隆々日誌

隆々日誌

〜この世の記録〜

2026年2月21日 土曜日(博多 晴れ 最高18.7度 最低6.6度)


今日はROTH BART BARONのライブに行ってきた。




なんとなく街並みが穏やかで心地良かった。





福岡市民ホールはたぶん二回来たことがある。

たしか歌丸さんの落語を見たのもこの会場だ。




陽気がよくて喉が渇いていたから、柑橘系のクラフトビールを飲んだ。



CRYSTAL


ステージに現れた三船さんは、キリストの様に髪と髭を伸ばしていた。


バスドラの一発目の打音が微粒子単位で私の体を突き抜けて、私の体からすべての不純物を吹き飛ばした。


EDEN


知らない曲だった。

ゆらりゆらりと私は揺れていた。

帆船の床下で、波に揺られて深みを増す酒樽の様に、私も周りのお客さんも大きなうねりに揺蕩っていた。


Kitsunebi


「福岡で一番ロックな皆さんに。新曲を聴いてください」


なんだか褒められたような気分になって嬉しかった。


歌唱中にボーカルの三船さんは、奇妙な踊りをしていて、それは空気中の音楽を掴もうとしてる様にも見えて、それは井上陽水とかトム・ヨークとか、そういう人達にも通ずる奇妙さだった。


けもののなまえ


家を探して 人の真似して

あなたはここに 馴染めるかしら


家を出る3時間前くらいに大好きになった曲。


「気づいていなかった曲の良さに気付く」

それが歳を取ることの意味なのかもしれない。


聴きたいと思った好きな曲をその日の午後に生で聴けるって、今更だけどなんて幸せなことなんだろう。


イントロが始まって、私の目の前のご夫婦の奥さんが、ご主人に「やった!」みたいなリアクションをしていた。


Skiffle Song


けもののなまえの終わりに、唐突に最高のドラムソロが始まる。

いくつかのドラムソロを見てきたけど、このソロは屈指の最高のドラムソロだった。


私の好きな「バードマン」という映画で、ドラムを叩いているアントニオ・サンチェスの様な、乾いたプリミティブなドラミング。


凄い凄い凄い。

ラテンのリズムでみんなが太鼓を叩いて、最大の山場を迎えた。


しかも俺はこの曲が大好きなんだ。


自分の子供が育てられないのなら

他人の子供を育ててみてはいかが?


私達は極上のグルーヴに溺れていた。


三船さんは、ステージに飾ってあった鹿の角を二本持って、頭の上で「カチカチッ」って鳴らして、俺は、「枝分かれが3つのやつが若い鹿で、枝分かれが4つのやつが年取った鹿だ」って思った。


「ぷぁーー」って、トランペットソロが鳴って、全部を持っていった!

ずっとグルーヴィンで、ずっと楽しかったのに、トランペットが全部持ってった!


俺は笑顔で、鳥肌が立っていた。

めちゃくちゃカッコいいな。


例えば「ぐるーゔ手帳」なるものがあったとして、俺はこの日のSkiffle Songの事を書き込む。

例えばそれを武道館の隅の人気の無い窓口に持って行ったとして、「あぁ、これまで、こういったグルーヴを堪能してきたんですね。では、今回はあなたにはこのグルーヴを」とか、特別なグルーヴを処方してくれるのかもしれない。


King


曲の始まりから演者の熱量が違った。

あぁ凄い。笑っちゃう。


ピンク・フロイドの「原子心母」を想起した。


ふと三船さんの表情を見たら、恍惚と天に召されていた。

ともすれば、涎を垂らさんばかりに口をだらっと開け放って、その身を音楽に投げ出していた。


音楽が塊となって、「ぶわぁー」って迫ってきて、

今俺はなんの音に対して衝撃を受けてるのかも見失っていたら、視界にベースが入ってきて、めちゃくちゃカッコいいブーストのかかったベースを弾いてて爆笑

「お前かー爆笑爆笑」って思った。


俺も周りの人もみんな踊っていた。


目の前の音楽が凄いことになっていて、ほら、あの、UFOが牛とかを吸い上げるアブダクションの様に、私の足は徐々に地面から離れていった。






「この二年間、凄くタフで、音楽をやめることはないにしても、活動休止するかもって思った。その度にバンドのメンバーが助けてくれた」

三船さんは語った。


私には信じられなかった。

こんなに才能に溢れた人が、そんな事を思うなんて。

「音楽を辞める」って三船さんが言ったら、俺が止めようって思った。一緒にフィリピンレストランに行こうって思った。





"You're the Best Person In This World"


再び美しい歌が紡がれる。

「君はこの世で一番美しい人」

という詩がとても強く響いていた。


Great Escape


めちゃくちゃ楽しい曲だった。

なんか、夕方の子供向けのアニメの主題歌になりそうなキャッチーなメロディだった。


前から知ってたけどこの瞬間まで気づいてなかったんだ。


「蛇口の水の水道料金くらい、音楽が消費されてるから・・」

三船さんは言った。

音楽を主とした彼らにとって、その言葉がどれくらい重いことなのか初めて悟った。


極彩


ダブルアンコールがこんなに嬉しいことだなんて思ったことなかった。

完全に予定外の様で、「・・出来るかな」って言いながらこのバンドの代表曲の一つ「極彩」を始めた。

再びアブダクションの光が私の体を包んだ。


19:07終演。


グッズを買ったらサインをしてくれるとのことだったが、ここ最近の不摂生で、鼻の下に出来物が出来てて、そんな状態で、この天才と対峙するのは恥ずかしいからやめた。


廊下を歩いていたら、不意にドアから三船さんが出てきて、「ありがとうございます」って横を通り過ぎて、俺は咄嗟に「お、おつかれさまです」って、か細い声で言った。


その後トイレに行ったら、雰囲気が好きなトランペットの方がいて、「ご苦労様でした」って言ったら「ありがとうございました!」って言ってくれて・・俺どんだけモブキャラなんだよ笑い泣き


初めて聞いたよ!トランペットの人の声笑い泣き笑い泣き




▲トランペットの人。






そんな感じで、また今日もROTH BART BARONのおかげで、俺は幸せな気分になれたんだ。