「汝、星のごとく」凪良ゆう
あの星のごとく、か。瀬戸内の小さな島で父と母に重荷を背負わせれて生きる暁美。母の都合で転校してきた櫂とは高校で出会った。家庭環境にまつわる噂のせいで一人になりがちな櫂と仲良くなるきっかけとなったあの日は最悪なスチュエーションだった。島人は噂話が好きだ。暁美の家は噂が絶えない。父は母公認で浮気相手の家に定期的に通っているのだから。本人たちが同意なのだからそれで良いと思っていたのに、母は徐々に不安定さを増し、暁美にのしかかる。・・・櫂の荷物も相当に重い。息子から見ても決して長続きはしなそうな恋愛に全力を注ぐ母は振られるたびにどうしようもなく落ち、自力では這い上がろうともせず、自分勝手に櫂にすがる。櫂は優しい。そんな母を支えながら、過酷な現実から逃げ込む場所として物語を書いている。・・・出会ってすぐに付き合い始めた二人は、親のトラブルに何度も打ちのめされながらなんとか耐えて成長し、やがてそれぞれの道を歩み出す。櫂は漫画の原作者として東京へ。一緒に行こうと頑張ったが叶わず、暁美は島で母を背負っていくと決めた。・・・振り払いたい。手放したい。でも、どうやったって逃れられない。なんて苦しいのだろう。しんどすぎて途中で数日読みやめてまた読み始める。最後は静かに泣きながら読み終えた。選べる中で最善の選択をしてきたふたりなのだから、こうなるしかないのだ。読み終えてタイトルにまた泣かされる。ダメだ、余韻がすごい。・・・「汝、星のごとく」凪良ゆう講談社