抱きました。
これが早紀との、最後の交わりでした。
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本当にいつもありがとうございます。日々の更新って、本当に難しいですね…(T_T)
いよいよ、次でこの早紀のお話は終わりです。
心情の変化って、本当に難しくて、信用出来なくて、
でも、四季の移ろいのように美しくもある。
そんな印象を、早紀を通じて感じています。
では、最後のお話も、頑張って書かせて頂くので、
皆さん楽しみにしていて下さい!!
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