2024年も早5月に(^^;) ~1月からを駆け足で♪ その②2月の観劇編~ | いもたこなんきん芝居におしゃべり♪

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ここ数年、1月は玉三郎丈の舞踊で初芝居だったのだが、今年は2月の初芝居に。まずは7日

に松竹座での「立春歌舞伎当別公演」での「夜の部」から。こちらは去年から始まったらしい

「大阪国際文化芸術プロジェクト」の一環で会期が約2週間ほどと短く、ほぼ上方歌舞伎の役

者方での公演になっている。

 

演目も上方色が強く、「昼の部」が「源平布引滝~義賢最期・竹生島遊覧・実盛物語」、「夜

の部」が「新版色讀販~ちょいのせ」、「連獅子」、「曽根崎心中」である。

 

元々、愛之助丈奮闘公演の「昼の部」を観劇予定だったのだが、「夜の部」の「曾根崎心中」

を捨てがたく、結果、チケットを追加で手配して都合昼夜とも観劇することになった次第。

 

 

 

 

最初の希望とは相違して「夜の部」からの観覧になり、母と揃って来座。左列10、11の良席

でほくほくして着席した。

 

まずは「新版色讀販~ちょいのせ」から。悲恋物の「お染久松」を下敷きにしており、お染に

は許嫁の山家屋清兵衛がありながら丁稚の久松と恋仲となったが、そのお染に身の程知らずに

も横恋慕する番頭・善六の悪事を滑稽に描く。善六の鴈治郎丈は初役だそうだが、ぴたりとハ

マって上々。滑稽さも程よく、最近の上手さを再認識させられた。「お染久松」の「歌祭文」、

要は当時のスキャンダル記事を語って聞かせるが、途中で愛之助丈の清兵衛に遮られ、頭に刷

り物の歌祭文を「ちょい」と「載せ」られ、ことごとくあしらわれてしまうことから「ちょい

のせ」の俗称が付いたのだが、難しい人形ぶりもまずまず。憎々しいより滑稽な演じぶりがな

かなかよかったかな。

 

愛之助丈の清兵衛は出も少ないが、貫禄ある二枚目を好演。久松の壱太郎丈は立ち役のためか

線が細く、ニンに少々合わない処が残念。久松に限らず、今後も立ち役にはずいぶんと工夫が

必要だろう。

 

対して、お染の尾上右近丈は丁稚に恋する家付き娘のわがままぶりがぴったり。意志強く、

を成就させようとする一途な若い娘の傲慢さがうまい。人形ぶりの軽い動きはさすがの「踊り

巧者」の面目躍如という処。亀鶴丈の松屋源右衛門は出も短いが、善六の悪事に加担する憎々

しさがうまく、印象的。この人の悪役はホントにうまくて大好きなのだが、出が少ないのが残

念至極。

 

お染の母おみねの吉弥丈はしっかり脇を固めて上々。秀太郎丈亡き後、貴重な上方の老け女形

で、これからもますます頑張っていただきたい。総じて思いのほかの上出来で、★★★☆☆、

★4に少々足りないという処だろうか。

 

 

 

 

二幕目に扇雀丈、虎太郎丈の親子での「連獅子」。元々こうした舞踊は「成駒屋」のニンでは

なく、演じるには少々無理目だが、今回の虎太郎の「子獅子」はなかなかの頑張りで◎。扇雀

丈の「親獅子」は残念ながら平凡か。★★★☆☆、★3はやや甘めかな(^^;)。

 

 

 

 

三幕目が眼目の「曽根崎心中」。壱太郎丈の「お初」は手に入った役で上々。哀れさと意志の

強さがくっきり際立ってうまい。初役の「徳兵衛」の尾上右近丈は友の奸計にハマり、悲恋も

加わっての哀れさがなかなか見事。凛々しい男ぶりで、「近松物」などもっといろいろな立ち

役で見たい処である。

 

「曽根崎心中」の舞台の観覧は三度あり、藤十郎丈、十二代目團十郎丈、翫雀(現・鴈治郎)

丈だったが、さすがに藤十郎丈には及ばないものの、これからもありと思わせる出来栄え。ぜ

ひこれからも、上方歌舞伎で「近松物」を頑張っていただきたいものである(なお、余談なが

ら、團十郎丈の「徳兵衛」もみごとだった。早くに親を亡くした線の細さが合致して、哀れさ

が際立つ「徳兵衛」に感激したものである)。

 

亀鶴丈の油屋九平次の悪ぶりは板について上々。上方歌舞伎の憎まれ役は一任したいほどであ

る。鴈治郎丈の平野屋九右衛門は実直さ、実の甥を思う真実味が真に迫って、こちらも上々。

一皮剥けたむけた感があり、ところどころで亡き藤十郎の台詞回しを彷彿とさせるなど、間と

息がよく似てきたものだと感心しきりである。なお、ちょい役ながら、下女・お玉の翫政丈は

泥臭く演じてなかなかよかった。右近丈の頑張りを贔屓目に評価して★★★★☆、余裕の★4。

 

 

 

 

 

 

 

 

千秋楽の18日、こちらも母と揃って、眼目の「昼の部」へ。めずらしく「通し」での上演とな

り、「愛之助丈奮闘公演」となった「源平布引滝」にワクワクして来座。10列24,25番と右桟

敷席近くの良席で、視界も良好(出入りがしにくいのが少々難だが)。

 

 

 

まずは「義賢最期」。当代仁左衛門丈の復活芝居で話題となり、最近は愛之助丈のお役になりつ

つある演目で、今回も手に入った演じぶりながら、見せ場の「戸板返し」でのもたつきが少々気

になったかな。これは支え役の慣れの問題なので、愛之助丈には少々気の毒だったかも。とはい

え、この場を含めてダイナミックな見せ場での愛之助丈の奮闘ぶりは見事で、最後の「仏倒し」

は何回見ても心配になるほど迫力満点で大満足。

 

小万の壱太郎丈は、これまでの娘役より年増役がニンにあって上々。続く「竹生島遊覧」では、

波荒い琵琶湖を泳いで真実味たっぷり、愛之助丈に負けず劣らずの奮闘ぶりに拍手喝采という

処。「竹生島遊覧」での亀鶴丈は平宗盛での登場だったが、こちらは特に見せ場もなく平凡。

ちょっと気の毒な出ではあったかも。

 

続く「実盛物語」では、颯爽たる武将ぶりの愛之助丈もさることながら、初役・瀬尾十郎の鴈

治郎の憎々しく、また最後には親子の情愛溢れる演じぶりが上々。だめだめだった若かりし日

を思い出しつつ、営々たる努力を見て感心した次第。という訳で、まずは★★★☆☆、★3.5。

平均点以上だが、東京で忙しい愛之助丈にはもっと上方歌舞伎に注力して欲しいかな。個人的

には新作歌舞伎の「ルパン三世」や「西遊記」は置いといて、と苦言を呈したい。いずれ、次

代の仁左衛門を継いで、当代のように東京偏重にはなっていただきたくないな、と強く思う次

第である。