さて、10月19日、Bプロ観劇のために早朝から母と上京。今回は第二部の「木の実、小金吾
討死、すし屋」は仁左衛門丈で、二度ほど見ているためチケットはあらかじめ取らず、幕見
で、と思っていたのだが、一幕席はすでに完売…。ところが売り場で確認してみると、何と
外国人向けの「アップグレード席」があるらしい。日本人も購入可能で、前日からオンライ
ンで販売、しかも席が2階1等席(上座側)の良席なのだ。ただ、一般販売だと第二部は通
しで12,000~13,000円だが、それぞれ一幕ずつになるので、当然割高になる。結果的に、
第二部を倍ほどで購入した計算(詳細は今では不明)になってしまった…orz。
まあ、前日に仁左衛門丈が人間国宝に認定され、小金吾の左近丈も観たかったし…と財布の
紐を緩めてしまった訳である。観た甲斐は充分あったので佳しとした次第(^^;)。
まずは「鳥居前」。右近丈の忠信はどこか古風だが、雰囲気があっていい。踊りはもちろん
うまいし、狐らしさも上々。そこは團子丈と比べると、やはり一日の長という処。静御前は
左近丈だったが、なかなか愛らしい女形で感心してしまった。二世松緑から当代まで、立ち
役のお家柄だが、左近丈の女形はなかなかのものである。話が飛ぶが、一歳年長の染五郎丈
團子丈と仲がいいらしく、そうなるとこの三人で立ち役も女形もこなせる訳で、三人での芝
居をぜひ観てみたいものである。義経は歌昇丈だったが、こちらは覇気のない、ぼやけた演
じぶりで、巳之助丈の義経が断然よかったかな。まあ、しどころのない役でもあり、難しい
のだろうが、かなりだめだめでがっかりさせられた。
その巳之助丈だが、渡海屋銀平の鷹揚ぶり、それでいてどこかピンと糸の張ったような緊張
感がありありで、碇知盛の無念さ悲壮さが胸に迫る好演で見事だった。昨今の充実ぶりが伺
え、亡き三津五郎丈が見れば、さぞかし喜んだことかと思うと寂しくもあったが…。彼の役
柄はどれも大きく、存在感が強い。若手というより、そろそろ中堅だろうが、これからがま
すます楽しみでならない。Aプロと同様の面々は同じく手堅く、★★★★☆、★4。
次の「木の実」でのいがみの権太の仁左衛門丈はさすがにうまい。残念ながら、松緑丈の頑張
りも届かなかった感がある。小金吾の左近丈は健気な若衆を演じて上々。ほとんど観ていない
のだが、Aプロ、Bプロともに実に良く、これから「染、團、左」を贔屓していきたくなり、今
年になって、團子丈、左近丈の後援会に入ることにしたような次第である。
若葉の内侍の門之助丈はおっとりした女形ぶりが健在、お里の米吉丈は田舎娘らしさがやや薄
かったかな。弥左衛門の歌六丈はさすがの要ぶり、父の悲哀が哀れで見事。梶原景時の芝翫丈
は一時の不調から脱したようで、堅実な好演に思えた。全体的にAプロよりよく、★★★★☆、
★ほぼ4。
続く「吉野山」では忠信の右近丈と静御前の米吉丈のふたりが、まことに絵のような美しさで
上々吉。「川連法眼館」では本物の忠信の侍ぶりが凛々しく、ほんの短い場面だが、亀井六郎
の巳之助丈、駿河次郎の隼人丈との揃い踏みは、こちらもまた溜め息が出るような場面だった。
右近丈の子狐は、團子丈のような可愛さは少ないが、しっかり狐に成り切った演じぶりであり、
踊りもまた見事なもので、宙乗りがないながら、古風にまとめてなかなかの出来栄え。團子丈
の新鮮さとはまた異なる達者ぶりが良く、★★★★☆、★4。
A、B両方のプログラムを観る贅沢をした訳だが、その値打ちは充分すぎるほどあったかな。散
財もまた良し、としておこう。今回は母の疲労を慮って一泊したが、宿泊・交通費ともで6万
円弱、チケットは第一部、第三部とも2階B席で計48,000円(12,000円+12,000円×2)で
アップグレード席の分だけ高くついて、〆て10万円強が私持ちになった次第。つまり、十月歌
舞伎座で私としては20万円ほどの出費になり、母も5~6万円ほど支払ったことになる訳であ
る。しかも、実はまだまだ「歌舞伎三昧」が続くのであり、そちらについてはさらに次項に譲
る(^^;)。